もはや大御所に近い貫禄

ジョス・ストーン『カラー・ミー・フリー!』
2009年11月18日発売
ALBUM
もはやイギリスを代表する実力派ソウル・シンガーとなったジョス・ストーン。あえて『イントロデューシング・ジョス・ストーン』と名づけた前作は、ソウルもグルーヴもヒップホップも感じさせ、自身の音楽性を本格的に打ち出した作品となったが、今作ではコンテンポラリーな感性を打ち出すのはあえて控え目にしてより老成したサウンドへと表現を拡げてみせた意欲作。しかし、どの曲もジョスの作品として完全に消化されているため、ファーストやセカンドとはまったく違う趣を感じさせ、そこが彼女がこれほどの大器である所以だ。リード・シングル“フリー・ミー”はオリジナルにして完璧なサザン・ソウルとなっていて舌を巻く以外にないような出来。ほかにもジェフ・ベックが共演するモダンなエッジを持ったブルース曲であるM3、フュージョンのジャズ・セッション的なM10、複雑なリズムを持ちながら歌い上げていくファンク系のM9など見事なまでにさまざまなスタイルを重量感をもってこなした力作。NASと共演する前作風のトラックももちろんあり、その思いっきりのいい、甘さをまったく感じさせないジョスの芸に惚れ惚れする作品。(高見展)