先日この特集のコーナーでも紹介した(http://ro69.jp/feat/luki_201410/)、lukiの1stフルアルバム『東京物語』。EDMという新たな表現手段を獲得した彼女の曲は、とにかく力強く、そして開放的に鳴り響いている。アルバム全体の、まさに「物語」がよりクリアに浮かび上がってくるという点でも、この音楽的なチャレンジは大成功だと思うし、これまでの彼女のロックが相対化されるという意味でも大切な選択であったと思う。ただ数ある音楽的な方法論の中で彼女が選択したのは、なぜEDMであったのか?――以下で彼女が語った言葉によって、その理由が非常にクリアになった。lukiというアーティストの核が浮かび上がる重要なインタヴューになったと思う。

インタヴュー=徳山弘基

前はもうちょっと見知らぬ場所をイメージしている曲が多かった。でも今回はリアルな今いる場所──そこで「東京」というテーマが出てきました

──まず今回の『東京物語』というテーマは、どういう流れで生まれたんでしょうか?

「すべて東京で作った曲というのがまずあって。あとイマジネーション的にも、今回は遠くに飛んでいるというよりも、今いる場所の感覚で作ったので。いいかなあと思いました」

──そこは前作の『パープル』とはある種対極的なものという感じですか?

「そうですね、はい。前はもうちょっと見知らぬ場所をイメージしている曲が多かったので。でも今回はリアルな今いる場所――そこで『東京』という感じでした」

──なるほど。具体的に、いつ頃からこのアルバムの制作は始まったんですか?

「前の『パープル』を出してすぐに、もう曲はいくつかあったので、そこから『次はどんなところに行くのかなあ』と考えつつ作りつつ、それでだんだん道が見えてきた感じでした」

──どうやら聞くところによると、lukiさん、特にここ最近はどんどん曲ができてしょうがないんですよね。

「そうですねえ。できて困っちゃいます。もういっぱい作ったので、なんかあんまり1曲1曲にこだわらなくなってきたのか、『あ、これはダメだね。じゃあ、こっち』みたいなパターンの組み合わせができるようになったのかもしれないです」

──で、このアルバムのオープニングを飾る“東京”なんですけど、これはアルバムの収録曲の中でも特に早い段階にできた曲ですか?

「これは最後ですね」

──あ、そうなんですね。これができてからアルバムのコンセプトが生まれたと思っていたんですが、違うんですね。

「はい」

──まさにlukiさんから見た独特の「東京」が広がる曲で。

「実はこれもそうなんですけど、ゲームしながら作っているんですね。スマホのゲームで、決勝戦で結構大変な時で。そっちに集中しながらメロディも歌詞も作っていたんですけど。だからわりと、テンション高く作っているような感じがあって。だから、こういう疾走感だったり高揚感が出ているのかもしれないですね」

──そんなゲームしながら曲って作れるものなんですか?

「そう思ったんですけど結構できる。特にメロディは。そのほうがむしろ『これしかない』っていうメロディができるような気がしました。あんまり凝らない、一番簡単なほうに行くから(笑)。ひとつのことに集中しちゃうと、ちょっと難しい音に行ったほうがいいかなとか、ちょっと変わったことをしようかなって気分になるんですけど、ゲームをやりながら作ると、単純に『これしかない』っていうものができるので」

──それこそ「東京」を題材にした曲は世の中にたくさん溢れていると思うんですね。

「そうですね」

──自分の「東京観」っていうのは何が違うと思いますか?

「もっと田舎な、普通な感じがしますね。あんまりかっこよくないし、それほど冷たくもないし、もっと日常だなという感じがします。ほかの方が作るのって、すごくシャープでかっこいい気がして(笑)。そういうのに憧れるんですけど、それは自分にとっては、ニューヨークとかパリとかそういうことかなあ?みたいな。それぐらいの距離はあります」

──確かにシャープでかっこいい東京の曲もあれば、もっと泥くさい青春の象徴としての東京みたいな曲もありますよね。

「そうですね。憧れの地だったり、ひとりで暮らす冷たい東京だったり、そういうのもあるんでしょうけど」

──ただlukiさんの“東京”って、そのどちらでもないんですよね。

「そうですね、自分にとってはそういうものでは決してなかったので。生まれ育っているからかもしれないんですけど、とにかく日常な感じです」

EDMっていうのが、私的にはすごく開けた感じがして。今まではやっぱりロックを作らなきゃいけないっていう気持ちがあったので

──音楽的なトピックスとして、EDMという新しいサウンドスタイルを取り入れたことについては、ご自身でどういう感想を持たれています?

