独立後第2弾となる配信シングル。前作『毒の根の音』の濃厚さに較べれば、フットワーク軽くぶん投げてくる飛び道具みたいなシングルだ。そのぶん感覚ピエロというバンドの輪郭がくっきりと見えてくるような2曲でもある。《シェケナベイベ　不敵なギラギラで／何かヤバイぜマジでぴえん》というサビのフレーズが最高すぎる横山直弘作詞作曲“シェケナベイベ”は感エロ一流のエロさと遊びの部分がマシンガンのように炸裂するアッパーチューン。対して秋月琢登が歌詞を書いた“your answer”は《どうして生まれたのでしょう？／何のため　誰のため　何をするために？／意義は　理由は　意味は　使命は何だ？》と果てしない自問自答を繰り広げるメッセージソングだ。この2曲を繋ぐキーワードは、シングルのタイトルになっている『it.』（いと、と読む）。《そろそろガチの真剣勝負で／赤い糸を繋ぐんだ》、《どれほど弱く脆く　今にもちぎれそうな糸も／途切れぬように　解けぬように／残したい今があるように　僕は繋ぐよ》という思いは、今の感覚ピエロのファイティングポーズだろう。（小川智宏）

『ROCKIN'ON JAPAN』2020年10月号より