「ROCKIN'ON JAPAN」誌面で昨年スタートした付録CD付き新世代特集「JAPAN'S NEXT」。そのスピンオフとして産声を上げたのが、このライヴ・イベントだ。2014年1月の第1回につづいて、早くも第2回が開催!第1回に引き続いての登場となったSAKANAMONに加え、宇宙まお、GOOD ON THE REEL、Czecho No Republic、ハルカトミユキが出演したイベントの模様をお届けする。


3/16 @TSUTAYA O-WEST
『rockin' on presents JAPAN'S NEXT vol.2』

それぞれに強烈な個性と表現衝動を抱えた新世代アーティストたちの活動を追い、世により広く伝えるための、ロッキング・オン・ジャパンの特集企画『JAPAN'S NEXT』。誌面記事とコンピレーションCD、そしてライヴ・イヴェントと、複合的・立体的にアーティストたちを紹介する企画だ。誌面記事+コンピCDはこれまでに2回展開され、ライヴも今回が2回目の開催にあたる(第1回のレポートはこちら→http://ro69.jp/live/detail/95875)。今回は出演順に、ハルカトミユキ、宇宙まお、GOOD ON THE REEL、Czecho No Republic、SAKANAMONというラインナップ。前説に登場したロッキング・オン・ジャパン編集長・山崎洋一郎が、ライヴ活動やインターネットを活用してそれぞれに注目を集める新世代アーティストたちの健全さについて語りかけ、メディアの特性を活かした展開で今後も続けていきたい、と意気込みを伝えると、いよいよライヴ・パフォーマンスの幕開けだ。



ハルカトミユキ all pics by 鈴木公平

■ハルカトミユキ
トップを飾るのは、昨年11月にアルバム『シアノタイプ』でメジャー・デビューを果たしたハルカ(Vo./G)とミユキ(Key./Cho.)によるデュオ=ハルカトミユキ。今回のステージはサポート・メンバー含め5人のバンド編成である。ハルカがアコースティック・ギターを爪弾いて歌い、ミユキのハーモニー・ヴォーカルが寄り添う"絶望ごっこ"からパフォーマンスをスタート。物悲しいメロディのエモーションをバンドが増幅させていった。そしてハルカがエレクトリック・ギターにスイッチすると、"ニュートンの林檎"からは強烈なドライヴ感のロック・サウンドを放つ。にわかに焚き付けられて、フロアには掌がかざされていた。「オトコ、オンナ、オンナ、オトコ、オンナ、オトコ、オトコ、オトコ、オトコ……"プラスチック・メトロ"」とオーディエンスを一人ずつ指差しながらハルカが告げてプレイされるのは、切迫したスポークンワード混じりのナンバーだ。突発的に放たれる爆音のスリルも相まって、異様な緊張感が突きつけられる。「今日はなかなかフレンドリーなイヴェントだと思いますけど、あったかいし……ノリにくいかも知れないけど、心の中で踊ってくれたら嬉しいです……あったかいけど、冷たい曲をやります」。ハルカがそう語って披露されるのは"青い夜更け"。美しい歌声に攻撃性を忍ばせ、他者に攻撃的なぶんだけ自己批判も強い、という陰鬱な歌の数々だが、体感温度や体感湿度を変えてしまうほどの、明確で強靭な表現を伝えてしまうユニットなのだ。ミユキのキーボード・サウンドが遠く揺らめく"Vanilla"まで、触れる者の脳裏に存在感を刻み付けるステージであった。

