Absolute area、繊細な筆致で描かれる男女の過去と未来。ミニアルバム『無限遠点』の物語の真相をメンバーに訊いた

言葉にすることで自分を戒めるような気分で(音楽を)作ってることが多くて。後悔を消化しきれないときに、音楽にすることで消化できる(山口)


――(笑)。本当に自分が納得できないと嫌なんですね。ちなみに山口くん、自分が誰のために音楽を作ってるのかって考えたりします?

山口 僕は完全に自分ですね。言葉にすることで自分を戒めるような気分で作ってることが多くて。後悔を消化しきれないときに、音楽にすることで消化できるというか。たぶん僕って、人のことをあんまり信頼してなくて……いま僕、最悪なことを言ってる(笑)。

――本当に信じられるまでに時間がかかるというか?

山口 うん、人のことをちょっと疑ってしまうクセがあって……。あんまり人に頼れる性格じゃないんですよね。自分のなかで物事を噛み砕いていきたいタイプで。というのも、自分が失恋して、それを人に話すじゃないですか。それって話を聞いてもらうこと自体に意味があるから、その答えには期待してない自分がいるんです。結局、何か言葉を返されても、「何、わかりきったことを言ってるんだ」ってなっちゃうんですよね。

高橋 捻くれてるなあ(笑)。

山口 だから、そんなに相談しないよね?

高橋 事後報告みたいな感じだよね。

山口 うん(笑)。たとえば(Mr.Childrenの)桜井さんが書いた曲って、僕に向けて書いた曲ではないじゃないですか。でも、それが自分の感情をすごく表現してるとしたら、その歌が自分の相談相手になって、その音楽を聴くことでちょっとラクになったりするんですよ。それって音楽は自分に意見してこないからなんですよね。だから、自分が音楽を作るときも、誰かのために書くというよりも、自分の相談相手のつもりで作ってるんです。

――それは“遠くまで行く君に”もですか? さっきオーストラリアに行ってしまう昔の恋人のことを書いたって言ってましたけど。《君》への祈りの歌ですよね?

山口 この歌も、もちろんその子を応援したい気持ちがあるんですけど、本当は引き止めたいっていう自分の葛藤でもあるんですよね。海外に行くのは、その子が中学校のときから夢みてたことで、すごくうれしいことなんですよ。でも、寂しいっていう想いもあって。どんな言葉をかけてあげられるんだろう?っていう気持ちも潜んでるんです。

――なるほど。あくまでも自分の気持ちを歌ってるけど、それが……。

山口 みんなの歌になればいいなと思ってますね。

(“Girl”は)決断力があって、それを行動に移すことができる。そういう女の人を歌にしたんです(山口)


――最後に収録している“Girl”は、今回のミニアルバムでアブソが目指したポップスの集大成みたいな曲ですけど、描いているのは“遠くまで行く君に”の女の子のこと?

山口 うん、そうだと思います。考えてみたら、これは自分のための曲じゃないかもしれないですね。僕が想う女性像というか。決断力があって、それを行動に移すことができる。そういう女の人を歌にしたんです。この曲のなかでキーワードだなと思うのが、《この道の先でいつかまた/会えたら“もしも”じゃない/話がしたい》っていうところなんですよ。

――ああ、“パラレルストーリー”では「もしも」を歌ってるけど。

山口 そう、その「もしも」じゃない話をしたいっていうのが、今回のミニアルバムのタイトルになってる「無限遠点」につながってるんです。「無限遠点」っていうのは説明が難しいんですけど……自分的な解釈だと、現実ではありえない点のことなんですね。

――ものすごく簡単に言っちゃうと、あり得ないぐらい遠いところっていう意味ですよね。

山口 そう、無限の先で交わるっていう限りなく遠い場所。その「無限遠点」っていうのは、「可能性」とか「もしも」の話なんです。4曲目の“発車標”では《僕らはどこへ向かおう》って歌ってるんですけど、そういう行き場のない恋の終着点になるような未知の領域というか。でも、そこには「きっとまたいつか会えるんじゃないか」っていう希望もあって。そのいつか交わる点っていうのを、「無限遠点」って呼んでるんです。

――そうすると、今回のアルバムは過去を振り返るところからはじまるけど、最後は遥か見えないぐらい未来を想像して終わるっていうことですよね。

山口 そうなんです。自分でもすごくいいかたちのアルバムになったと思います。いろいろなところにギミックをちりばめられたなと思いますね。

――今後、Absolute areaは音楽シーンのなかでどんな存在になりたいですか?

山口 世の中にとって音楽っていうのは、どういうものでなきゃいけないのかって考えたときに、結局のところ何かのBGMからはじまることが多いなと思ってるんです。それはドラマの主題歌だったり、スーパーで流れてる有線だったり、それが自分の人生に寄り添うときに、人生のBGMになる。だから、お茶の間に僕らの音楽を届けたいんですよね。

萩原 国民的なバンドになりたいよね。

山口 その先にライブがあるっていうものにしたいんです。最近、ライブをしてるときに、ただ演奏してるだけじゃダメな雰囲気があるような気がして。「もっとMCを上手くしないとダメだよ」って言われたりするんですよ。それは自分の実力不足ではあるんですけど、ちゃんと音楽で勝負していけるようになりたいなと思います。

――もっと音楽だけが持つ可能性を信じたいんですよね。

山口 ひとつの芸術作品として音楽を見てほしいんですよね。

高橋 そのためには、まずこの自信作のアルバムをいろいろな人に聴いてもらいたいです。

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