内なる自然を解き放つ

藤巻亮太『月食 / Beautiful day』
2012年08月15日発売
SINGLE
藤巻亮太 月食 / Beautiful day
これまでの藤巻亮太は自然の光景を巧みに描写しながら、多くの人が共感できる歌作りに注力してきた。レミオロメンのキャリアは共感の輪が広がっていくことと同義であったように思う。ただし、共感の輪を支える藤巻の肉声は時に驚くほどダークであり、危ういほど繊細であった。レミオロメンの魅力とは、そのギャップにあったとさえ言えるだろう。
 
ソロ第二弾シングルの表題曲は、これまでとは反対のベクトルを持っている。藤巻の眼差しは外の自然よりも、自身の内なる自然へと向かっているからだ。かつて樹木の輪郭を優しく描写していた筆致は、ここでは内なる自然の獰猛さをとらえようと激しい身振りを見せている。呻きのようなシャウトも多くのリスナーを驚かせるだろう。しかし、この歌はリスナーの気分を落ち込ませることはない。むしろ耳を傾けていると、淡々としたビートや歌声が優しく背中を押してくれるから不思議だ。陽性のサウンドの中に狂気を放ったのがレミオロメンだとすれば、翳りのあるサウンドの中から、人を勇気づけるパワーが静かに立ち上ってくるのが藤巻ソロなのである。(神谷弘一)
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