酸いも甘いもかみ分けて

マシュー・スウィート『キャッツポウ』
発売中
ALBUM
マシュー・スウィート キャッツポウ

最近ではバングルスのスザンナ・ホフスと作った一連のカバー・アルバムが話題になったマシュー・スウィートの約2年ぶり、通算15枚目のソロ・アルバム。作詞作曲プロデュースから、ボーカルはもちろん、ドラムを除く演奏(ドラムだけはヴェルヴェット・クラッシュのリック・メンクが担当。マシューの近作には全部参加)、レコーディングやミックスまで、すべてマシュー1人で手がけたワンマン・アルバムだ。録音も彼の自宅スタジオで行われており、つまりは完全なロックアウト作品と言える。とはいえ、ここ最近のマシューの作品はドラム、ギター、ベースというベーシックなトリオ編成での演奏が主で、ゲストも最小限に留めていたので、このアルバムだけが特別という印象はない。つまり手慣れた制作環境なのでワンマン録音とはいえ音も良い。ドラムなど抜群にいい音で録れている。

内容はと言えば、ここ最近のマシューの基本的な音楽性である、ざっくりしたギター、ゆったりしたリズム、骨太な歌と繊細なコーラス、明瞭で大らかなメロディ、手堅いバンド・サウンドという、オーセンティックなアメリカン・ロックを今回も展開。柱となるドラムがしっかりしているので、演奏の安定感は抜群。曲の出来もいい。

出世作『ガールフレンド』(1991)の時から基本的な音楽性は変わっていないといえば変わっていないし、ギターは相変わらずいい音をしている。でもあの頃はギター・ポップ、パワー・ポップと言われるに相応しい軽やかで繊細で青年的な音楽だったけど、今のマシューがやっているのは落ち着いたオトナのロック。言ってみればニール・ヤングに近い。マシューも56歳、経験を積み、酸いも甘いもかみ分けて、いい歳の取り方をしていると思う。(小野島大)



詳細はOmnivore Recordings(海外)の公式サイトよりご確認ください。

ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。


マシュー・スウィート キャッツポウ - 『rockin'on』2021年3月号『rockin'on』2021年3月号
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