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宇宙まお

■宇宙まお
続いては、3月5日に初のフル・アルバム『ロックンロール・ファンタジー』を発表した宇宙まおが登場。サポート・メンバーが先に待ち構えるステージに、元気よく笑顔で走り込んで両腕を大きく広げての挨拶、そして少女が内に秘めた情念を歌謡メロディで放つさまがユニークな"穴だらけ"の先制パンチである。続いて、小気味良い歌詞フレーズで情景を鮮やかに音像化するシングル曲"つま先"から挨拶を挟み込み、ひたむきなラヴ・ソング"自転車"は前線のギタリスト&ベーシストとお揃いのステップを踏みながら賑々しいアウトロを駆け抜ける。なんとも楽しげなパフォーマンスになっていった。ハンド・マイクでオーディエンス一人一人に語りかけるようにしながら"声"も披露すると、「わたくし宇宙まおは、3月5日に初めてのフル・アルバムをリリースしました! 買ってくれた方、いらっしゃいますか? おお! ありがとうございます! 私の人生のすべてを詰め込んだと言っても過言でない、そんな作品です。それに伴って、4月24日にはワンマン・ライヴ(TSUTAYA O-Crestにて)もやります。たった一回、掴んだチャンスなので、これが2回3回、10回20回、100回となるように、頑張りたいと思います!」と強い意気込みを伝える。そして目一杯華やかに、一面のハンド・クラップにも後押しされて放たれるのは、"あの子がすき"だ。男性&女性オーディエンスそれぞれに歌声を預け、「もっと可愛く!」と煽り立てる。若くして表現活動の意味を摑み取ってしまったようなラストスパート"わたしが死んでも"まで、中毒性抜群のポップをはち切れんばかりの元気とともに叩き付けるステージだった。

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GOOD ON THE REEL

■GOOD ON THE REEL
4月23日に新たなミニ・アルバム『オルフェウスの五線譜』リリースを、また5月にはそれを携えての東名阪ツアーを控えた5人組=GOOD ON THE REEL。ドリーミーなイントロ・セッションの中から千野隆尋(Vo.)が落ち着いたトーンで挨拶を投げ掛け、鮮烈なバンド・アンサンブルが轟くと共に、伸びやかにして強いインパクトを残す歌声が響き渡る。引き攣った感情の形をありのままに伝えてしまうような、このヴォーカル表現は本当に凄い。歌詞に身振りを交え、自らの胸を激しく叩き、のっけからステージに立つことの意味を描き出してしまうナンバーは"夕映"だ。続いて、ステージの淵でオーディエンスとがっちりコミュニケーションを交わすように"素晴らしき今日の始まり"を披露すると、「今日は、『JAPAN"S NEXT』、出演できて光栄です」と告げながら、「春めいて来たというか、夜、久しぶりに公園に行って、木が元気そうになってて。俺が生まれる前からここに立ってるのかなあ、とか、よく思うんだよ」「歴史があってさ、立派だなあと、触ってみたりしたんだけどさ(笑)。そんなこと、言われたら分かるけどさ、普段忘れてることってあるじゃん。そういうことをひとつ思い出しておくだけでさ、世界は変わるんだよ。世界は、みんなの中にあるよ」と語り、"いらない"へと繋げてゆく。今を生きる、と言葉にするのは簡単だけれども、その素晴らしさを具体的な手触りとして得られる機会は、決して多くはないのだ。GOOD ON THE REELのステージには、確かにそれがある。一方、岡崎広平(G.)は「花粉症? キツいよねー。まあ俺は違うんですけど」と笑いを挟み込み、 "ただそれだけ" ではオーディエンスが熱い歌声を返す光景へ。最後には、あらかじめ纏わり付いた悲しみの中で幸福を摑み取ろうとするディープな詩情の"ハッピーエンド"と、絶大な説得力をもって触れる者の心情に変化を加えるパフォーマンスが繰り広げられた。

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Czecho No Republic

■Czecho No Republic
砂川一黄(G.)による威勢の良い掛け声で幕を開けた、Czecho No Republicのステージ。2013年はその砂川やタカハシマイ(Cho./Syn./G./Per.)らの正式加入に始まって、企画ライヴにワンマンにメジャー・デビューにと充実の1年を送ったが、チェコのストレンジ&カラフルなポップ表現は2014年もバッチリ健在である。"Call Her"から賑々しいバンド一体型コーラスがオーディエンスを巻き込み、煌めくシンセ・サウンドに彩られた"ネバーランド"の中に、武井優心(Vo./Ba.)のヴォーカル・フックが弾ける。仲間同士による手作りの「世界」が発信され、現実の世界を鮮やかに塗り替えていく"Festival"ではタカハシもアコギを携え、トリプル・ギターのホットなサウンドがオーディエンスを逃がすものかと繰り出される。「『JAPAN'S NEXT』ってことは、次来まっせ、ってことでしょ。SAKANAMONは前回も出たって」と告げて、階上からステージを見つめていたSAKANAMON・木村浩大(Dr.)が、翌日に誕生日を迎えることをネタにひとしきりイジリ回す武井。「新曲を製作中でして、まあその新曲は、イヤでもこれから盛り上がって貰うことになるんだけど」と自信満々に新曲へと繋げてゆく。華やかでパワフルなアンサンブルに支えられた、しかもどこかオリエンタルで人懐っこい情感を湛えたナンバー。そして、言葉遊びと吹き荒れるギター・サウンドの"MUSIC"、ウェットでセンチなディスコ・ポップの"DANCE"と続き、「お客さんあっての音楽シーンだと思うので、これからもぜひ、一緒に盛り上がっていきたい……俺はいきたい!」と放たれるのは必殺の"ダイナソー"。もうずっとチェコのペースで進んだ、見事な掌握力を発揮するステージであった。

