fhána、名曲ミディアムバラード“僕を見つけて”でアニソンの「今」に挑む

fhána、名曲ミディアムバラード“僕を見つけて”でアニソンの「今」に挑む

我々の音楽って結構、繊細なことをやってて。それをホールライブの場で没入して聴いてもらうことはずっとやりたかった(kevin)


―― 今年1月に中野サンプラザホールで開催されたデビュー5周年記念ライブ「fhána 5th Anniversary SPECIAL LIVE『STORIES』」は、fhánaのひとつの金字塔であると同時に新しいスタートラインでもあるような、素晴らしいライブでした。初ホールワンマンから半年、あの公演を今振り返って思うことは?

佐藤純一(Key・Cho) すごく長いセットリストで、かつfhánaの歴史を全部踏まえてて。「第一幕」でベスト盤のDISC1を全部やりきって、エンドロールまで流れたうえで、そこからまた「第二幕」でライブ重要曲をやって、最後の「終幕」が本当のアンコール的な扱いだったんですけど。演奏もそうだし、照明もそうだし。会場全体でひとつの世界観を作りたかったので。今後の指針になる確かな手応えがあったライブだったなと。でも……あの長いセトリはもう、基本的には今後ないだろうなって(笑)。

――三部構成・全26曲ですからね。ライブ終盤、「ほとんどMCなしで駆け抜けてきましたが、towanaさん大丈夫ですか?」の佐藤さんの振りに、towanaさんは「それ、佐藤さんが言います?」って(笑)。

towana(Vo) 「あなたが組んだセットリストでしょ?」っていう(笑)。でも、それまでずっとライブハウスでオールスタンディングでやってきたのと比べると――みんな自分のスペースがちゃんとあって、もみくちゃにならずにちゃんと観れる、っていう感じが「あれ? お客さんあんまり楽しんでない?」って思っちゃったんですよね、最初は。それをずっと心配しながら歌ってた、っていうのが大きかったです。でも、あとでみなさんの評判とかを聞くと、「すごくいいライブだった」っていう評価をいただけていたので。ホールライブはああいうものなんだというのを、経験として知ったライブでしたね。

――僕はあのライブは、椅子席でちゃんと聴くことで「fhánaの楽曲とサウンドの密度すごい!」っていうのが生で感じられたライブだったと思いますね。kevinさんは?

kevin mitsunaga(PC・Sampler) ホールライブってずっとやりたかったんですよ。我々の音楽って結構、繊細なことを曲の中でもやってて。そういうところまで――家でじっくり音源を聴き込むのもいいんですけど、ああいうライブの場で、しかも落ち着いて没入して聴いてもらうっていうのを、何年も前から「やりたいね」ってメンバーとも話してて。お客さんの評判を聞いても「いつもよりじっくり聴けた」みたいな話があったし。「それをしてほしかったんです!」ぐらいの感じで。

yuxuki waga(G) とにかくみんなの反応が良かったなっていうのが大きくて。個人的には正直、やってる時はいつもと変わらないんで。でも、あの曲数が一瞬に感じたんで、「すごく集中したなあ」っていうのはあったし、やりながら「いいライブしてるなあ」っていう手応えはあって。さっきの佐藤さんの話にもあったんですけど――もっと、ライブのやり方を精査していくともっと良くなるのかなって。外タレっぽい感じというか、完璧に決め込んだ感じのセットリストと、照明とかもすべてパッケージした状態でいろんなところに持っていく、みたいな方向で詰めていったほうが、fhánaの曲とかも含めて伝わりやすいのかなって。いわゆるロックバンド的な「いくぜ!」みたいな感じとは違うというか。

――そのスペシャルライブから半年を経て、新たに完成したシングルが『僕を見つけて』なわけですけども。表題曲の“僕を見つけて”はもう、メロディの力でfhánaだけでなく音楽の新しい地平を切り開いていくような名曲で。特に、サビ前からキーを変えながら駆け上がっていく部分は――。

佐藤 あそこは確かに、作曲して流れを作った時点で「来た!」って思いましたね。

towana この部分は林さん(林英樹/作詞)もやっぱりさすがだなあって。つなぎというか、駆け上がってサビにどう入るか、っていう言葉の置き方とか。ミドルテンポって、テンポが速いものに比べて、勢いでごまかせないっていうか。かなりエネルギーの要る曲ですね。

yuxuki もう、メロディラインがいいですよね。正直、fhánaの曲にしてはシンプルなんですけど、それでもグッと持っていかれるっていうか。

kevin fhánaの曲はいい意味で、すごく複雑なところがあって。転調だったり。僕が佐藤さんを尊敬するところって、手数だったり引き出しがすごく多いところで。そういう人だと思ってたから、すっげえどシンプルな引き出しを開けてきた時に……「久々にこういう気持ちになったな」っていうか。

「どっしりした名曲感」を提示したいっていうのがあって。このどシンプルさは、逆に攻めてるんじゃないかなって(佐藤)


