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彼女たちの歌に、きれいに結ばれる恋の物語はほとんどない。切ない恋模様を感情のままにぶつけ、弱ささえも包み隠さず歌う。そんな「人間らしさ」が大きな魅力である。今作でも、恋の痛みや苦しさを抱えた楽曲が中心にあるが、ひとつだけ大きな変化を感じる。これまでの「私」は行き場のない感情を抱え込み、ただひとりで消化していた。だが今作から、その感情が内から外へ開かれている。《君の好きなポニーテールが／似合いたいから／君のために髪が伸びた時／私がどれだけ好きかわかるでしょ？》（“ポニーテール”）では「君」の好みに寄せて髪型を変えてみたり、《もっと目を見て手を握ってちゃんと言って》（“口癖”）、《逃げずに話をしよう》（“後悔する前に”）と、これまで内に秘めていた感情を言葉にもしている。今作『ひびのかけら』は、何気ない日々の中にある痛みや喜び──そんな感情のかけらをひとつずつ丁寧に拾い集めて生まれた作品。山本珠羽の心の変化を軸に、バンドとしての変化と成長もしっかりと刻まれている。（伊五澤紗花）（『ROCKIN'ON JAPAN』2025年12月号より）
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