夏代孝明、2曲同時配信リリース! 「新境地」と「邪道」への挑戦、現在地を語る

夏代孝明、2曲同時配信リリース! 「新境地」と「邪道」への挑戦、現在地を語る

(“エンドロール”は)どれだけ邪道を行けるか、みたいな曲ですね


――曲作りに熱中する時期も長かったと思いますけど、デビュー以降はライブのほうも積極的ですよね。

「そうですね! ライブが好きなんですよ。高校生の時にやってたライブは本当にヒドかったんですけど。ライブハウスのノルマのために友だちとか、父親にもチケットを無理矢理買ってもらってたし。でも、ステージで演奏しても誰も観てないんですよ。そういうのが本当につらくて。だから2013年頃、夏代孝明としてイベントに出ることが決まったときは、正直、『どうしよう?』と思ったんです。それで、ライブをやる前に、MCの常套句みたいなやつをインターネットで調べたんですね。『今日は盛り上がっていこうぜ!』とかテンプレがあって」

――そんな情報もあるんですね(笑)。

「『今日、初めてライブに来た人?』って聞いてみるとか、最後は『気をつけて帰ってね』って言うといいとか(笑)。そうやってライブに臨んだら、来てくれたお客さんが優しい視線で観てくれたんです。30~40人ぐらい集まってくれて、そこでライブの楽しさを教えてもらいましたね」

――話を聞いてると、夏代くんって、BUMPのコピーがしたい、どうすればいいんだろう?から始まって、楽曲を投稿できるらしい、どうすればいいんだろう? ライブで盛り上げたい、どうすればいんだろう?って、常に自分からの働きかけで進んでますよね。

「まあ、調べものが好きなんですよね(笑)」

――だからこそ、かっこいい曲を作るには、どうすればいいだろう?っていう探求心も人一倍強かったんだろうし、それで現状を打破してこられたんだと思います。

「たしかに。夏代孝明じゃない名前を使ってた時は、全然聴いてもらえなかったから、コメントにも『死ね』とか書かれたし、落ち込みはしたんですけど。どこかで『俺、天才なのに』と思ってたので(笑)。それで、ずっと試行錯誤をしてましたね」

――偉大な勘違いですね(笑)。そんな夏代くんが、今回、2曲同時でリリースする新作についても訊ければと。“エンドロール”がいいですね。キャッチーなサビは、今までの夏代くんらしい曲だけど、全体的に捻りがあって、ソリッドな感じがしました。

「“エンドロール”は、僕のテーマとして、どれだけ捻ったものを作れるかっていうのがあったんです。去年はハッピーミュージックというか、みんなの背中を押すような曲をたくさん書いてたんですけど、今年は自分の内面のことを書いていけたらなと思って。ずっと王道を通ってきたから、次はどれだけ邪道を行けるか、みたいな曲ですね」

――自分のなかでモードが変わったのはどうしてなんですか? むしろ自分がやりたいのはこっちなんだ、という感覚なのか。

「いや、僕の本心を言うと、やっぱり音楽で誰かの背中を押したいっていう想いのほうが強いんですよ。挑戦を続けていくことは大事かもしれないけど、同時に、僕のことも知ってもらいたいんですよね。僕って落ち込む時は、結構長く落ち込む人間なんです。闇が深いというか。それもあって音楽で誰かを励ましたいと思ったんですけど、そうじゃない自分に目をつぶって生きていくのも、表現者としてもったいないというか」

――それで、《「生きてる意味ないんじゃないの?」》とか、《僕の人生は虚飾にまみれ》とか、マイナスの感情を吐き出すような曲になった、と。

「もともと“エンドロール”っていうテーマは、テレビでエンドロールが流れてるのを見たのがきっかけなんです。関わってる方がいっぱいいる番組って幸せそうだなと思って。それで、逆に僕がひとつの作品だとして、そのエンドロールが流れるときに、どういう人の名前が並ぶのかな?って思ったんです。自分は友だちと思ってるけど、向こうが友だちだと思ってなかったら、エンドロールにのらないんじゃないか?とか。それで、これは自分のなかのマイナスな感情を書くのに、ぴったりなテーマなんじゃないかなと思ったんですよ。悩みとか停滞感を、全部ここに置いてこれたなっていう感じがありましたね」

――マイナスの感情を出すだけじゃなくて、最後は《僕は何も変われない ああ》で締めくくってるから、心の奥底では「なんとか変わりたいんだ!」っていう強い想いもあって。そこも夏代くんのありのままなんでしょうね。

「うん。やっぱり環境のせいにはしたくないですからね。そういう言い訳って簡単にできちゃうじゃないですか。でも、僕はそのままでいたくないんですよね」


ボーカロイドっていうカテゴリーに対して、メッセージを伝えたいなと思ったんです


――もう1曲の“ジャガーノート”のほうは、ラップっぽいアプローチをしていて、これも夏代くんにとっては新境地の曲なんじゃないかと。

「歌詞に英語を入れたのも挑戦ですね。“エンドロール”もですけど、今回はやりたいと思ってたことをたくさんやってみたんです。《Trust me》って、日本語で『信じてくれ』って歌うのは重いかなと思って。今までは日本語にこだわってたけど、そういう部分を英語にすることで、作品としてまとまるのはありだなと思いましたね」

――この曲は、すでにボーカロイドバージョンをYouTubeにアップしていますが。

「そこにも意味を持たせたいと思ってるんですよ。やっぱりボーカロイドって、全盛期から見ると寂しくなってきてて。いい意味でも、悪い意味でも、意見が飛び交う界隈になってるんです。だから自分も身を置いてるニコニコ動画のボーカロイドっていうカテゴリーに対して、僕もひとつの意見として、メッセージを伝えたいなと思ったんですよね」

――伝えたいメッセージというのは?

「そこは、あんまり説明はしたくなくて……うん。僕はボーカロイドに与えてもらったものが本当に大きいんです。『歌ってみた』っていう文化は、ボーカロイドに乗っかって成立してたカテゴリーじゃないですか。だから、そこをないがしろにしたくなくて。僕もいつまでボーカロイドの曲を作れるかわからないんですけど、自分の故郷とも言える界隈が、外からも、中からも、批判されているのが悲しいから、何か恩返しをしたいんです。だから、どんなに自分のメッセージが汚く聞こえても、声がしゃがれて聞こえても、歌っていきたいっていうことなんですよね」

――なるほど。その話を聞くと、この曲に対して全然違う聴き方ができるし、もっと言うと、“エンドロール”と“ジャガーノート”をあわせて聴くことで、夏代孝明というシンガーソングライターをより深く理解できるものになったと思います。

「自分が育ってきた場所と、闇の部分を書いてますからね。僕の内面がめっちゃ入ってるんです。でも、もっと大人になったら、また全然違うことを歌ってるのかもしれないんですけど」

――でも、それでいいと思ってるんじゃない?

「そうですね。これからも、その時々で感じたことをかたちにしていきたいので。その大前提として、人の背中を押していきたいっていうのはありますね」

次のページMV・リリース・ライブ情報
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする