青春が終わり、人生が始まる

マニック・ストリート・プリーチャーズ『ゴールド・アゲインスト・ザ・ソウル (デラックス・エディション)』
発売中
ALBUM
マニック・ストリート・プリーチャーズ ゴールド・アゲインスト・ザ・ソウル (デラックス・エディション)

今から27年前にリリースされたセカンド・アルバムである。本盤はハードカバー豪華本仕様のジャケに、CDが収まった生産限定盤。ジャケには長年バンドを撮り続けてきたミッチ池田の未発表写真やニッキー・ワイアーによるライナー・ノーツ、オリジナルの手書き歌詞などが掲載され、CDはリマスターされた本編アルバムと、シングルB面曲や未発表デモなどレア・テイクが入った2枚組となっている。

良くも悪くも大きな話題となったファースト・アルバム『ジェネレーション・テロリスト』からわずか1年。「ファースト・アルバムを世界中でチャート1位にしてから解散する」という冗談のような玉砕宣言は、当然ながらはたされることはなく、祭りの季節は終わってもバンドという日常は続いた。こと日本に於いてはそんな彼らへの失望感も大きく、このセカンドが出た時には彼らへの関心はすっかり低くなっていたように思う。だが今にして思えば、今日まで至るマニックスの真の出発点となったのはファースト・アルバムではなく本作なのである。

「稚拙なクラッシュ」という印象を免れなかったファーストに対して、ドラマティックでエモーショナルでオーセンティックなクラシック・ロック色を強めた本作は、ファーストよりはるかに音楽的だ。

久々に聴いた本作には時の流れを感じてしまう場面もある。後に完成されるマニックス・サウンドの個性は既にはっきりうかがえる。だがすべてが未完成で未成熟なのだ。リマスターで改善されているとはいえ、ローが欠如した音響面も物足りない。

だがここから始まったという実感は、このサウンドだからこそ強い。デモ曲も含めた全37曲。青春が終わり、人生が始まる。その瞬間を捉えた秀逸なドキュメンタリーである。 (小野島大)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
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マニック・ストリート・プリーチャーズ ゴールド・アゲインスト・ザ・ソウル (デラックス・エディション) - 『rockin'on』2020年8月号『rockin'on』2020年8月号
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