祝! 初期フロイド祭り

ニック・メイスンズ・ソーサーフル・オブ・シークレッツ『ライヴ・アット・ザ・ラウンドハウス』
発売中
ALBUM
ニック・メイスンズ・ソーサーフル・オブ・シークレッツ ライヴ・アット・ザ・ラウンドハウス

この新型コロナウイルス禍がなければ4月にリリースされるはずだったライブ盤がようやく発売だ。本誌4月号のヘッドラインでも書いたが、このプロジェクト以前からピンク・フロイドの再編、または何らかのライブ活動に積極的だったドラマー、ニック・メイスンが、ついにしびれを切らして18年から始動させていたのが、『狂気』前のピンク・フロイド・ナンバーにポイントを絞ったニック・メイスンズ・ソーサーフル・オブ・シークレッツで、昨年5月にロンドンで行ったステージを録ったのが『ライヴ・アット・ザ・ラウンドハウス』だ。

レパートリーを『狂気』前の初期楽曲に絞っているところがミソで、コンセプトをどんどん深く広くし巨大グループになっていく以前のサイケデリック・クラブでアイデアを磨いたり、スタジオやライブの場でイマジネーションを拡大していった頃がニックには特別な思いが大きいのだろう。87年以降のピンク・フロイド・ツアーにも参加したガイ・プラット(B)やドム・ビーケン(Key)、主にボ
ーカルを取る元スパンダー・バレエのゲイリー・ケンプ(Vo/G)やザ・ブロックヘッズのリー・ハリス(G/Vo)といったメンバーの演奏も、ヘンにこなれすぎず、あの頃の生々しさをビビッドに描き出す。

シド・バレットが主導したファースト・アルバム『夜明けの口笛吹き』と、それ以後の『ウマグマ』や『原子心母』、『おせっかい』といったアルバム群とではアプローチは大きく違っているわけだが、そんなピンク・フロイド史を本人から、再解釈も含めた解説付きで聴かせてもらっているような贅沢感は思いもしなかったもので、それは例えばトリビュート・バンドが持つ無条件な楽しさとは別物。間違ってもあり得ないではあろうが、もしロジャー・ウォーターズやデイヴ・ギルモアの気が変わりピンク・フロイドをやってみようかとなっても、こんなセットリストが出てくることは絶対にない。

まさか今頃になってシド時代のデビュー・シングル“アーノルド・レイン”や“シー・エミリー・プレイ”、“バイク”が“吹けよ風、呼べよ嵐”と並んでライブで聴ける日が来るとは思いもしなかったし、どれもファンには超の付く人気曲ばかりだが、そこらも含めてニックならではのサービス精神全開だ。昨年4月のニューヨーク公演ではロジャーが飛び入り参加して“太陽讃歌”をやったなんて話もあるが、これもニックのプロジェクトだから可能だったのだろう。来年4月からのツアー・スケジュールももう発表されているが、なんとか
日本も! (大鷹俊一)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。
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ニック・メイスンズ・ソーサーフル・オブ・シークレッツ ライヴ・アット・ザ・ラウンドハウス - 『rockin'on』2020年10月号『rockin'on』2020年10月号
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