HYDE、バラードシングル『ZIPANG』が生まれるまで、そしてYOSHIKIとのコラボを語る


日本の美しい旋律や言葉を伝えたほうがみんなに喜ばれるんじゃないかなと思って


――昨年はソロ活動が再開して、リリースもあり、全国ツアーにフェス出演、さらに「feat.HYDE」でのリリースとNHK紅白歌合戦への出演もありと、トピックが盛りだくさんでしたけど、そんな2018年を振り返ってみて、今どういう手応えを感じてますか?

「思ったよりもいろんな活動をエンジョイできてますね。ソロという利点を活かして、さらに広がった感じです。自分ひとりの判断で全部いけるし……L’Arc~en~Cielの曲をフェスでやったりもしていて、そういうことはこれまであんまりなかったかなと思うんで。そういう意味でも自由ですね」

――たしかに、柔軟に活動されているなあという印象があります。今回の『ZIPANG』もですが、これまでもシングルになった曲はすべてリリース前にライブで先行してやっていたりもして、そういうところは新しい試みだったんじゃないかなと。

「うん、そうそう。なんかアマチュアバンドみたいな感じでしたね」

――お客さんのリアクションを確認しながら、作品に反映させたりすることもあったんでしょうか。

「そういうのもありますね。シングルにするのはどの曲がいいかなって聞いたりとかもできたし」

――そういえば『FAKE DIVINE』でお話を伺った時、アンケートのランキング上位から選んだって仰ってましたね。

「ふふふ、そうそうそう。ちなみに今回の“ZIPANG”が1位でした」

――そうなんですか! 夏頃からライブのセットリストに入ってましたよね。

「そうなんですよ」

――すでに人気曲だったんですね。これだけがっつりバラードでっていうのは、ソロでは珍しい気がします。

「海外でワンマンをやる時でも、やっぱり中盤にバラードをやるとか、聴かせどころは1回作りたいと思っていて。谷を作りたいんですね。そういう時に、どうせだったら、日本の美しい旋律だったり、言葉だったりを伝えたほうがみんなに喜ばれるんじゃないかなと思って作りました」

――海外でもこの日本語詞で歌おうと?

「いや、もともとは英語詞で作ったので。逆にライブでは英語でずっと歌っていたから、日本と海外で分けて、日本語版を作ろうかということになったんです。で、日本語はちょっと和歌っぽいというか、古い言葉を使うのがいいなあと思ってね。逆にもうギリギリになって日本語に変えた感じ。なので、ワールドワイドでリリースする時は英語にしようかなと思ってます」

――日本のツアーでも英語版でずっとやっていたんですね。

「そう、ツアーでやっていた時は英語版でした。日本語版は最近、12月くらいからやり始めた感じですね」

――じゃあオーディエンスも日本語詞に驚いたというか、新鮮なリアクションがあったんじゃないですか?

「そうそう。日本人はやっぱり意味がわかるほうが好きかもね」

――しかも「和」のイメージの詞って、今までHYDEさんの詞ではあんまりなかったですよね。

「そうですね。あんまりなかった。僕、昔の言葉とかあんまりそういうの詳しくないんで、長けた人に相談しながら作りました。ちょっと自分が思ってる意味と違ったりするから難しくて」


普通の世界の大切さっていう意味でも、感じるものはありましたね


――日本語版を作って、実際に歌ってみた感触はいかがですか? 英語版と比べると。

「英語はもともと、結構前にレコーディングしてたんですよ。それがすごくスムーズでいい感じだったし、ツアーでも英語で歌ってたから、逆に日本語のほうが難しかったですね。日本語はどうしても言葉がカクカクしてたりして……まあそれが日本語のいいところなんですけどね、もちろん。でも、これまでの英語の雰囲気と変わるから、どうしようかなって感じでした。だから開き直ってね、これまでの歌はもう気にしないで、日本語の曲として歌いました」

――英語の曲の時点で、アンケート1位という反応が返ってきてたんですよね。その結果については?

「まあ、みんなバラードが好きなのかなあ?とか思ってました」

――それが満を持してシングルになるのは、ファンのみなさんも嬉しいと思います。そして、さらにトピックとして、YOSHIKIさんとのコラボが再び実現したわけですけど、経緯としては『Red Swan』からの流れですか?

「『Red Swan』の話が先にあって、それが進んでるなかでこの曲ができたんです。ピアノがメインだし、これ、やってもらうには今がチャンスじゃないかな?と思って。ちょっと機嫌のいい時にYOSHIKIさんに言ってみようかなって。めちゃくちゃ忙しい人だから、タイミングを見て言わないと簡単に断られそうだし(笑)。機嫌のいい時に話したら、快くOKしてくれました」

――その時はまだ英語版ですよね。

「そうですね。夏頃だったかな。やっぱり、常々いろんな人とコラボする機会を窺ってるんですけど、YOSHIKIさんにやってもらったらいい仕上がりになるんだろうなあと思ってお願いしてみました」

――全編にわたってほんとに素晴らしいピアノですけど、フレーズとかアレンジはYOSHIKIさんにお任せで?

