「終わり」の続きの話をしよう

にしな『1999』
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ALBUM
にしな 1999
プロフィールによれば、にしなは1998年生まれである。なので、この2ndフルアルバムのタイトルに冠された『1999』という数字は彼女の出生年というわけではない。そうとなれば尚更、未だ終末感漂うこの数字に彼女が込めたビジョンは興味深い。アルバムの最後を飾る表題曲“1999”は、いわば「世界の終わり」を歌う歌である。だが、テイストは悲観的ではない。《地球が滅亡する素敵な夜のこと/僕らはきっと変わらぬ愛を歌う/あの世の続きをしようよ 1999》――にしなはこの曲で、「終わり」の「続き」を夢想している。それは、何が終わろうとも、何が変わろうとも、自分は愛を歌い続けるだろうという決意とも受け取れる。

そう、愛だ。「愛」という厄介なものに対しての強烈なオブセッションを感じるアルバムである。たとえば、冒頭を飾るポップなギターロック“アイニコイ”は、愛に隷属する人間の愚かしさを祝福する。歌詞には《ポケベル》なんてレトロな言葉も出てくるが、彼女が手繰り寄せようとしているのは未来である。愛のもとに等しく惑う生身の人間の姿に、にしなは確かに未来を見ている。(天野史彬)

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