―― この曲は『ナカノヒトゲノム【実況中】』のエンディングテーマでもあるわけですが。

佐藤 アニメ全体の音楽を僕が担当している中でのエンディングだったんですけど。シングルとしては実は『わたしのための物語(〜My Uncompleted Story〜)』から1年半ぶりなので。久々のタイアップでどういう曲を出すのか?っていうのはすごく考えたところでしたね。レーベルサイドからは「“星屑のインターリュード”みたいな、エンディングだけどノリのいい速い曲がいいんじゃない?」っていう話もあったんですが……6年活動してきて、もっと「どっしりした名曲感」を提示したいっていうのがあって。今までfhánaの曲って、1曲全体でも、テレビで流れる89秒の中でも、すごく展開が詰め込まれている曲が多くて。それはfhánaだけじゃなくて、昨今のアニソンってそういう方向に行ってるんですけど。この曲はもう超シンプルなんですよ。まずイントロがなくて、歌始まりでAメロ・Bメロがあって、サビがあって、それでちょうど89秒なんですよ。このどシンプルさって、逆に攻めてるんじゃないかなと思って。今のお客さんに、どこまでこのシンプルさで勝負できるか?っていうことは考えて作りました。

―― 「曲だけでまっすぐ勝負する」っていうのはある意味、音楽家としては一番エクストリームな冒険だし、そこに正面から答えを出した曲になっていると思いました。

佐藤 ありがとうございます。最初のワンコーラスは年末ぐらいに作っていて、でもそこからこの曲はどんどん発展していって。全部で7分あるうち、最後の2分ぐらいの別パートのアイデアは最初はなかったんですよね。4分半ぐらいでまとまった曲にしようと思ってたんですけど……。この曲は歌詞もそうなんですけど、レクイエムなんですよね。出だしで《孤独だった野良猫のように》って始まるんですけど……僕ずっと猫を飼ってまして、その猫が、年末に亡くなって。まあ18歳まで生きたし、特に病気ですごく苦しんだっていうわけでもなかったんで、後悔とかはないんですけど、やっぱりすごく喪失感があって。自ずとそこから、フルに曲を発展させていく時にはもう、ポンちゃん――名前がポンちゃんっていうんですけど――のモードに入っていて。歌詞を書いた林くんもその話は知ってるし、ポンちゃんにも会ったことあるから。もうワンコーラスの歌詞を書いてくれた時点で、ポンちゃんのことは脳裏にうっすらありましたね。そういうのがあったから、後半の2分が出てきたんですよね。ラスサビでジャーンと一回終わって――ここまでは別れを歌ってるんですけど。《さあ君から離れて旅立とう》っていう。だけど、ラストのパートで《遠くから届く 祈りと光》《帰りたい場所で 再会を信じて》……物理的には帰れないし二度と会えないけど、精神的には会うことができるっていう。ちょっとキリスト教的な世界観というか、超越的な――「向こう側」から何かが届いて会うことができる、みたいな感じで終わる曲に結果的になっていって。7分って昨今なかなかないんですよね、小沢健二の“ラブリー”か?っていう感じで(笑)。「最後はフェードアウトしましょうか」ぐらいの話もしてたんですけど、レコーディングしてみたら「これは最後まで入れるしかないな」って。

―― 終わりをどうするかは大きな違いですよね、この曲においては。

佐藤 一方で、“僕を見つけて”っていうタイトルは『ナカノヒトゲノム』っていう作品ともリンクしていて。ネットのゲーム実況者たちが主人公なわけですけど、ネットで何かを発信してる人たちは、「自分のことを見つけてほしい、認めてもらいたい」っていう気持ちは誰しも持ってる、みたいなところが“僕を見つけて”の取っ掛かりだったんですね。だけど、それが――ポンちゃんも野良猫だったんですけど、子猫の時に見つけて、それによってすごく大切なものをもらって、強くなることもできたんで。そういう想いを歌っていたんです。実はこのシングルのマスタリングの数日後に、京都アニメーションの事件が起こりまして。すべて自分の中で受け止めることはできていないんですけど。fhánaは『小林さんちのメイドラゴン』っていう京都アニメーションの作品でオープニング(“青空のラプソディ”)を担当させてもらって、あとエンディング(“イシュカン・コミュニケーション”)も僕が作らせてもらったりもしたんですけど、実際にその時にお仕事をご一緒した方が犠牲になってしまって……。それを踏まえてこの曲を聴くと、そういう方にはもう会えなくなってしまったけど、大切なものをたくさんもらって、それは未来にちゃんとつながっていってるんだなって。安易に自分たちの曲と事件とを結びつけるのは良くないと思いますけど、そういうふうに自分の中でも思えてしまって……現実に起こったこととのつながりを、まさに今感じているところですね。

次のページ(“真っ白”を)録ってる時に、ギターアンプが壊れたんですよ。急遽、スタジオのアンプを組み合わせてやった結果……思ったより荒々しい音で録れたんですよね(笑)
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