SUPER BEAVER 渾身の大阪城野音が映像化! ビーバーのライブはなぜ泣けるのか? そして初の武道館に懸ける思いを語る



大阪城野音は見切り発車だった


――このDVDに収録されている大阪城野外音楽堂でのライブは、東京と岡山も回ったツアーのファイナルでしたよね?

「はい。その前のツアー、『27』をリリースした後のツアーを回ってた時に、最初は岡山のCRAZY MAMA 2ndRoomを押さえていたんですけど、思っていた以上にたくさんの人が応募してくださったんです。それを知った頃、同じ日のCRAZY MAMA KINGDOMが空いているのがわかって、『だったら会場のキャパを大きくしよう』っていう話になったんですけど、僕はそこが引っかかってしまったんですよね。『2ndRoomだから観たい』と思って応募して、当選して、喜んでいた人がいるかもしれないのに、こっちから一方的に『キャパを大きくしました』というのは筋が通らないんじゃないかなと」

――なるほど。

「だからSNS上で、みんなに訊いたんです。『ひとりでも反対意見があったら会場を変えるのはやめにしようと思うんだけど』と。その結果、『会場を変えるのは嫌です』という意見がいくつか来たので、『じゃあ、もともと予定してた2ndroomでやろう』ということになりました。とはいえ、一度は会場を変えることも提案した分、期待をさせてしまった人もいて、申し訳ない気持ちもあったので、『次のツアーはKINGDOMでやるからよろしくね』ということも言ってたんですよね。それが実現したのが、東京と大阪にプラスして岡山にも行ったあのツアーでした」

――あのツアーは、東京と大阪が屋外の会場だったのも印象的です。

「『27』のツアーを回ってた段階で、『次は日比谷野外大音楽堂でやりたい』っていう気持ちがあったんです。あの会場は、僕にとっての聖地だったので。それと同時に、『大阪でツアーファイナルをやりたい』というのも思ってたんですよ。僕らは東京出身のバンドですけど、関西圏でのライブもたくさんしてきたので。そして、関西圏での会場を考えた時に、『日比谷野音と対になるような会場と言えば、大阪城野音だな』と。でも、あそこは今まで大阪でやっていたライブの3倍以上のキャパなので、見切り発車の挑戦でした」

――その結果、大阪公演もソールドアウトしたんですよね。このDVDの中に、ソールドアウト記念のケーキが、楽屋に運び込まれている映像が入っているのも印象的でした。

「あのケーキは、びっくりしました。すごく親身になってくださるスタッフさんとか、いろんな方々に支えられてるというのを、改めて実感したケーキでしたね。僕たちは小さい事務所に所属してますし、スタッフの数も多くはないので、その分、関わってくれるみなさんと直で顔を合わせられて、話も直接できているんです。そういうことの積み重ねが、あのケーキだったというわけでもないんですけど(笑)。でも、ああいう形で現れるっていうのは、すごく嬉しかったです」

人と人の誠意のぶつかり合いみたいなものが楽しい


――今仰ったような密接な繋がりは、お客さんとの間にもすごく確立されていますよね?

「そうだと思います。僕らって、悪い言い方をするならば『普通』なんだと思います。そういう普通な人間がどストレートなことをやった上で人と繋がれないって、変なのかなと。繋がれることを何よりも大事に考えて音楽をやっていかないと、罰が当たるなと思ってます。伝えたいことを伝えて、それに対していろんな人が伝え返してくれるということの上に自分たちの音楽は成り立ってるんですよね」

――そういう姿は、今回のライブ映像にも表れていると思います。お客さんも、ものすごく楽しそうですし。

「お客さんは時間を割いて、お金も払ってライブに来てくれるわけですけど、それってすごいことなんですよね。チケットを取るんだって、いろんな手間があるわけですから。僕たちはそれに値することをしなきゃいけないですし、むしろ僕たちの方が多くをお返ししなきゃいけないと常に思ってます」

――ライブって、当日が楽しいのはもちろんですけど、チケットを取った段階からすでにワクワクが始まってるんですよね。

「そうですよね。ライブの予定が発表されて、チケットを取って、その日に至るまでの時間が、会場でどういう報われ方をするのか? そして、その時間がその人の後の人生にとって、どういう意味を持つのか? ……そういうことを考えると、ステージに立ってる時間は、やっぱり大事にしなきゃいけないですね。プレッシャーとかではないですし、『責任感』というのとも違うのかな? 僕たちは僕たちで楽しくやってるので。とにかく、そういういろんな思いを背負えてることが、すごく嬉しいんです。人と人の誠意のぶつかり合いみたいなものが楽しいと思って僕たちはやってます」

