「地獄」を生き抜くための歌

星野 源『地獄でなぜ悪い』
2013年10月02日発売
SINGLE
これぞ星野 源という楽曲である。久々のシングルは乱れ咲くホーンセクションと狂ったように跳ねまわるビートが先導し、星野が楽しげに歌を重ねる素晴らしい楽曲だ。自身も出演の園子温監督最新作『地獄でなぜ悪い』のエンディング楽曲でもあり、エンドロールを軽快に彩り、映画で散々笑ったあとの観客の余韻をさらに演出してくれるさまが想像できる。星野 源は『地獄でなぜ悪い』という映画をこの楽曲のような映画だと思ったのだろう。「地獄」を狂ったビートで笑いながら生き抜くようなタフさ。最高だ。

そう、星野の歌は『Stranger』を経て、よりタフで力強く生活者たちを鼓舞するようになっている。星野の歌には「癒し」も「ほっこり」もあるにはあるが、それ自体は歌にならない。それらを感じるには、日々をどう生きねばならないのか――。今回星野はそんな毎日を「地獄」だと、そして、《ただ地獄を進む者/悲しい記憶に勝つ》のだと歌っているのだ。

このシビアな認識からでないと歌えない説得力がある。生活者・星野 源が求められ、愛される理由はこれだ。やはりぼくたちは星野 源を必要としている。(小栁大輔)