デヴィッド・ボウイ「前夜」の貴重な記録

デヴィッド・ボウイ『カンヴァセーション・ピース』
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ALBUM
デヴィッド・ボウイ カンヴァセーション・ピース

『スペイス・オディティ』のリリース50周年を記念して企画されたCD5枚組ボックス・セット。没後も途切れることなくアーカイブのリリースが続く中で、本作は68年~69年の音源にフォーカスを絞った内容のディープさで際立っている。何しろ『スペイス・オディティ』以前のボウイ、つまり彼が破格のペルソナを確かなものにする以前の試行錯誤の2年間が、5枚もの超大ボリュームに微細に詰め込まれているのだから。

タイトルにもなった“カンヴァセーション・ピース”は、オリジナルの『スペイス・オディティ』の選曲から漏れたナンバーで、同盤の40周年リイシュー時にもステレオ音源が収録されていた。今回はトニー・ヴィスコンティの最新ミックスで当初予定されていた8曲目に追加収録された全10曲として聴くことができる。とは言え本作の最大の聴きどころはやはり未発表音源を数多く含む自宅デモのDISC1、そしてジョン・ハッチ・ハッチンソンと共に同じく自宅でレコーディングし、レコード契約のために制作された音源として後に知られる「マーキュリー・デモ」を収録したDISC2だろう。

特にDISC1は、まさに生身のボウイの息遣いを伝えるほとんどフォーク・アルバムと言っていい佇まいが逆に新鮮。ボウイの部屋の狭さが実感できるローファイ極まりない音響、限られた機材で拙く試されるアイディアの断片の数々、そしてキーを変え、声色を変え、「デヴィッド・ボウイ」のあるべき姿を模索する当時のボウイがまざまざと浮かび上がってくる。未発表の1バージョンを含む複数の“スペイス・オディティ”のデモを連続で聴き比べると、部屋で独り、広大な宇宙の孤独に思いを馳せ、今まさにそこに身を委ねようとしている天才のイマジネーションに鳥肌が立ってしまう。(粉川しの)



詳細はWarner Music Japanの公式サイトよりご確認ください。

ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

デヴィッド・ボウイ カンヴァセーション・ピース - 『rockin'on』2020年1月号『rockin'on』2020年1月号
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