ボ・ディドリー神がCBGBに立ち寄りラモーンズやテレヴィジョンを観て、クラブに立ち寄りブルックリンで作り上げたような肌触りが心地よい。あの『ハルシオン・ダイジェスト』から3年、その間にもブラッドフォード・コックスはアトラス・サウンドとして活発に活動してるが、それでも吐き出したりないほど音のアイデアが噴き出してくる新作だ。アヴァンギャルドなものになると語ったような言葉が断片となって飛び散っていくがそれらの言葉の核となっているのは、きわめて私的なナチュラル感に満ちたメロディだ。
むき出しの言葉や美意識、サウンドはときに異形の相を成すが、それを魅力に変換できるのが才能というものであり、惜しげもなくそれを聴かす。ノイジーなイントロに始まり狂おしいリピートが感性の危険領域に連れて行くタイトル・トラックはまさに“モノマニア(偏執狂)”という言葉の音化に成功しているし、歪んだサイケ・ノイズに包まれた1曲目から、深い自省の闇に彩られたラスト・ナンバーまで、どこを切ってもねじれはより洗練され、色使いの整合性を無視し妄想を刺激する鮮烈な世界が広がっていく。(大鷹俊一)
愛しき歪みの深化
ディアハンター『モノマニア』
2013年04月24日発売
2013年04月24日発売
ALBUM