ロックする意志

ザ・クロマニヨンズ『ACE ROCKER』
2012年01月18日発売
ALBUM
毎年1枚アルバムを出し、数ヶ月間をかけてツアーに出て、またスタジオに入ってアルバム作り…・・・というペースをずっと続けているザ・クロマニヨンズは、昔ながらの勤勉なロック・バンドそのものだ。最良のコンディションを維持するために、毎日同じカレーを食べ続けるイチローのように、彼らは働き続ける。
 
彼らのロックンロールも、贅肉がどんどん削ぎ落とされ、歌詞からは意味性がはぎ取られ、いわば「ロックンロール」という形態を維持するための最低限の記号もしくは骨組みだけが鳴っているような状態だ。それでいて痩せこけた貧相なものにならず、むしろ凝縮されたエネルギーや生命力に溢れているのは、それが彼らの意志そのものだからだ。クロマニヨンズの音楽は音ではなく、ロックする意志そのものなのだ。その確信の強さと深さは、3.11を経た本作でも、揺らぐことはない。歌詞を深読みすれば、この国を覆い尽くした死や絶望について言及したと思われる曲もある。だがそれは我々の心が投影されているだけなのだ。その意味で彼らの音楽はいまだリアルな時代の鏡であり続けている。(小野島 大)