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SAKANAMON

■SAKANAMON
そういうわけで、今回のトリを担うのは『JAPAN'S NEXT vol.1』に引き続き登場のSAKANAMONである。ここまでの4組は偶然にもすべて5人編成のライヴだったが、森野光晴(Ba.)が手元のラップトップからトラックを繰り出す"マジックアワー"から、機動性抜群の3ピース・アンサンブルが炸裂する。続いて、じっくりの歌い出しから急転直下にトロピカル・グルーヴを持ち込むシングル曲"花色の美少女"へ。ロック・バンドとしての熱量を保ったまま、音楽性の引き出しをばんばん開け放ってゆくさまが痛快だ。加えて、藤森元生(Vo./G.)の歌の、面白いように日本語フレーズがサウンドに嵌りまくるこの感覚。ストレートな3ピース・ロックをプレイしているようで、SAKANAMONのロックは豊かなオリジナリティに溢れている。"空想イマイマシー"の曲中には、ひと呼吸置いて、翌日の木村の誕生日に向けバースデー・ソングをオーディエンスと一緒にプレゼントする藤森。木村は、「ありがとう。チェコの曲をやるって言ってたから、ちょっと動揺してる(笑)」と喜んでいた。

森野は、「ネクストっつってんのに次のステージに行けなかった、残留組のSAKANAMONです。美男美女が続いたところに、イモ臭い感じでやるんでひとつよろしくお願いします」と挨拶。そうは言うものの、前回の『JAPAN'S NEXT』出演から今回までの間、SAKANAMONにはアルバム『INSUROCK』のリリースという大きなトピックがあった。鮮やかなギター・フレーズがディスコ・ロックを導いて歩を進める"TOWER"、更には鬼気迫るベース・ソロからパンキッシュな爆走でレッド・ゾーンに振り切れる"爆弾魔のアクション 〜願い〜"と、新作曲群をガンガン畳み掛ける。藤森は「26年生きて来た中で、皆さんが巡り会ってくれて、僕たちの音楽を好きになってくれる人もいればそうでない人もいるわけですが、宇宙レベルで見ればカスみたいな出来事かも知れませんけど、感謝の気持ちを込めて歌います」と告げ、"邯鄲の夢"では迫力のアンサンブルでその思いを染み渡らせるのだった。アンコールに応えると、「SAKANAMONが出れば盛り上がるってことを、証明してもらっていいですか?」と、この日一番の激しいアクションと共に"ミュージックプランクトン"で大団円である。藤森は、この日もステージを見守っていたサカなもん君人形を高く放り投げ、落下して来るサカなもん君にアッパーカットを見舞ってフィニッシュ。今回も徹頭徹尾熱かった『JAPAN'S NEXT vol.2』はこうして幕を閉じた。(小池宏和)

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SET LIST
■ハルカトミユキ
01 絶望ごっこ
02 ニュートンの林檎
03 プラスチック・メトロ
04 青い夜更け(未発表曲)
05 Vanilla

■宇宙まお
01 穴だらけ
02 つま先
03 自転車
04 声
05 あの子がすき
06 わたしが死んでも

■GOOD ON THE REEL
01 夕映
02 素晴らしき今日の始まり
03 いらない
04 ただそれだけ
05 ハッピーエンド

■Czecho No Republic
01 Call Her
02 ネバーランド
03 Festival
04 新曲
05 MUSIC
06 DANCE
07 ダイナソー

■SAKANAMON
01 マジックアワー
02 花色の美少女
03 空想イマイマシー
04 TOWER
05 脳内マネジメント事情
06 爆弾魔のアクション ~願い~
07 邯鄲の夢
EN ミュージックプランクトン

※第2回目はフォトギャラリーを後日公開!

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