――「人と人の誠意のぶつかり合い」って、いいですね。SUPER BEAVERのライブをすごく言い当てていると思います。

「ライブって、そんな気がするんです。上手に演奏するんなら、CDには勝てないじゃないですか。でも、ライブってそういうのとは、また別なんですよね。お客さんのひとりひとりの顔を見た時に、『今日、この曲は、どういうふうに届けよう?』って思うし、そういうのは毎回変わって然るべきだと思うんです。曲の大まかなコンセプトとかテーマはあるにせよ、『それを持ち込んだ場所でどういうふうに活かすか?』は、『ライブ』というその場でしかできないことですから、『今日はこういう気持ちであなたに届けてるんだよ』っていうのを、MCで話したりもしながらライブをやってるんですけど、それはプレゼントをしっかり包装して渡すみたいな感覚なんですよ」



メンバー自身が曲に感動してることが一番大切だと思う


――SUPER BEAVERのライブに関しては、メンバーやお客さんも含めた全員の大合唱も、毎回すごく印象に残ります。

「柳沢(亮太/G)に『シンガロングパートがある曲をたくさん作りたい』っていう話をしたことがあるんです。僕がライブに行きながら何が一番楽しかったのか考えると、一緒に歌ってる時が一番楽しかったんですよ。『この大合唱は俺もいるから成り立ってるんだ』と思えた時に、すごく嬉しかったので。だから『シンガロングや手拍子とか、観てくれるみんなの参加できる部分を1ヶ所は作ろう』って柳沢に話したんです」

――“東京流星群”とか、まさにシンガロングの曲ですね。

「僕が最初に、『ああ、やっぱりあなたも歌いたいんだ』って思ったのは、あの曲がきっかけでした。あの曲をライブでやって、歌ってる楽しそうな顔をたくさん見て、『これは、参加できる部分がある曲を増やした方がいい』って思ったんです」

――“全部”の大合唱も、すごく気持ちいいです。

「僕が歌った後を追っかけるようなコーラスの部分があって、最後にみんなで一緒に歌うっていうものになっていることにも意味を感じてます。自分のパートがあって、託してるパートがあるっていうのを経て、最後に全部が一緒になってるっていうのは、すごく僕たちらしいグルーヴの作り方だなと思ってます」

――観客の視点から言うと、柳沢さん、上杉(研太/B)さん、藤原(“29才”広明/Dr)さんが一生懸命歌っている姿も、すごくグッと来るものがあるんです。

「それは、よく言われますね。僕たちはメンバー自身が曲に感動してるっていうことが、一番大切だと思ってます。そうではないものを届けて、『どうですか?』なんて言えるわけないので。この4人は自分たちの音楽が素敵だと思ってて、自信を持ってて、今でも感動しながらやってるっていうことですね(笑)。それが僕たちなんです」

――おじさんみたいなあの風貌の藤原さんが全力で歌っている姿は、毎回、なんだか妙にグッと来ちゃうんですよ。

「あいつはずるいですよね。そういうことを思われるために、計画的にあの姿で生まれてきたんじゃないかと思ってます(笑)」

――(笑)。そういうことも感じられる今回のDVDは、SUPER BEAVERのライブの魅力が、すごく伝わるものになっていると思います。

「ありがとうございます。生に勝るものはないですけど、ライブDVDって、いろんな視点から観られるのもいいですよね。これを観た上で『ライブに行ってみたい』とか『また行きたい』とか、感じてもらえたらいいなあと思ってます」

この本は母ちゃんと作った


――DVDと同梱されている渋谷さんが書いた短編小説集『love。』も面白かったです。

「ありがとうございます。短編小説は、エッグマンが出してる小冊子で書いてますし、頂いたお題を掛け合わせて、それをもとにして書くこともファンクラブの会報でやってるんですよ。でも、そういうフィクションを本という形にしたのは、今回が初めてです」

――例えば収録されている小説のひとつ『まりも』を読んで、「これは“美しい日”と通ずるものがある物語だなあ」とか、曲と結びつけて読んだりもしました。

「なるほど。嬉しいです。小説と曲を直接リンクさせてはいないんですけど、僕の人生観みたいなものは、すごく詰め込んで書きました。『僕たちがどういう風に歩んできて、どんな気持ちで音楽をやってるのか?』っていうものも、すごく隠れた形ではあるんですけど、描かれてると思います。愛情っていろんな形があって、普通の生活の中のふとした瞬間に気づかされたりもするんですよね。そういうものの上に僕たちの音楽は成り立ってるんです」

――いい小説を書けた手応えはありますよね?

