人生を描くしかなかった

月詠み『月が満ちる』
発売中
MINI ALBUM
月詠み 月が満ちる
ボカロP「ユリイ・カノン」によるプロジェクトの2ndミニアルバムで、昨年リリースされた1stミニアルバム『欠けた心象、世のよすが』と対になる物語を描く一作。シンガーソングライターの「リノ」を主人公に、彼女の視点で描いた『欠けた心象~』。対して、リノに音楽へのきっかけを与えた存在「ユマ」の視点で描かれたのが、今作となる。このふたりの登場人物を巡る物語は、“或いはテトラの片隅で”や“だれかの心臓になれたなら”といったユリイのボカロ曲で描いたものにも通じているという。

創作する者の心象を綴った物語である。「何を歌うべきか?」と問われた時に、嘘だらけの軽薄なメッセージを聴き手に投げることはできず、かといって「何も歌わない」という選択肢は選べない――そんな切実な態度が、ユリイに「音楽の作り手」という自分自身に重なる主人公を創作させたのだろう。人生を描くしかなかった。何故なら、音楽そのものだから。本作が、リノとユマを巡る物語の終幕であると、ユリイは既にアナウンスしている。人生を描いた先には、一体何が生まれるのだろうか。(天野史彬)

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