ベテラン音楽家かくあるべし

ニコラ・ゴダン『CONCRETE AND GLASS』
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ALBUM
ニコラ・ゴダン CONCRETE AND GLASS

エールとしての現状最後の音源となっているサントラ『ミュージック・フォー・ミュージアム』が2014年(編集盤としては2016年にベスト盤をリリース)と気が付けば6年の月日が流れているが、ニコラ・ゴダンは相方のJB・ダンケル同様に活動の歩を緩めず、精力的な創作を続けている。2015年のソロ1枚目『Contrepoint』はグレン・グールドによるバッハの再解釈に触発され、バッハのスコアを自曲に取り込むという、かなりコンセプチュアルな作品だった。また、フランスのテレビドラマ『シークレットサービス マル秘ミッション』のサントラを手掛けたことも記憶に新しい。そして、この5年振りに上梓されたソロ2作目は、彼のルーツである「建築」をモチーフにしつつ、より肩の力が抜けた素のニコラ・ゴダンの音楽が収められているように思える。ソフィスティケイトされたロマンティシズムでコーティングされたエールの音楽に比べればいささか生真面目であり、しかし多彩な音色が特徴的だった『Contrepoint』との比較ではより親しみやすいメロディに溢れているからだ。とはいえ、もちろんニコラ・ゴダンである。丁寧に作り込まれたサウンド・プロダクションは相変わらず舌を巻く完成度。また、本作ではコーラ・ボーイ(米国)やケイトNV(ロシア)、キリン・J・カリナン(豪州)といった彼の後続となる音楽家達を世界各国から招いており、アルバムに多種多様な色を染めている。その人選は、アルバムの制作中に出た新作をチェックして、リアルタイムで決めていったという。世界で今何が起きているかをキャッチし、それを取り込むフットワークの良さ。その上で、自身の表現をやり切る実力。ベテランが立つべきひとつの理想の高みに、今の彼はいる。(長瀬昇)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。
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ニコラ・ゴダン CONCRETE AND GLASS - 『rockin'on』2020年3月号『rockin'on』2020年3月号
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