アトランタ拠点の27歳ラッパーのガンナ、昨年のファースト・アルバム『Drip or Drown 2』に続く1年3ヶ月ぶりの2作目(ミックステープもあわせると8作目)である。
元は同郷のヤング・サグの“Floyd Mayweather”にグッチ・メインやトラヴィス・スコットと共にフィーチャーされて認められ、ヤング・サグのレーベルYSLと契約。以降ガンナのリリースはミックステープ含めすべてYSLからリリースされている。2018年にはリル・ベイビーとのコラボでヒットを連発し、一気に知られるようになった。以降、マライア・キャリー、アッシャーなど客演も爆発的に多くなっている。今が旬の若手筆頭と言っていいだろう。
本作にもヤング・サグが参加、トラヴィス・スコットや盟友リル・ベイビー、ロディ・リッチ、ネシーもフィーチャリングされて、彼にとって初の全米チャート1位を記録している。タイトルは“Wealthy Unapologetic Nigga Naturally Authentic”の略とのこと。
アトランタらしくトラップが中心だが、生楽器を巧みに織り込んだ非常に繊細でエモーショナルなトラックと、歌とラップを接続する柔らかくメロディアスなフロウが抜群。のべ20人近いプロデューサーがクレジットされているが、大向こう受けするような派手さはなく、シンプルで隙間の多いサウンドは非常に内省的で思索的ですらある。音楽的には前作の延長線上にあるが、より深みと奥行きを増した幻想的なサウンド構築と、力みというものをまったく感じさせない懐の深いラップは、明らかに前作以上の水準にある。多作な人だが、クオリティを落とさず安定した作品を作り続ける力量はシーン屈指と言えるだろう。間違いなくこれまでの最高傑作。 (小野島大)
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