発見された「いま、ここ」

東京事変『大発見』
2011年06月29日発売
ALBUM
東京事変 大発見
最強のコンセプト・バンドである東京事変が、おそらく初めてコンセプトを凌駕して「バンド」として音楽を生み出してしまったアルバム、それがこの『大発見』だ。トラックを追うごとに、めくるめくように飛び出してくるアイデアの数々が、一切のブレや迷いのない意志に満ちた音と言葉によって洗練されたポップミュージックに昇華されていく。そしてコンセプトを逸脱したその楽曲たちは、イメージの世界に遊ぶのではなく、ほかならぬ「いま、ここ」に向けて力いっぱい振り下ろされる。《ことばを手にした我等は果たして青き賢者か/それなら浮世は定めし取るに足らぬ事だろう》(“天国へようこそ”)、あるいは《今まで僕らは世界一幸せになる為に/どれほど加速して来たか分からない/神さまお願いです、あきらめさせて》(“空が鳴っている”)。混沌とし、鬱蒼とし、ノイズに満ちたこの「浮世」を「天国」だと断言し、そこに向けて確信をぶつけること。『スポーツ』が東京事変にとっての第一フェイズの集大成だったとしたら、ここから始まる第二フェイズは、椎名林檎が再び「いま」のリアリティに向きあうプロセスとなるのかもしれない。(小川智宏)


縛りを解いて、新しい文明開化へ

今回は7文字揃えで来たか、と曲目を見てまず唸る。これまでのシンメトリー方式からの、大きな転換だ。総てをフラットに捉えるということだろうか。JAPAN2011年6月号にはクラシカルなモチーフをモダンに組み合わせた探検家風コスチュームで登場していたが、オフィシャルの写真は白を基調にしたシンプルな衣装で、明快な制服だった前作と対照的に、自分たちへの縛りも外したという意思表示のように私には思える。
 
百戦錬磨が揃ったこのバンドは、実はバンドになるほうが大変なのだ。それが前提としてあるから、バンドというものをカリカチュアライズすることで、自分たちの中にあるバンド観やバンドとしての音楽を表現して来た。今回は更にわかりやすいバンド的なモチーフをちりばめながら、バンドとして一段と異形な境地に進んでいるように見える。ライザ・ミネリからニルヴァーナ、ファンク調にプログレと大衆音楽史縮刷版の如きバラエティに富んだ曲揃えは、一段と高いハードルであると同時に、バンド的な縛りから解放された結果なのではないか。“新しい文明開化”とは自身の開放であり、それが『大発見』なのだろうと思う。(今井智子)
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