「個性」についての思考が生んだ鮮烈なロックサウンド

Vaundy『ホムンクルス』
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『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』の主題歌で、90’sオルタナを彷彿とさせる歪んだギターサウンドが不穏にして鮮烈。『ヒロアカ』ファンであるVaundyは、作品に触れるたび「いつも自分の“個性”とは何なのか」を考えさせられていたといい、今作を手がけるにあたり「自分の“個性”とは何か、という葛藤を抱きながら」曲を作ったとコメントしている。「個性」とは備わっているものではなく獲得していくものであることを描く『ヒロアカ』ならではの世界観に共鳴し、Vaundyは「個性」を「先人から受け継がれてくるもの」と定義した。そう思うと、90’sのロックサウンドの「個性」を取り込みながら自身の血肉へと昇華する、その構造自体がすでにその答えになっているとも思えてくる。“ホムンクルス”はヒーローの曲ともヴィランの曲とも判別しがたいが、2サビ後に展開するセクションは、人間らしい「個」としての体温を感じさせ、有機的なアンサーソングのようにも響く。非常に奥行き深い主題歌である。(杉浦美恵)

(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年9月号より抜粋)


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