『エジプト・ステーション』の旅の続き(のまた続き)

ポール・マッカートニー『ホーム・トゥナイト/イン・ア・ハリー』
発売中
SINGLE
ポール・マッカートニー ホーム・トゥナイト/イン・ア・ハリー

まず最初にリリース・データ的な情報を確認しておこう。ポール・マッカートニーの「最新シングル」として配信リリースされたこの2曲は、もともと、昨年秋のレコード・ストア・デイ(11月29日)に合わせ、完全数量限定の両A面ピクチャー・ディスク・シングルとして企画・販売されたものである。で、肝心の楽曲のレコーディング・データはというと、どちらの曲もプロデューサーはグレッグ・カースティンで、新曲ではなく、18年に発売された最新アルバム『エジプト・ステーション』の制作時にレコーディングされた未発表曲であると公表されている。

だったら、なぜこの2曲は(『エジプト・ステーション』の“完全版”であった)『エクスプローラーズ・エディション』には入れてもらえなかったの?と、あなたは思うかもしれない。僕もそう思った。けど、詳細は不明である。まぁ、ポールの新曲がまた聴けるんだったら、それはそれでいいんですけど。もちろん何の文句もないですけど。はい。

振り返れば、ポールは2019年1月1日にも、『エジプト・ステーション』の未発表曲だった“ゲット・イナフ”という曲をシングルとして突然リリースした。あの曲はワンリパブリックのボーカルとして知られるライアン・テダーがプロデューサーで、ポールにしては珍しくボーカルが完全にオートチューンされてて、実験的な面白さはあったけど、『エジプト・ステーション』のしっとりした雰囲気と比べると明らかに異質だった。もっとはっきり言えば、「そりゃボツるよね」というタイプのわかりやすい未発表曲であったわけだ、“ゲット・イナフ”という曲は。

でも、それと比べると、今回の2曲は、どちらも「これぞビンテージ・ポール」と呼びたくなるほど、いかにもポールらしいメロディ&アレンジの楽曲である。どちらも『エジプト・ステーション』のコンセプトだった「旅」というテーマをうまく歌詞に織り込んでいる。さらっと流しているようで、実は深い。

だったら、なぜこの2曲は『エジプト・ステーション』には入れてもらえなかったの?と、あなたは思うかもしれない。僕もそう思った。けど、詳細は不明である。しいて理由を考えるなら、あまりにもポールの楽曲としてハマリすぎて、驚きがなさすぎて、逆に敬遠されてしまったのだろうか。うーむ。発売から1年半近くが経った今だからこそ、僕らは『エジプト・ステーション』というアルバムをじっくり再検証してみるべき時なのかもしれない。『エジプト・ステーション』の旅は続く。まだまだ、どこまでも。(内瀬戸久司)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。
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ポール・マッカートニー ホーム・トゥナイト/イン・ア・ハリー - 『rockin'on』2020年2月号『rockin'on』2020年2月号
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