KEMURI、ワールドツアーを経てついに完成! 12thアルバム『FREEDOMOSH』を語る(2)

人生って晴れの日ばかりじゃないから。でも、気持ちを晴れの日にするために音楽があるからね

――KEMURIには曲を作るメンバーがたくさんいるのも、歌うことのインスピレーションを得る上で、すごくプラスになっているんじゃないでしょうか?

「はい。みんな曲を書けるメンバーですから。長年やってきた中でお互いの感性を受け入れられるようにもなってきてますし、そういう面もすごくいいんだと思います。昔は『こういうのはスカパンクじゃない』っていうのがあったりしたんだけど、そういうのは前向きな意味で減ってきてます。だからこそ今回の『FREEDOMOSH』は、ほんといいアルバムができたという自負を、メンバー全員が感じられてます。お互いを受け入れ合って好転していくことは多いんだなというのも思いましたね。まあ、自分の歌詞、メロディ、リズムの感じとかは、確固たる譲れないものを構築してるっていうのも同時に感じますけど。そういうのは、ずっとやらないとわからないことなのかも」

――KEMURIが活動の中で一貫して描いてきた「Positive Mental Attitude」というのも、構築されている確固たるものなんでしょうね。例えば“GO!GO!GO!GO! GLOW!”を聴くと、みなさんのそういう姿をすごく感じます。

「やっぱり、人生って晴れの日ばかりじゃないから。でも、気持ちを晴れの日にするために音楽があるからね。やっぱりいろんなことは起こるわけだけど、選択肢は多い方がいいと思うんです。何らかの偶然によって初めてKEMURIを聴いてくれた人が、晴れやかな気持ちになれるような音楽を作りたいということも思ってます。そういうアルバムを作りたいと思って、こうして『FREEDOMOSH』が出来上がったから、ほんと聴いてもらいたいです。世の中にはいろんな考え方の人がいて、ひとりひとりの顔も違うし、いろんな信条があるけど、結局、根っこは同じだから。そういうことを思い出させてくれるひとつのツールが、僕にとっての音楽なんですよね」

――KEMURIの活動自体もそうですし、このアルバムの曲たちは、人生の舵取りを自分自身でしっかりすることの大切さを伝えてくれている面もあると思います。

「結局、本当にそうなんです。舵取りですね。『大好きなものを突き詰める』という内側に向かって行くようなイメージの力と、『いろんなものを見ようとする』という外側に向かってく好奇心。そういうものは常に大事にしたいなと思ってます。僕、自分が書いた歌詞を読んで、特別なことを言ってるという感じはしないんです。でも、こういうことをずっと言い続けてるってことは、『よっぽどこういうこと言いたいんだろうな』って思うんですよ」

――言いたいことを代弁してもらえた感覚になるリスナーは多いはずです。

「ご縁がある人って、みんな似た者同士ですからね。僕自身、こういうことを歌いたくなった理由って、やっぱり幼少期に観たミュージカルなのかなあ。あれが僕にとっての音楽に触れた時に感じる楽しさの原点だったから。あの時のワクワク感がずっとあって、『もっといろんな人と一緒にワクワクしたい』っていうのがずっとあって、今に至ってるということなんでしょうね」

ミュージックビデオを観て、『人生っていいもんだなあ。未来は明るいんだな』って僕なんかも思うことができました。佐藤隆太くんはやっぱりすごい

――20年以上そのワクワクを追い求めてきたわけですが、さらにこの先のKEMURIを具体的にイメージしています?

