根源的なエネルギー、迸る

チューン・ヤーズ『スケッチー.』
発売中
ALBUM
チューン・ヤーズ スケッチー.

3年ぶり5枚目のアルバム。冒頭には2年半ぶりの新曲としてリリースされた“nowhere, man”が。ノイズ混じりの《People wanna hear you sing》という合図を皮切りに、メリル・ガーバスの何をも恐れないような猛々しくソウルフルな歌が轟き、幾重にも重なるトライバルで無軌道なトラックとの融合がとても痛快だ。

続く“make it right.”といい、今作はメリル・ガーバスの祈祷のような手触りを持つ歌声が強く印象に残るが、中でも中盤の流れはとても示唆的だ。《silence》という言葉が呪文のように繰り返され、土着的な儀式のような音像が描かれる“silence pt.1(when we say“we”)”のあと、“silence pt.2(who is“we”?)”と名付けられた長い静寂へ。そして、最新シングルである“holdyourself.”がスタートする。この曲は2019年に書かれた曲だが、テーマは現在進行形のものだそう。《They tried to raise us/But parents betrayed us even when they tried》というショッキングな一節が冒頭にありつつ、何度も《Hold ourselvesnow》と高らかに歌われ、幾重にもコーラスが重ねられる。チェンバー・ポップ×クワイア的な新しい音像且つ、チューン・ヤーズ史上随一のしとやかな歌がストレートに聴こえる曲となっており、メリル・ガーバスはこの曲について「私が両親の世代に裏切られたと感じていると同時に、私達も未来を裏切っているという事を歌っている」と語っている。理不尽さに対する怒りや疑問を鎮め、自分自身を慈しむ歌が放たれるこの“hold yourself.”が象徴するように、『sketchy.』は、現代社会が抱える様々な問題と向き合い、自身と音楽を再生させていくような根源的なエネルギーが通底している、とてもエモーショナルなアルバムだ。(小松香里)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。
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チューン・ヤーズ スケッチー. - 『rockin'on』2021年4月号『rockin'on』2021年4月号
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