唯一無二の個性

クルアンビン『モルデカイ』
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ALBUM
クルアンビン モルデカイ

昨年のフジロックでも、その摩訶不思議なエキゾ空間とエンターテインメント精神に溢れたパフォーマンスで観客を魅了した米テキサスの3人組クルアンビンの2年ぶり3作目。60~70年代の東南アジアの音楽に影響を受けたというメロウな脱力無国籍サウンドは、もちろん健在だが、今作でのもっとも大きな変化は、ほとんどの曲でボーカルをフィーチャーしていること。ふわふわと漂うような、あるいは鼻歌のような主張の希薄なボーカルだが、持ち前の浮遊感の漂うサーフ・ロック的でダビーでアンビエントでファンクなクルアンビン・サウンドを損なうことがない。なので驚きはないが、自然に溶け込んで違和感もない。

先行シングルとして発表された“Time (You and I)”は、オールドスクールな韓国歌謡(K-POPではなく)からの影響をうかがわせる歌もので、80年代ディスコを彷彿とさせるチープなリズムとキッチュなポップ・センスをダビーな音響で閉じ込めたレトロ・モダンな音楽空間は、クルアンビンにしかできない世界であろう。

こういう西欧白人によるアジア音楽やアフリカ音楽、中近東音楽、ラテン音楽の摂取、それも一般的には安っぽい音楽として無視されがちな流行歌謡的な部分のアプローチは、ともすればただ物珍しさだけのエキゾティシズムやスノビズム、自分に都合のいい部分だけを食い散らかす文化収奪に繋がりかねない。しかし彼らの音楽にそれを感じないのは、自分たちの文脈への取り入れ方に過剰な自己主張がなく、謙虚で自己抑制的であるからだろう。

デビュー以来、世界中を旅して廻り、さまざまな音楽を吸収してきた成果がここに活かされている。ぜひライブで確認したいところだ。 (小野島大)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
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クルアンビン モルデカイ - 『rockin'on』2020年7月号『rockin'on』2020年7月号
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