fhána、名曲ミディアムバラード“僕を見つけて”でアニソンの「今」に挑む

(“真っ白”を)録ってる時に、ギターアンプが壊れたんですよ。急遽、スタジオのアンプを組み合わせてやった結果……思ったより荒々しい音で録れたんですよね(笑)(yuxuki)


―― この曲は「『ナカノヒトゲノム』の音楽プロデューサー」の視点もあるし、「fhánaのキーパーソン」としての視点もあると同時に、「一個人・佐藤純一」の追憶の想いも絡み合った上で、それをすべて音楽家として純度の高い音楽に結晶してみせた曲だったと思うんですよ。だから逆に、重大な事件が起こって衝撃を受けた時に、その曲がまた佐藤さんのところに返ってくるような形で響いてくるわけで。

佐藤 ああ、曲が返ってくる感じはしましたね。サビのメロディを最初にワンコーラス作った時もそうだし、それに歌詞がついてできあがってきて、歌も録った時も、音楽の「本当のこと」「大切な何か」にちょっとだけ触れることができた、掴みかけたような手応えが、この曲にはあったんですよね。別に、今までの曲になかったわけではないんですけど、この曲は特に、本質みたいなところにちょっと触ったっていう――それは自分の中では初めての感覚だったかもしれないし。その「ちょっと掴みかけた何か」を、これからもどんどん掴もうとしていかないといけないなあと思いましたね。

―― ちなみに今回、「アーティスト盤」と「アニメ盤」で別の曲がカップリングに収録されていて。「アーティスト盤」のほうはyuxukiさん作曲の“真っ白”ですね。

yuxuki この曲は初期衝動感を大事にしようと思って。メロのラインの感じとかを聴いてて、「10代感」があるなあと思ったんで、いろいろシンプルに作ろうと思って。テーマを「モラトリアム」――何かしたい、自分には何かあるはずだ、って思ってる10代の子たちが、でも結局特に何かをするわけでもないっていうか、「あと一歩踏み出す何かがほしい」っていう、ギリギリの気持ちを曲にしようと思って。レコーディングも、サポートの人もみんな上手い人なんですけど、馴染む前にバーッと録っちゃって。「デイヴ・グロールみたいな感じで」とか「もっとひずませてください!」って(笑)。

―― これまでの佐藤さんの、展開の妙で持っていくスピード感とは別の性急さはありますよね。

yuxuki そうですね。あと……この曲を録ってる時に、ギターアンプが壊れたんですよ。ドラムとベースを録り終わって「ギター録りまーす」ってなったら「鳴らねえ!」ってなって(笑)。急遽、スタジオにあるアンプを慌てて組み合わせてやった結果……思ったより荒々しい音で録れたんですよね(笑)。

佐藤 この曲は完全にyuxukiくんの編曲で、僕は音で参加してないんですけど。アンプが壊れて、いろいろ音を試してる時に、僕がギターを弾いて、yuxukiくんがアンプの前で調整してるっていう(笑)。

yuxuki かなりバンド感はありましたね(笑)。

自分を出さないように書いてるつもりだけど、滲み出ちゃうものがあるのは仕方ないんですけど。私のなかでは恥ずかしいんです(towana)


―― 一方「アニメ盤」のほうは、towanaさんとkevinさん作詞の“Unplugged”がカップリング曲で。

kevin fhánaの総意として、「ヒップホップをやりたいよね」っていう話になってて。ヒップホップっていうか、ラップをしたいっていう。

佐藤 総意っていうか、「kevinラッパー化計画」?(笑)。kevinはラッパー声だなあと思って。前に“reaching for the cities”っていう曲で、音源ではtowanaひとりでラップをやって歌も歌ってるんですけど、ライブでは最近ラップをkevinがやったりしてるので。「kevinはラッパーになれる!」と(笑)。

kevin (笑)。

佐藤 ちなみに、towanaは最近、作詞もすごくしてて。『World Atlas』の“ユーレカ”も、ベストアルバムの“STORIES”も良かったし。言葉の才能めっちゃあるなあと思ってて。じゃあ、サビのメロディの部分はtowanaが歌詞を書いて、Aメロのラップの部分はkevinがフロウを書く形でやろうって。

―― towanaさんって歌でも歌詞でも、「私をわかって」的な部分が表現のレイヤーの一番後ろにある人ですよね。楽曲と世界観を最大限に響かせようとする姿勢に、towanaイズムが滲んでくるというか。

towana それは……私にとっては恥ずかしいことなんですよ(笑)。自分を出さないように書いてるつもりだけど、滲み出ちゃうものがあるのは仕方ないんですけど。私のなかでは恥ずかしいんです。

佐藤 まさにそこがすごく良くて。大前提として言葉のセンスがあって、技術的に歌手としてちゃんと整っている、っていうのがあるんですけど。その中で、綺麗な言葉の並びの中に、ちゃんと人間性が垣間見えるんですよね。towanaっぽさっていうか。サラサラッとしてるんだけど、すごく脆い感じもあったりして。だけど、気持ちがきちんと伝わってくる。ボーカリスト、歌い手だけじゃなくて、towanaはアーティストなんだなって。

―― で、エンターテイナー・サイド・オブ・fhánaはラッパー・kevinさんが担う、と。

kevin なるほど(笑)。

佐藤 kevinはトラックメイカーとしても――オケのリズムも、ヨレた感じのレイドバックビートにしたいっていうのは、もともとkevinのアイデアだったんで。

kevin 最近流行りのビートなので、やってみたいなっていうのがあって。結構新しいこともやったので、「fhánaっていろんなことやってんなあ」って感じてもらえると思いますね。

佐藤 いろいろfhána以外の作曲家仕事をやっていく中で、人の才能が今までよりも客観的にわかるようになってきたんですよね。「この人の才能のパラメータはここが突出してるんだろうな」とか。そうするとfhánaの場合、みんな才能が尖ってるんですよね。バランスいい人がいないんです。六角形のグラフだとしたら、どっかの角だけビヨーンと飛び出してる、みたいな(笑)。でも、その組み合わせで作られてるものって、ものすごく個性的だし、fhánaでしかできないものだし。メンバーみんな刀なんですよね、研ぎ澄まされた日本刀みたいな。それが集まってるバンドなんだなあっていう気がしましたね。

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