折衷的というよりは異常に独創的

ローラ・マヴーラ『シング・トゥ・ザ・ムーン』
2013年06月05日発売
ALBUM
今年の「BBC・サウンド・オブ」に選出もされたバーミンガム出身のローラ・マヴーラのデビュー盤。カリブ系移民ということで独特な陰を持ったヴォーカルが最大の魅力だが、ローラの場合、バーミンガム音楽院作曲科を出ているという音楽的には超良血な育ちのよさを誇っているのもミソだ。実際、曲やサウンドの傾向も基本は相当に洗練されたものになっていて、意識的に今風の音に仕立てているわけでもないのに、どこか新しい。それはたとえば、ベースとドラム、あるいはストリングスの処理が絶妙にセンスがよかったりするからで、こうした育ちのよさを補って余りある感性や否が応でもエッジをもたらすローラのヴォーカルなどの素質は、どこかアリシア・キーズのデビュー時を思い出してしまう。また、どの曲についてもアレンジと展開的に傑出したユニークさと刺激を誇っていて、この緻密でいて力強さを失わない世界をファーストで築き上げたところは末恐ろしい予感も。プロデューサーはかつてエルトン・ジョンを見出したスティーヴ・ブラウンのようで、ローラからの指名だとしたら逆に自己プロデュース力も卓越しているということだ。(高見展)