「この先の20年、30年というのは、音楽をやっていくリアリティが満載です。『音楽という好きなことをやり続けながら、どういう年の取り方をできるのか?』っていうのは、個人的にも楽しみにしてることです」

――変な言い方かもしれないですけど、壮大な実験ですね。

「人生を懸けてのエクスペリメント的なことになってます(笑)」

――下の世代にも刺激になっていくと思います。

「HEY-SMITHが『HAZIKETEMAZARE FESTIVAL』っていうフェスをやってるけど、それを初めて聞いた時、『混ざる』っていいなあって思ったんです。年代に関係なく音楽ってことで繋がれる人たちがいるって、ありがたいことですね。少し年寄りくさいことを言うようですけど、そういう若い人たちがいるってありがたいことだなと思います。ライブを観て『すげえな』って思う若いバンドもいるし、『よく飲むなあ』っていうのもありますし(笑)」

――(笑)。楽器が上手い若者、増えましたよね。特にドラムを聴いてびっくりすることがよくあります。

「やっぱり練習スタジオが昔よりも増えてますし、環境が良くなってるというのも大きいのかも。我々の高校生の頃とか、練習スタジオなんてほとんどなかったですし。あっても、置いてある機材はボロボロ。今はマイクも綺麗なゴッパー(SHURE SM58の略称)が並んでるじゃないですか。アメリカ人が見ると、『これ盗まれないのか?』って言うからね(笑)。まあ、そういう環境があることを考えると、未来は明るいって思う」

――フェスも定着していますし、ライブを楽しむ層が広がっているのも、いろいろ大変なことがある音楽シーンの明るい部分じゃないでしょうか。

「そうですよね。そして、ネットでいろんな情報を集められる分、直に触れるっていうのも大事になってるんだと思う。空気感を肌で感じるって、自分の中のリアリティを構築する上で、重要なことなんですよ。今、こうして取材を受けてるから言う訳じゃないけど、ROCK IN JAPAN FESTIVALとかFUJI ROCK FESTIVALとか、フェスが出てきたのは大きいんでしょうね。KEMURIを始めた頃はこうじゃなかったから。いろんな人がいろんなことをやった意味が、今の時代を作ってるんだと思う。それは素晴らしいことですよ。人間って多少の飢餓感と、絶望感を上手に持ってた方がいいというのも思うけど(笑)。『こんなに暗い気持ちになってる俺は、ある意味幸せなんだ』って噛み締めた方がいいということなのかな。適度な飢餓感と絶望感があるからこそ、明るくポジティブな気持ちになれるっていうのもあるんじゃないですかね」

――「Positive Mental Attitude」は、今作にも深く刻まれていますね。

「ほんとそう。中指を立てたくなることもあるけど、やっぱり、親指を立てる方向に変えてく方がいいんじゃない? このアルバムを作って思ったんだけど、KEMURIって、そういう人間が集まったんじゃないかな。『未来は明るい』って思ってる似た者同士が作って形になったのが、今回のアルバムなんだと思う」

――“THUMBS UP!”のミュージックビデオは、俳優の佐藤隆太さんが出演していますけど、これも気持ちを共有できる仲間同士の幸せなコラボレーションですね。

「はい。隆太くんは昔からKEMURIが好きでライブを観に来てくれてるんです。彼はいろんなところでKEMURIが好きだと公言してくれてて、個人的にも付き合いがあるんですけど、こうして仕事をするのは初めてです。近すぎてミュージックビデオに出てもらったりするのは、どうなのかなあっていうのが、ずっとあったんですよ。でも、今回の“THUMBS UP!”を聴いて、『今回のミュージックビデオは佐藤隆太さんに出て頂いた方がいいですよ』っていう声がスタッフから上がって、『そうか。このタイミングで隆太くんか』と思って、出演をお願いしました。さすが、見事に曲の空気感を体現して、表現してくれました。あのミュージックビデオを観て、『人生っていいもんだなあ。未来は明るいんだな』って僕なんかも思うことができました。隆太くんはやっぱりすごい。説得力がありますよ。こういうコラボレーションっていいもんですね。何かを作るって何かと出会うきっかけでもあるから、ここからまだまだいろんなことができそうです。積極的に出会って、積極的に混ざって、面白がりながら活動を重ねていきたいと思ってます」

提供:ONECIRCLE

企画・制作:RO69編集部

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