「いや、根本的にはもともとのデモがあったんで、それがベースにありつつって感じで。こう……さらに値段を上げてくれた感じですかね」

――ははは。

「高い曲にしてくれた(笑)。返ってきたのを聴いた瞬間にもう、『うわあ、かっけー!』ってなりましたよ」

――YOSHIKIさんのピアノのすごさって、あらためてどういうところでしょうか。

「原曲をちゃんと理解してくれてるんですよね。個性で塗り潰すというか、全然思ってるのと違う方向で来たらどうしようって思ってたところもあったんですよ(笑)。でもちゃんと楽曲を理解したうえで、さらに高みを目指してくれたなあと思って。さすがプロだなあと思いましたね」

――たしかに、ピアノが歌にもすごく寄り添って響いてきます。楽曲に関してYOSHIKIさんからのコメントって何かありました?

「『いや〜、この曲いいよ』って……アメリカのプロデューサー、エンジニアも絶賛してたよ、とか言ってくれましたね。まあ、褒め上手な方なんでね(笑)」

――カップリングの“ORDINARY WORLD”はデュラン・デュランのカバーで。こちらもライブのラストに演奏していたり、すでにライブのハイライトにもなっている曲ですよね。この曲をカバーしようと思った理由は?

「もともと、アメリカにいる時とか、カバーは常々いろいろやりましょうっていう雰囲気があるので。次はどういうのにしようかって話しているなかで、バラードを激しくしたらいいんじゃない?ってことになったんです。で、バラードでなんかあったっけなあって思いついたのがこの曲でした。その頃は別に、デュラン・デュランはもう聴いてなかったんですけど、その曲だけ急に抜きん出て世の中に響いてたんで。デュラン・デュラン、まだ健在やねんなあってその時は思いましたけど(笑)」

――でも、昔からルーツとしてあげられていたアーティストですよね。

「そうですね。その時代はずっと通ってきたんで。デュラン・デュランを真似して白いジャケットとか着てましたから(笑)」

――それだけに、歌っていてしっくりきてる感じはあります?

「んー、どうかなあ。でも、いいアレンジだと思うんで。また新しい感じでみんなに響くんじゃないかなと思います。ぜひ、アメリカとかイギリスとか、英語圏の人に聴いてほしいね」

――今聴いてもメロディがいいですし、歌詞も普遍的に響く内容ですよね。

「ライブでも結構やってたんですけど、去年は自然災害が多かったんで、やっぱり普通の世界の大切さというか……そういう意味でも、感じるものはありましたね。歌っていると」

――日本のリスナーにも、歌詞の意味をわかって聴いてほしい曲だと思います。

「そうですね。そのほうがぐっとくるかもね」


photo by 田中和子

「普段HYDEってうるさいんでしょ」って思ってる人たちにアピールするにはいいんじゃないかなと


――今回のシングルがバラード2曲という作品になって、一連のソロシングルの流れの中では新しい一面になると思うんですけど、こうしてバラードで作品を作ってみていかがですか?

「どうなんですかねえ? バラード好きな人にはいいんじゃないですか。しっとり聴ける感じで」

――あえて今まで出さずにいたっていう感じもあるんですか?

「基本、シングルは毎回違う感じでっていうのは思っているので、こういう流れかなあ、みたいに考えてたというか。今回は、特に『普段HYDEってうるさいんでしょ』って思ってる人たちにアピールするにはいいんじゃないかなと思ってます(笑)」

――ロックのヘビーなライブの中でバラードの時間があるのは、ひとつHYDEさんの武器だと思います。さっき仰ってたように、セットリストの緩急って重要にされてますよね。

「そうですね。次に爆発する時にいい助走になるというか。そういう流れは常に意識してますね。フェスの短いライブでもそうです。まあ、もうオープニングアクトみたいになってくると『いかにこいつらを……』みたいな戦いだから、どこまでやれるかは別の問題ですけど。でもやっぱりワンマンとかでは海外でも絶対に入りますね、そういうシーンが」

――COUNTDOWN JAPAN 18/19のステージでも、“ORDINARY WORLD”でのじっくり聴かせる時間がすごく良かったんですけど、フェスのステージでの見せ方ってどう考えてますか?

「特にああいうフェスみたいなライブだと、ガーッて歌う人が結構多いじゃないですか。だから逆に、丁寧にじっくり歌うっていうのをやってみると、それはそれで響くんじゃないかなと思ってね。まあやってみて、どうだったかなあって感じですけど(笑)」

――いやいや、素晴らしかったです! 初見のお客さんにもしっかり響いてたと思います。

「そもそも“ORDINARY WORLD”は、本来アメリカのフェスとかで、みんなが知ってる曲のカバーっていい入り口になるじゃないですか。そういう意味でも必要な曲だったんですよね」

――ちなみにアメリカのライブで、バラードを演奏した時のリアクションってどういう感じなんですか?

