音の魔術師の現在地をスナップ

マッドリブ『サウンド・アンセスターズ』
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ALBUM
マッドリブ サウンド・アンセスターズ

00年代のアンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンから浮上し、クレート・ディガーとしての博識と水際立った感性、カジモトを始めとする多数の名義を使い分けジャンルを越境する一種神出鬼没な存在感とでリスペクトを集めてきたカリスマDJ/鬼才ビートメイカー、マッドリブ(本名オーティス・ジャクソン・ジュニア)。昨年暮れにカリーム・リギンス(Dr)との「スピリチュアル・ジャズの現代アップデート版」と言える秀逸なコラボ作(ジャハリ・マッサンバ・ユニット名義)を発表したばかりだが、本人名義でのソロ作が早くも登場した。

きっかけはキエラン・ヘブデンことフォー・テットからの申し出で、マッドリブから送られた膨大な量のトラック群を編集・整理・マスタリングする骨の折れる作業を彼が担当している。ヘブデンの意図は、広がり続けるマッドリブの音の曼荼羅をショウケースする名刺代わりのアルバムを作るというものだったようだ。ヒップホップ、ジャズ、ソウル、サイケ、ワールド・ミュージック等々を緻密にブレンドし綴り合わせることで生まれる新たな総体は、酩酊を誘うヘッドフォン体験をもたらすと共に驚異的な守備範囲の広さを改めて見せつける(チベット音楽も使われているそうだし⑥のヤング・マーブル・ジャイアンツのサンプリングには思わず涙)。「サウンドの祖先」のタイトルが示唆するように古今東西の音楽は繋がっている=そのシナプスを発見するのは聴き手という彼の基本姿勢も伝わる内容で、若いリスナーに格好のマッドリブ入門編作品だと思う。1曲目のタイトルは奇しくも「時間は残っていない」だが、J・ディラに捧げた⑫はもちろんMFドゥームの不慮の死を思うと彼の創作活動はますます加速しそうだ。今作を機に追いつこう。(坂本麻里子)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。
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マッドリブ サウンド・アンセスターズ - 『rockin'on』2021年4月号『rockin'on』2021年4月号
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