「EDMっていうのが、私的にはすごく開けた感じがして。今まではやっぱりロックを作らなきゃいけないっていう気持ちがあって。でも『ロックって何がかっこいいんだろう?』っていうと、もうあんまりかっこよく思えない時期が結構あって。こうやれば盛り上がる、こうやれば激しくなるっていうのはわかっているんだけれども、それをやって今自分が気持ちいいかっていったら、ちょっと仕事でやっている感じが少し出てきちゃう。ただ最近のEDMを聴いていると、何か高揚する感じがあるんですね。『あ、こっちのほうがもしかしたら自分の真実に近いのかもしれない』って」

──なるほどね。たとえばどんなEDMを聴かれました?

「あまり詳しくないので、もう世の中に流れているものでしか知らないんですけれども。でもだいたいパターンがありません?」

──そうですね。

「わかりやすい四つ打ちがあって、盛り上げ方もある程度決まっている。でもそれが心地悪くないんだなと。いわゆるフィルが入って、ドラムが激しくなってというロックにはない何かがあるような気がしましたね」

──たとえばこの“東京”にすごく象徴的に表れているように、lukiさんの非常にニュートラルでリアルな視点っていうのが、EDMの機能性ととにかくハモりましたね。

「そうですね。不思議ですね。いい化学変化だった気がします。自分の音楽とのかかわり方としてもちょうどいい位置にいたような気がします」

──不思議ということは、当初イメージしていたアルバム像とこの最終的な着地点は変わったということですか?

「変わりましたね。もう最初は『パープル』の発展形を作ろうと思っていたので。で、もっと小規模なミニアルバムをイメージして作り始めて、4曲ぐらいレコーディングまでしたんです。でもそこで『あ、なんか違う方向に行きそうになってきたわ、もう』って。そこでまた仕切り直して曲もいっぱい作って。YANAGIMANさんが今回かかわって下さって、“100年後のあなたへ”をアレンジして下さったんですね。そこで『あ、こっちだよね』って自分の中でも気がついて。だったらそこをもっと突き詰めていきたいなって思いましたね」

──“100年後のあなたへ”は、以前ライヴでも披露されていましたけど、今回収録されたバージョンはアレンジが劇的に変わりましたよね。この変化のプロセスが『東京物語』誕生の道のりをどこか象徴しているのかもしれないですね。

「うんうん。もともとの曲は、じわっと広がっていくような感じでしたよね。それがYANAGIMANさんのアレンジによって、核のほうにも光が行くような曲になった感じがしますね」

──あと、これはもう歌詞が本当に素晴らしいですね。

「そうですねえ、いいと思います」

──lukiさんの曲に「希望」っていう強い言葉が出てくることって、そうそうないと思うんですが。

「メロディが呼んでいたので、導かれるように書いたような気がするんです。あとそこまで意図していないんですが、原発のことがあったので。自分たちが豊かに暮らすために使っていた資源とその残骸が、100年後の人にはすごく致命傷になってしまう怖さをあの事故の時に考えて。それは嫌だなあっていうところから歌詞を作りました」

──あと先ほど話してくれたロックを対象化するという視点で言うと、アルバム中盤に入っている“KISS OR KILL”っていう曲が僕はすごく好きで。

「私もたぶん一番好きかもしれないです。メロディを作った時は普通のメロディだったんです。単純なメロディなので。そのメロディをどうアレンジしていこうかと思って、それは(アレンジャーの)円山(天使)さんと初めに相談して『こういうギター入ったらかっこいいかな』って進めていって。で、根岸(孝旨)さんもかかわっていただいて、そうしたらロックのテイストが強くなったんですね。ちょうど詞の世界にも合うし、これはいいなあという感じでした」

