1stアルバムが彼女の奥底にあるパーソナルな成分を丁寧に抽出した作品ならば、今作は彼女の表現者としてのレンジの広さと、飽くなき好奇心を味わえる作品と言っていい。東京スカパラダイスオーケストラの加藤隆志、亀田誠治、AxSxEなどのトップランナーや彼女と同世代のクリエイターによる、それぞれのポップセンスとどこか毒気を感じさせるアレンジは、彼女のソングライティングのスケールをさらに拡張。色とりどりの楽曲群のなかで、ボーカルものびのびと楽曲ごとに異なる表情を見せている。キャッチーでユニークなアプローチも多いぶん、“残して”や“ペチカの夜”といった、心の痛みを一つひとつ優しく見つめるように、繊細に歌を紡いでいく楽曲の存在感も格別だ。喜怒哀楽と、音楽や大事な人への愛情が惜しみなく詰め込まれた、きらめきの一作。（沖さやこ）
