古くて新しいUKジャズの今

オスカー・ジェローム『BREATHE DEEP』
発売中
ALBUM
オスカー・ジェローム BREATHE DEEP

サウス・ロンドンのジャズ・シーンの次世代を担う新星、オスカー・ジェロームの待望のデビュー・アルバム。ユセフ・デイズやシャバカ・ハッチングスらとのコラボを重ねる中で頭角を現してきた彼はまさに今旬の才能で、錚々たる面子が参加したUKネオ・ジャズ・ムーブメントの名刺代わりのコンピ集『We Out Here』にもエントリー済み。その盤石のバックグラウンドからトム・ミッシュとも比較され、ミッシュのようにフュージョン・ポップとしてメインストリームでの成功も射程内に収めたアーティストだと言っていい。 
 
しかし、本作の本質はミッシュのようなフュージョン・ポップ、イージー・リスニングとしてカテゴライズされるのも厭わないほどキャッチーなそれとはむしろ対極にあるように聴こえる。もちろんシングル曲を筆頭にメロウで心地よいフロウが漂うし、センシャルなピアノ・ジャズやチルなカリビアンなど肩の力を抜いて楽しめるシンガー・ソングライター・チューンも多い。それでもアルバム全編を通して圧倒されるのは、彼の高度なプレイヤー・スキルを担保にした即興性、実験性の高いナンバーなのだ。そういう意味では彼は、古からジャズが生み続けてきた由緒正しい異才なのではないか。もともとジェロームはアフロ・ジャズ・バンドKOKOROKOとして活動しており、そのメンバーも参加した本作は当然テンション高めに転調を繰り返すアフロのポリリズムが起爆剤になっている。メロディをなぞるだけではないラップというかスポークン・ワード、スポークン・ワードというかパーカッションのようなボイスもまた、本作の立体的なリスニング体験を促してくれる。長年UKシーンの中核であり続けているサウス・ロンドン勢の層の厚みを、改めて実感できる一作。 (粉川しの)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。
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オスカー・ジェローム BREATHE DEEP - 『rockin'on』2020年9月号『rockin'on』2020年9月号
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