破れた夢のかけらを集めて

ポップ・スモーク『シュート・フォー・ザ・スターズ、エイム・フォー・ザ・ムーン』
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ALBUM
ポップ・スモーク シュート・フォー・ザ・スターズ、エイム・フォー・ザ・ムーン

2019年、ニューヨークから、ひとりのスター・ラッパーが誕生しようとしていた。彼の名前はポップ・スモーク。メジャー・デビュー前にもかかわらず、シングル“Welcome to the Party”のMVは大ヒットを記録。そのあまりにカリスマ的なラップは、かつての50セントの栄光に喩えられることも多かった。成功はもう目の前だった。あとはアルバムを出すだけだ。

でも、その夢が叶うことはなかった。2020年2月19日、スモークはLAに滞在中、覆面の集団に襲撃され、銃殺された。犯行の動機は、現在も調査中だという——アメリカのヒップホップ界は今も暴力の闇を抱えていて、才能のある若者たちが次から次へと無駄死にしている。悲しいけど、それが現実だ。

この『Shoot for the Stars, Aim for the Moon』は、スモークの死から約5ヶ月が過ぎた今年7月3日にリリースされた、彼の事実上の「メジャー・デビュー作」。全19曲の楽曲のほとんどは、スモークが生前に遺していたボーカル音源をさまざまなプロデューサーたちが完成にこぎつけたもので、エグゼクティブ・プロデューサーのひとりには50セントの名前もクレジットされている。予想されたとおり、参加ゲストも豪華で、フューチャー、クエイヴォ、ダベイビー、ロディ・リッチなど、今をときめく人気ラッパーが顔を揃えている。とは言え、本作はポップ・スモークのデビュー・アルバムだし、本来なら彼のラップをもっとたっぷり堪能できる作りに仕上がっていただろう。そう考えると、つくづく残念だ。7月20日にはすでにデラックス・エディションもリリースされ、そっちはさらに15曲が追加された。ポップ・スモークはもういない。でも、2020年の夏、誰もが彼の「新曲」を探し求めている。 (内瀬戸久司)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。
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ポップ・スモーク シュート・フォー・ザ・スターズ、エイム・フォー・ザ・ムーン - 『rockin'on』2020年9月号『rockin'on』2020年9月号
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