MAN WITH A MISSIONが“evergreen”で導いた10年の歩みの「答え」――彼らが放つ色褪せない情熱と進化とは?

MAN WITH A MISSIONが“evergreen”で導いた10年の歩みの「答え」――彼らが放つ色褪せない情熱と進化とは?
文=小川智宏

2020年2月9日、結成10周年を迎えたMAN WITH A MISSIONは「MAN WITH A "10th" MISSION」と題したアニバーサリープロジェクトをスタートさせた。そのメインイベントとして当初予定していた苗場での野外ライブ「THE MISSION」は新型コロナウイルスの影響で残念ながら中止となってしまったが、Bサイド集やベストアルバム、シングルのリリース、ライブ配信など、精力的な活動を繰り広げてきた。その総仕上げとして10月から展開されてきたのが、3ヶ月連続となる新曲の配信リリースだった。

10月に“Telescope”、11月に“All You Need”と続いてきた連続リリースの締めとなったのが、12月29日にリリースされた“evergreen”だ。すでに10月からご存知「赤いきつね緑のたぬき」のCMソングとして放送されていたので、どこかで耳にした人も多いはずだ。そのCMの発表会見に出演者の武田鉄矢、濱田岳とともに登壇したジャン・ケン・ジョニー(G・Vo・Raps)は「(歴史の長い『赤いきつね緑のたぬき』が)リニューアルデパワーアップスルトイウコトデ、皆サマノ青春ノ味ヲ想起サセルトトモニ、サラニ新シイステージニ進ム推進力ニナレバト思イ、楽曲ヲ書カセテイタダキマシタ」とコメントしていたが、まさにそのとおり。ジャン・ケン・ジョニーが作詞を手がけたこの曲は、青春的なみずみずしさとまっすぐさが全面に押し出された王道のエモチューンとなっている。MAN WITH A MISSIONというバンドの記念すべき10周年イヤーを締めくくる楽曲として、これ以上のものはないだろう。

この3ヶ月連続リリース、いや、もっと遡ればベストアルバム直前の2020年7月にリリースされたシングル『Change the World』も含めて、今年発表された彼らの楽曲は、どれもが彼ら自身の歴史を総括する視点と、同時にその歴史を背負ったまま未来に突入していくような力強さを感じさせる曲ばかりだった。10年をかけて上り詰めた高みから世界を広く見渡すようなスケール感のなか《新たな始まりの鼓動が聞こえる》と歌った“Change the World”、布袋寅泰のギターをフィーチャー、文字通りのスタジアムロックを鳴らして《俺らはロックキングダムにいるのさ》(訳詞)と叫ぶ“Rock Kingdom feat. 布袋寅泰”、そしてこのコロナ禍の状況にあって《光が再び射す日まで/歩き続けよう/探し続けよう》とまっすぐに希望のメッセージを放った“Telescope”、中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)と再びタッグを組み、デジタルサウンドとの史上最強レベルの融合を果たしてボーダレスに突き進んできたバンドの矜持を見せつけた“All You Need”。そのキャリアを象徴するかのように多彩な音楽性を繰り出しながら、その目はしっかり前を見つめ続けている――「これがMAN WITH A MISSIONだ」とどの曲も声を大にして言っている、そんな印象を受けた。

“evergreen”はそんな2020年のMAN WITH A MISSIONにあって、ひとつの「答え」のように響いてくる楽曲だ。けたたましいギターリフとデジタルビート、大振りなドラムにオーディエンスを煽るような掛け声。まるで号砲を待つスプリンターのようなムードのイントロから、一気にメロディが駆け出していく。今年出したどの曲よりもシンプルでストレート。まるで「AIR JAM」の衝撃を食らったあの頃に回帰するような、フレッシュで文字通り「青春」的な音像である。「これこれ!」と膝を打つファンも多いのではないだろうか。だが、この曲でより重要だなと思うのは、そんな原点回帰的なサウンドとは裏腹に、この曲が徹底的に「現在形」で歌われているところだ。

先述のコメントにもあるとおり、夢を抱き未来に焦がれた少年時代を回想しながらも、ジャン・ケン・ジョニーの歌詞はやはり今の自分と向き合っている。《Gonna beat the odds so hollow/And defeat the nights we moaned/To rewrite a new tomorrow/One and only endless stories》――《世の反対を完膚なきまでに押し切って/悔し泣きした夜を消し去ってしまおう/新しい明日を書き記すために/そして自分だけの終わらない物語を描くために》(訳詞)というのは、「これから」の未来への決心であり、人生を重ねてきてなお燃えている蒼い魂の証明である。今ここを新たな原点として刻み、そこから《the new horizon》、まだ見ぬ新たな地平へと突き進んでいく、この“evergreen”はそんな意思表明のように、僕には聴こえる。

青春は永遠だ、とか、記憶は色褪せない、とか、言葉にすれば簡単だが実際にはそうはいかないことを身体を張って体現し続けるのがロックバンドのひとつの「使命」、というか「機能」であるとするなら、MAN WITH A MISSIONの“evergreen”とはまさにそういう曲である。10周年という節目に、あるいは2020年という激動の1年の終わりに、音楽的にも歌詞的にも、自分たちが抱えている「エバーグリーン」なものと真正面から相対し、全力で見せつける。その揺るぎなさ、曲がらなさこそが、今さらに進化しているMAN WITH A MISSIONの姿なのだ。

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