「あります(笑)。音楽もそうですけど、やってる内に『こうしておけば良かった』っていうのは絶対に出てくるんです。でも、書き上げた時の『よしっ!』というのはありました。この本は母ちゃんと作ったというのも独特なものがありましたね。母ちゃんは本の編集者なんですよ。プロと仕事をするというのはドキドキしました。膝を突き合わせて、『ここはこうで』ってやるのは、照れくさかったです(笑)。でも、今じゃなきゃできなかったことでもありますし、ブレがなく一緒に作業をすることができました」

みなさんが持ち上げてくださった先に武道館があった


――今年もいろんな活動がありましたけど、2018年も楽しくなりそうですね。ついに日本武道館での単独公演が決定したじゃないですか。

「はい。決まったのは、かなり最近なんですよ。でも、話はちょっと前からありました。『次はあそこしかないだろう』っていうのは、Zepp Tokyoの2デイズを決めた時点で、なんとなく自分たちの視野にも入ってたので」

――メンバーのみなさんは、どんな様子ですか?

「みんな喜んでます。自分たちが武道館でやりたいと思ってるのはもちろんなんですけど、『観てくださる方々にも純粋に喜んで頂けるのかもしれないな』というのが、まず何よりも大きかったです」

――仰る通り、応援しているミュージシャンが武道館でライブをやるって、観客の立場からしても嬉しいことですからね。

「きっと『やったあ!』ってなりますよね」

――しかも、SUPER BEAVERって、結構大変なことがいろいろあったバンドじゃないですか。

「そうですね(笑)」

――そういう人たちがついに武道館に立つっていうのは、ロックバンドの物語としてもすごく美しいですよ。

「僕たちは、どんなにかっこつけたとしてもメジャー落ちバンドですから。そういうバンドがDIYでやってきて、一緒にやりたいと思うチームを見つけて、それが少しずつ大きくなっていって、会場もそれに伴って大きくなっていって、応援してくださる方々も少しずつ増えていって、そういうみなさんが持ち上げてくださった先に武道館があったというのは……自分でも『いい話だなあ』と思います(笑)」

――同感です(笑)。

「僕は不幸自慢みたいなことは、あまり好きではないんですけどね。『この人、こんなに苦労してたんだよ』って知った上で音楽を聴くって、ちょっとずるい気もするし。でも、僕たちは、そういうことから一歩踏み出せた気もしてます。だからこそ、前のライブDVD(2016年10月にリリースされたライブDVD『未来の続けかた』。SUPER BEAVERの歩みを描いた小説『都会のラクダ』も同梱されていた)の本で自分たちのことを書いたんですよ。『こういうことすらも共有すると、もっと面白くなる可能性が出てくる』って感じるようになったんです」

――バンドの背景を知ることによって噛み締められることもありますからね。

「はい。『自分たちはどんな思いで音楽をやってるのか?』っていうことも知ってもらったら、より面白くなるのかなと。そういうストーリー込みで捉えると、武道館はみんなが喜んでくれることに繋がるのかなと感じてます。『応援してきて、いろんなことも知ってるこいつらが、ようやくZepp Tokyoの舞台に立ったのか。よく頑張ったねえ』っていうような感覚を持ったら、より楽しくなると思って前回の本を書いたんですけど、武道館もそんな風に捉えてもらえたらいいですね。卑屈な気持ちで言うのではなく、『メジャーから落っこちたやつらが自分たちでもう1回再起した先に武道館があって、あなたが乗っけてくれたんだよ』って、いいなあって、今、思えてます」



MV


リリース情報

『LIVE DVD 2 Tokai No Rakuda Special at 大阪城音楽堂』
発売中
価格:¥3,980+税(NOID-0024)
仕様:DVD1枚+BOOK1冊
収録曲:
1.美しい日
2.歓びの明日に
3.うるさい
4.らしさ
5.ルール
6.言えって
7.赤を塗って
8.ひなた
9.センチメンタル
10.home(Acoustic ver.)
11.生活(Acoustic ver.)
12.証明
13.青い春
14.あなた
15.人として
16.27
17.→
18.361°
19.東京流星群
20.素晴らしい世界
21.秘密
22.愛する
en1.ありがとう
en2.全部

本:「love。」 渋谷龍太 著
※書き下ろしショートショート ( 短編集 )

ライブ情報

「都会のラクダ Tour 2018 ~前人未到のラクダチェリーパイ!~」
2018年2月3日(土) 岐阜club-G
2018年2月4日(日) 徳島club GRIND HOUSE
2018年2月17日(土) 和歌山SHELTER
2018年2月18日(日) 奈良NEVER LAND
2018年3月3日(土) 山形ミュージック昭和セッション
2018年3月4日(日) 盛岡CLUB CHANGE WAVE

「SUPER BEAVER 都会のラクダSP at 日本武道館」
2018年4月30日(月・祝) 日本武道館
開場/開演:17:00/18:00
オフィシャルHP先行:http://eplus.jp/sb0430hp/
受付期間:2017年12月17日(日)12:00~12月24日(日)23:59
チケット一般発売日:2018年2月17日(土)


提供:[NOiD] / murffin discs
企画・制作:ROCKIN’ON JAPAN編集部