──“東京”とか“観覧車”っていうEDMの曲があるからこそ、逆にこの“KISS OR KILL”がまたすごく引き立つというか。

「そうですね、これだけだとちょっと自分の落としどころがなかったのかもしれないけど。逆にここではロックを恥ずかしくなくできるような感じがしました」

毒を吐こうと思って作らなかったから(笑)。ネガティブなことを解消するための曲作りではなく、むしろ気持ち良くなるためだったり、伝えるための曲作りだったから

──ちなみに初めてのフルアルバムということで、そこを意識する部分ってありました?

「いろいろ曲を入れられていいなとは思いました。今まではやっぱり統一感とかを考えちゃって、この曲を外すとか、ミニだとそういう制約があると思うんですけど。今回はいっぱい入れられるから『これも入れられる、こっちも入れられる』っていう楽しさはありましたよね」

──それこそひとつのスタイルで押し切る表現のスタイルもあると思うんですけど、ここまでのlukiさんの変遷を見ていくと、いろんな音楽的なチャレンジもしてきたし、たとえばアートワークひとつとっても様々に変化してきたと思うんですね。客観的にどう感じられます?

「あー変わっていっているなあっていうのは自覚しているんです。ただそれほど不自然じゃなく、自然な流れで、その時やりたいところに行き着いているので。あまり無理はしてないです。だから今は何でも行けるような気がします。その時に来たもので」

──なるほど。もはやどんな球でも打ち返してやろうってことなんですかね。

「そうですね、打ち返すか、めり込ませるか、わかんないんですけど(笑)。何でも昇華の仕方はあるかなっていう」

──今回のアルバムを聴いて、そして今回のインタヴューでお話を訊いて、僕の中ですごく合点がいったんですね。曲のビートも言葉の肯定性もメロディも、すべてが力強くなったアルバムなんですけど、それはlukiさん自身の精神と肉体がすごく充実しているからこそなんですね。

「そうですねえ。なんか鬱ではあるんですけれども、うまく付き合えるようになった気がしますね。それほど翻弄されなくなったような。あとは毒を吐こうと思って作らなかったからじゃないですかね(笑)。あんまりネガティブなことを解消するための曲作りではなく、むしろ気持ち良くなるためだったり、伝えるための曲作りだったりから」

──ああ。その気持ち良くなるためっていうのがEDMにつながっていくわけですね。

「そうですね」

──だからロックをどう定義するかにもよると思うんですけど、このインタヴューでlukiさんが言っていたロック的なるものっていうのは、自分の中の何かを吐きだす作業であり、ある種のデトックス的な効果があったということなんですね。

「そういう側面は確かにあると思いますね。それがロックの良さでもあると思うんですけど。ま、いろいろあっていいような気はしますね」

──そのデトックスをやる必要がなくなったからこそ、EDMにたどり着くと。

「そうですね」

──いろんなことが、つながりました(笑)。しかもまだまだ曲はできてるっていう。

「もうアルバム作れるぐらい新しい曲があります(笑)」

──すごい!

「どんどんできますね、今日も歌詞をふたつ作ったし。それがいい曲か悪い曲かはわからないんですけど、数だけはできます。“東京”とはまた違ったポップなやつを。最近はもっと縦に伸びる曲を作りたいなって思ってるんですね。じわっと広がる曲はもう結構やってきた感じがするので、上に伸びるやつを作りたいなあって。いずれにしても、いろいろバレた感じがするアルバムですね(笑)」

──どういうことですか?

「これで過去のこともわかっちゃうし、これからやりたいこともわかっちゃうかなあという」

──ただ、そのバレることすらも今は心地好いことでもあると。

「そうですね、気持ちいいですね。もう何やってもあまり恥ずかしくないんです。昔はここだけしか見せちゃいけないというのはあったんです。あまり笑っちゃいけないとか、健康的じゃいけないとか。でももう、いろいろバレちゃったからいいや、みたいな、今はそういう心境ですね」

提供:ランデブーレコーズ

企画・制作:RO69編集部

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