光の先にある豊かさを求めて

BBHF『黒い翼の間を』
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翼が黒いのは、自らが求める新しい光に向かって突き進んでいるから――その直向きで頼もしい鳥の姿は、音楽人生という長い旅をし続けるバンドの生き様と重なる。新体制初の楽曲は、その人生で育んだ哲学を明確に示すだけでなく、彼ら以外の人間にも風を起こすような、爽やかかつ確かなエネルギーでみなぎっている。生のストリングスと豊潤なバンドサウンドが、光と影のコントラストを作りながら雄大な景色を描き出す。メロディは大空を思いのままに羽ばたく軌道や、自然と零れ落ちたさえずりのように自由だ。ファルセットを織り交ぜながらそれを辿るボーカルも、生命特有の揺らぎをセンチメンタルかつロマンチックに彩る。歌詞に綴られるのは、出会いと別れを繰り返し、傷を負い、惑う中で生まれてきた意志。《他の誰でもない 僕のことを 見てくれよ》という願いは、「あなたとともに生きていきたい」という愛の告白だろうか、はたまた「遠くにいてもあなたに見えるように飛び続ける」という誓いだろうか。聴き手の想像力を健やかに呼び覚ます音と言葉は、新しい道へつながる扉を開いてくれる。(沖さやこ)