多彩の中の不変

ライ『HOME』
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ALBUM
ライ HOME

2020年、アルバムに先んじて公開された“Beautiful”ではパートナーとの穏やかかつ永遠が流れているような日常をたおやかなエレクトロに乗せて歌い、“Helpless”では、とても近い距離での心と心のコミュニケーションを歌っていたライことマイケル・ミロシュ。

『Blood』以来、約3年ぶりの3rdアルバムのタイトルは『Home』。ナイン・インチ・ネイルズU2インターポール等を手掛けたアラン・モウルダーがミックスを担当し、2019年から2020年初頭にかけて制作されたという。新型コロナウイルスによるパンデミックによって、家は安らぎの場所としてだけでなく、よりインスピレーションの源であることも必要とされるようになったと言えよう。今作も、自宅での実験的な制作活動が大きな源泉となっているようだ。

讃美歌のような荘厳なコーラスが、1秒ごとに全身の隅々に平穏をもたらしていくような約1分半の“Intro”。そして、完全に心がときほぐされてから、ミロシュの官能的な歌声と優美なストリングスと躍動的なビートが明るく絡み合う“Come in Closer”へと向かう。

至高の幕開けを経て、バイオリンが力強く舞うように旋律を奏でるアップテンポの“Safeword”、フリーキーで中毒性のあるリズムが通底する“Hold You Down”、ミロシュが「クインシー・ジョーンズが解釈したような80年代のディスコ・サウンド」と評しているノスタルジックで華やかなダンス・ミュージック“Black Rain”、そしてピアノの弾き語り的な“Fire”――。実に華やかで多彩なサウンド・アプローチが並んでいる。その中で、シンプルで本質的な心の動きを奏でる、不動の芸術作品のようなミロシュの歌声がやはり素晴らしい。(小松香里)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。
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ライ HOME - 『rockin'on』2021年2月号『rockin'on』2021年2月号
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