彼女自身はあんまり笑わない

フェイ・ウェブスター『アイ・ノウ・アイム・ファニー・ハハ』
発売中
ALBUM
フェイ・ウェブスター アイ・ノウ・アイム・ファニー・ハハ

2019年にリリースされた前作『アトランタ・ミリオネアズ・クラブ』で高評価を得たシンガーソングライター、フェイ・ウェブスター。口の周りをベトベトに汚し、鷲掴みにしたチョコレート金貨をむさぼるインパクト満点のジャケットで、その顔と名前を覚えた人も多いと思う。

彼女の音楽は、ペダル・スチールを全面にフィーチャーしていることもあって、カントリーとかフォークという第一印象を与えるが、例えば、ブラスのアレンジが雰囲気を出してる“Cometo Atlanta”はR&B/ソウル、ラッパーのFatherをゲストに迎えた“Flowers”はヒップホップの要素を持っていたりして、なかなか一筋縄ではいかない。地元アトランタで豊かな音楽性を、自然に幅広く吸収し、血肉化した新世代(98年生まれ)だ。ちなみに、以前レーベルメイトだったEtherealとは高校時代からの友人だそうで、これまでに何度も共演作を発表してきている。

そんな彼女の新作には「私が可笑しいってことは承知です、ハハ」というタイトルが冠され、ジャケットでは自らに「haha」シールをペタペタと貼り付けてみせるなど、つかみどころのない(だが、そこがいい)不思議なユーモア・センスも健在。

サウンド面では、コロナ禍の影響もあり、プロデューサーのドリュー・ヴァンデンバーグを中心に、アセンズのミュージシャンたちで結成したバンドと録音されたためか、よりタイトにまとまりながら、多様性は曲のエッセンスとなって深いところに染み込んだという感触を受けた。個人的には、ベースがガツンとヘヴィな6曲目が特に気に入っている。mei eharaという人が、いきなり日本語で歌い出す10曲目も面白い。なお、冒頭を飾る“Better Distractions”は、オバマ元大統領が昨年お気に入りに選んでいた1曲だ。(鈴木喜之)



ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
ご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。

フェイ・ウェブスター アイ・ノウ・アイム・ファニー・ハハ - 『rockin'on』2021年8月号『rockin'on』2021年8月号

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