情報量過多なサイケ/エクスペリメンタルの音像と、それを追い越す勢いで放たれる歌心。異才シンガーソングライター/トラックメイカーとして注目を集めている、埼玉県出身アーティストの3作目となるフルアルバムだ。
大学在学中の2018年よりMomとしての本格的な活動をスタートさせた彼だが、ビートミュージックやクラウドラップ、ローファイポップまでを見渡すZ世代的な感性で、その脳内を覗き込みたくなるような不思議な魅力の作品を連発している。本作においても、物悲しいベース/トラップソング“マスク”の直後に、柔らかでフォーキーなストーリーテリング“レクイエムの鳴らない町”が収録されていたりと掴みどころがないのだが、体温のあるイメージを次々に放つ歌は、するすると胸の内に入り込んでくる。
ただハッピーなヴァイブを振りまきたいわけではないし、一面的な怒りや悲しみを伝えたいわけでもない。人の心はもっと複雑に入り組んでいて、その思いに気づいてほしいんだというふうに、Momのストレンジな音楽は切実に響いてくる。(小池宏和)
まるで、涙を流す道化師のよう
Mom『21st Century Cultboi Ride a Sk8board』
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