季節にフォーカスする楽曲って、さじ加減が難しいと思う。誰もがその季節を思い浮かべることができる広い入口――はっきり言えばベタなところも必要。それでいて、季節というテーマに食傷気味な鼓膜をビビッと震わせてくれるような、みずみずしさも欲しい。それらすべてに応える楽曲が、マカロニえんぴつの初のウインターソング“メレンゲ”。言わずもがなだけれど、知識と技巧に関しては折り紙つきのバンドであり、経験や人気も積み重ねてきた今、ここにきて難題をクリアするセンスも発揮するという！ 恐れ入りましたと言わざるを得ない。

様々な音色を足しては引き、強めては弱めて、重層的な音像をドラマティックに作り上げている。その中で、寒い空気が白く染まる画が見えるほど、はっとりの歌声が熱っぽく響いている。緻密でゴージャスな構造なのだけれど、たまらなく人間臭い温度と形に仕上げられているのだ。さらに歌詞の、美しいだけでも、物寂しいだけでもない、《情けなさも雪に預けてしまえよ！》という「冬感」も新鮮。ポップスの開拓者として、大きな一歩を踏み出したと思う。（高橋美穂）

『ROCKIN'ON JAPAN』4月号より