今年めでたくデビュー20周年を迎えている
矢井田瞳の、約4年半ぶり通算11作目となるアルバム。NHK『みんなのうた』に書き下ろした“はだしのダイアリー”では《とがったヒールで知らずに傷つけた/だけどサンダルじゃ速く走れないよ》という歌い出しで裸足のシンガーとしての彼女を思い出させ、産経新聞のプロジェクトを通して一般にメッセージを募り、エッセンシャルワーカーを応援する歌詞が完成した“あなたのSTORY”など、まさに共有されるべきポップソングたちの真ん中に彼女の歌声が置かれているアルバムだ。これまで通り彼女自身による風通しの良いソングライティングも素晴らしいのだが、高瀬亮佑+高田歩によるデュオ=
高高-takataka-の“It's too late?”をカバーし、また初めて作曲提供(以前にも共作はあった)を受けた“きっとJust fine”など、他のソングライターたちの力も受け止めながらきっちりヤイコ節として仕上げる懐の深さを感じさせる。リッチ&ドリーミーなアコースティック路線からパワフルなエレクトリックサウンドまで、奥行きのあるアレンジも見事。(小池宏和)
『ROCKIN'ON JAPAN』2020年12月号より