伝統を宿すEMOな歌心

パイングローヴ『マリーゴールド』
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ALBUM
パイングローヴ マリーゴールド

ヨ・ラ・テンゴリアル・エステートと同じニュージャージー州が地元のパイングローヴ。すでに10年近いキャリアを誇るバンドで、4年前の2nd『カーディナル』はPitchforkをはじめ多くのメディアで年間ベストの候補にも選ばれた実力派だ。

そんな彼らは自分たちを「フォークの伝統を継ぐエネルギッシュな音楽」と評する。いうなればインディ・ロックとルーツ・ミュージックのあわいを縫うようなスタイルで、絡み合うギター・ワークとダイナミックなリズム構成が織りなすバンド・アンサンブルが醍醐味。デス・キャブ・フォー・キューティービルト・トゥ・スピル、初期のウィルコも引き合いに出される一方、近年リバイバルを見せるEMOの若手筆頭格に挙げられるなど、ジャンルの枠を超えて訴えかけるエモーショナルでリリカルなサウンドが魅力だ。4枚目となるニュー・アルバムの本作においても、そんな彼らのスタイルは変わらない。ただし、たっぷりと間合いを取り、緩急を効かせた演奏と、余分な音を削ぎ落としたミニマルなプロダクション。それにより、持ち味の素朴で美しいメロディと情感豊かな歌声がぐっと際立ち間近に感じられるのが本作の特徴だ。なかでも、アメリカーナからスロウコアまで景色を広げた“エンドレス”や“ヘアピン”は白眉。そして、ジェイムズ・ジョイスらの文学作品からの影響を公言するVoエヴァンの歌詞。“モーメント”や“ジ・アラーミスト”をはじめ切実で深い内省を滲ませた描写は、前作『スカイライト』の前後にバンドを見舞った困難を想起させて生々しい。名門〈ラフ・トレード〉からのデビュー作となる本盤は、パイングローヴというバンドにあらためてスポットを当て、その評価を新たに定義するアルバムになるだろう。(天井潤之介)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。
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パイングローヴ マリーゴールド - 『rockin'on』2020年2月号『rockin'on』2020年2月号
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