「いや、もうキスしたりとかしてますよ、いかにもーな(笑)」


ライブの重要な項目として、まずは歌ですね


――ははは。「黒ミサ」という企画でアコースティックライブをやってみたり、「feat. HYDE」としての現場があったり、L’Arc~en~Cielのボーカリストとしてのライブがあったり、ご自身で発信するソロワーク以外の活動もいろいろありましたけど、ご自身の歌とか、歌うことに対しての意識の変化みたいなものって近年ありましたか?

「そうですねえ。やっぱり僕自身が、今まで適当に歌ってきてたんですよ。だから最近になって、自分を研究するようになりました。どうやったら歌いやすくなるんだろうとか、なんでしんどいんだろう?とかね。そういうのを研究して、あと、ちゃんとしたクオリティをライブで届けるにはどうしたらいいんだろうとか考えるようになったんで。そういうのが変化というか、自分の中でも大きかったかなと思いますね」

――それは何かきっかけがあったんですか?

「やっぱり、海外でライブするようになったことは大きいとは思います。そういうところで日本人が負けないためには、どうしたらいいんだろう?とか考えて、そうなってきたかな」

――歌そのものをもっと強くしていきたいと。

「僕は、もともとパフォーマンス重視のところがあったから。今はそこは違うかなと思ってますね。ライブの重要な項目として、まずは歌ですね。次にパフォーマンス」

――向き合い方を変えてみて、ライブでの手応えも変わってきました?

「うん、そうですね。ちゃんと歌うってことをメインにして……もちろんパフォーマンスも重要なんですけど、そのほうが差別化ができるかなって。さっきも言ったけど、フェスはガーッて歌う人が多いから、そういう意味でも、ちゃんと歌ったほうが届きやすい気はしますね」

――じゃあ「feat. HYDE」として歌を歌いに行ったことはいい刺激になったんじゃないですか?

「そうですね。YOSHIKIさんにせっかくお声がけいただいて、僕がうまくできなかったらねえ、先輩に対して失礼だから。やっぱり気合い入りましたよね」

――逆に今までは、そんなに自分の歌に対して特別なものは感じてなかったということでしょうか。

「あんまり気にしてなかったというか……バカなんで、よくわかってなかっただけなんですけどね(笑)。やっぱり海外で外国人と並ぶと、結構ひしひしと、自分のレベルがわかるんですよ。そういう状況で揉まれてると、ああ、このままじゃダメだなって、気がついたような感じですね」

――歌うことに向き合うって、それはしんどいことでしたか? それとも逆に歌うことが楽しくなってきたという感覚もありますか?

「うーん、あんまり好きじゃないですけどね、歌ってる時(笑)。まあしんどいところもあるし、好きじゃないんだけど、でも研究することによってそれが楽になっていくから。練習とかも変わっていくし。向き合うっていうのは重要なことだなって、今実感しています」


HYDE feat. YOSHIKI“ZIPANG(Japanese Version)”



リリース情報

New Single『ZIPANG』2月6日発売
【初回限定盤A(CD+コンセプトブック)】 UICV-9298 ¥3,024(税込) ※EP サイズ:7インチ四方
【初回限定盤B(CD+DVD)】 UICV-9299 ¥2,160(税込)
【通常盤】 UICV-5078 ¥1,296(税込)
《収録曲》
 01. ZIPANG(Japanese Version)
 02. ORDINARY WORLD
《初回限定盤B DVD収録内容》
 “ZIPANG(Japanese Version)” MUSIC VIDEO & MUSIC VIDEO DOCUMENTARY


ライブ情報

「Zepp Tokyo 20th Anniversary HYDE LIVE 2019」
2019年3月23日(土)、24日(日) 東京・Zepp Tokyo
 16:00 開場/17:06 開演
 お問合せ先:ディスクガレージ(050-5533-0888)

※チケット料金:1Fスタンディング ¥7,190(税込)
        2F指定席(オリジナルグッズ付) ¥10,800(税込)

「HYDE WORLD TOUR 2019 ASIA」
2019年3月27日(水) Shanghai
2019年3月29日(金) Beijing
2019年3月31日(日) Chengdu
2019年4月2日(火) Hong Kong
2019年4月4日(木) TAIPEI

「Welcome to Rockville 2019」
2019年5月5日(日) Metropolitan Park Jacksonville,FL

「In This Moment Tour」
2019年5月7日(火) Louisville Palace Theatre, Louisville, KY

「Epicenter Festival」
2019年5月11日(土) Rockingham Festival Grounds, NC

「In This Moment Tour」
2019年5月13日(月) The Sherman Theater, Stroudsburg, PA
2019年5月14日(火) Stage AE, Pittsburgh, PA
2019年5月15日(水) The Fillmore Silver Spring, Silver Spring, MD
2019年5月21日(火) Verizon Center, Mankato, MN
2019年5月22日(水) The District, Sioux Falls, SD
2019年5月24日(金) Arvest Bank Theatre at the Midland, Kansas City, MO



提供:UNIVERSAL MUSIC
企画・制作:ROCKIN’ON JAPAN編集部