大人の祝祭

ホセ・ジェイムズ『ノー・ビギニング・ノー・エンド 2』
発売中
ALBUM
ホセ・ジェイムズ ノー・ビギニング・ノー・エンド 2

ビル・ウィザースのトリビュート・アルバム『リーン・オン・ミー』(2018年)をはさみ、オリジナル・アルバムとしては『ラヴ・イン・ア・タイム・オブ・マッドネス』(2017年)以来3年ぶりの新作。2013年の『ノー・ビギニング・ノー・エンド』の続編的な作品でもある。2013年版は名門ブルーノート移籍第1弾、今作はブルーノートを離れ自らの自主レーベルからの第₁作。心機一転しての決意のほどが、アルバム・タイトルに表れている。始まりでも終わりでもなく、ただ自分の現在進行形の姿を焼き付けておきたかったのだろう。プロデュースは2013年版も手がけたブライアン・ベンダー。

ホセ・ジェイムズの強みは、その類い希なバランス感覚にある。ジャズ、ソウル/R&B、ファンク、ヒップホップをバランスよく配合し、決して必要以上に偏ったりイビツになったりすることなく、大げさな身振りも声高な自己主張もない、穏やかで思慮深い大人の表現。それでいて決して面白みのない優等生的なものにはならず、その英知と経験が血肉となって歌に、演奏に、音の隅々まで脈打っている。

今作はジャズ色が薄れ、70年代ソウル/R&Bに寄った作りになっているせいか、よりエモーショナル。生音中心のオーガニックなアレンジとバンド演奏は、空間を活かした奥行きのある滋味深いもの。そして主役たるホセのボーカルは、新たな旅立ちに立ち会う解放感を伸びやかに歌う。新妻ターリとのデュエット“アイ・ファウンド・ア・ラヴ”の抑制の効いた曲調とボーカルが、静かな喜びを伝える。ビリー・ジョエルの“素顔のままで”のベタなカバーも含め、ホセの心情がより率直に反映された作品と言えるだろう。良いオーディオでじっくり聴きたい佳作だ。 (小野島大)



詳細はUNIVERSAL MUSICの公式サイトよりご確認ください。

ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

ホセ・ジェイムズ ノー・ビギニング・ノー・エンド 2 - 『rockin'on』2020年4月号『rockin'on』2020年4月号
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