67分の謎めいたドラマ

フライング・ロータス『フラマグラ(インストゥルメンタルズ)』
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ALBUM
フライング・ロータス フラマグラ(インストゥルメンタルズ)

昨年発表の『フラマグラ』には、アンダーソン・パークソランジュ、ジョージ・クリントン、トロ・イ・モワなど個性的な面々が歌やラップで参加していた。アルバムでは当然、ボーカル曲が目立つことになった。一方、声を除いたのが『フラマグラ(インストゥルメンタルズ)』だ。歌やラップの背後で様々な音色が絡まりあっていたことに気づかされる内容である。

フライング・ロータスとの共同プロデュースで最新作『イット・イズ・ホワット・イット・イズ』をリリースしたサンダーキャットのほか、ハービー・ハンコック、ロバート・グラスパーなど達人たちが演奏に加わっている。だが、ジャズ的なソロの応酬で個々を目立たせるよりは、サウンド全体のテクスチャーで楽しませる方向だ。また、特定のビートで1曲を押し通すのではなく途中でテンポが変化したり、メロディアスだったりする部分が多い。27曲67分で1曲1曲は短いが、曲ごとに起伏があるため、2枚組超大作のような聴き心地になっている。

例えボーカルがなくなってもドラマチックな『フラマグラ』には、映画のサウンドトラックに近い印象がある。また、インスト版になった本作で声が唯一残されたのが“ファイア・イズ・カミング”だ。同曲にはデヴィッド・リンチのナレーションが入り「火が来る」と繰り返される。この監督は『ツイン・ピークス』映画版に「Fire Walk With Me」と副題をつけ、『ファイア』と題した短編映画を制作していた。「火が来る」という謎めいた言葉が、アルバムの発想源であるのは、オリジナル版とインスト版の両方のジャケットに炎が登場していることにも示されている。極上の音に身をゆだねつつ、それがなにを意味しているのか、イマジネーションを膨らませたい。 (遠藤利明)



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フライング・ロータス フラマグラ(インストゥルメンタルズ) - 『rockin'on』2020年7月号『rockin'on』2020年7月号
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