Dizzy Sunfistの3rdシングル『ANDY』には、こんな時だからこそ聴きたいメロディックパンクが詰まっている。収録されている4曲のバリエーションが豊かなのはもちろんのこと、それぞれの楽曲において歌と演奏の力が、グッと説得力を増しているのだ。勢いだけではないしなやかさや骨太さは、今の彼らの存在感に直結している。今回のインタビューは、その理由が解き明かされるとともに、3人の人間性、そして音楽やライブに対する姿勢が表れたものとなった。同時に、彼らはまだまだ階段をかけのぼっていく!という期待感も沸きあがってくるはずだ。
インタビュー=高橋美穂
今回は自分をすごく掘り下げた気がします。原点のハイスタから聴き直しましたね(あやぺた)
――コロナ禍であれ、あやぺたさん育児中であれ、Dizzy Sunfistは通常運転な印象があって驚かされるのですが、いつ『ANDY』の制作は行っていたんでしょうか。あやぺた(Vo・G) 年明けから本気になりました(笑)。ギリギリになってやるタイプです。
――でも、年明けって、昨夏リリースされたEP『EPISODE Ⅱ』のツアー中でしたよね?
あやぺた ツアー中に制作していました。
――なるほど! まず、表題曲の“Andy”は、どういう流れで生まれてきたんでしょう。
あやぺた 形はもともとあったんです。ただ、私のメロディが決まらなくて。パッと思いついた時に持っていって作りました。前回のツアー、ワンマンやったんで、刺激が少なすぎて。私は結構辛かったです。
――そうなると、対バン以外の何かの刺激を探す、もしくは自分を掘り下げるなど、他の方法が必要だった気がするんですが、いかがですか。
あやぺた 今回は自分をすごく掘り下げた気がします。原点のハイスタから聴き直しましたね。
――ただ、もともとの形は以前からあったんですよね?
あやぺた はい。moAiが持ってきてくれました。
――楽曲のインスピレーションというか、発端はどういうものだったんでしょう。
moAi(Dr・Cho) スタジオでギターを弾いたりするんですけど、手癖で弾いたものに、あやぺたが鼻歌を乗せて曲が作られていくことが多いんです。“Andy”も、そういう感じでした。僕が適当に弾いたギターに歌が乗っかったんだけど、その時は歌がハマらなくて「今じゃないのかな?」って先延ばしにして、今回形にしてみたっていう。だから、インスピレーションは、お互いの化学反応ですね。練れば練るほどいいってものではなく、お互いパッとハマったものがよかったりするので。
――バンドならではの制作スタイルですね。先延ばしっていうことは、どのくらい前からあったんですか?
moAi アルバム『DREAMS NEVER END』(2018年1月リリース)の頃には、イントロのギターの感じとかがあったんですけど、なんか、その時じゃなかったっていう。
――それが、年明けに急展開を迎えると。
あやぺた そうですね。私が、いきなりスタジオに「このメロディがいい」って持っていったので。ずーっと「この曲を完成させたいな」っていう気持ちがあって、考えてみたんです。
――いやまさんはどうですか? 3年ほど寝かせておいた楽曲が、ピタッと組みあがった時の感触って覚えています?
いやま(B・Cho) そうですね。あやぺたとmoAiで固めたものを聴いた時は、最初はイントロを知っているから「ああ、この曲ね」って感じだったんですけど、メロディとかがしっかりできあがっていて、化けたというか、アップデートされた印象はありました。
夢に出てくる友達もいるし、支えてくれているのは友達やし。コロナ禍で、そういう歌を今歌いたいっていうのはありました(あやぺた)
――きっと今だったんだろうなっていうのは、聴いていても思って。まず、歌がすごくパワーアップしていますよね。何かあったんですか?あやぺた 英語の発音を、もっと本気になろうと思って。発音専門の先生を見つけて、毎日レッスンしてもらいました。
――そんな努力があったんですね! なんで、そういうスイッチが入ったんでしょう。
あやぺた ずっとYouTubeで発音を勉強していたんです。そうしたら、そのYouTubeをしている先生が直接教えてくれるって書いてあるのを見つけて、これは!って思って応募したんです。
――まさかのYouTubeでの出会い!(笑)。でも、ということはずっと気になってはいたんですね、もっと英詞を歌いこなしたいと。
あやぺた レコーディングの時にネイティブの人が来てくれるんですけど、歌いたいように歌うと発音がダメになってしまって、のびのび歌えなかったんです。それがストレスで。だから、その悩みを先生に話して、今回から解決したところもあります。今までは、今日も発音あかんか……って感じやったんですけど、それがなくなって、思い通りに歌えて楽しかったです。
――さらに、バンドの相乗効果で、歌に負けない演奏になっていると思ったんですけれど、おふたりはあやぺたさんの歌に進化を感じたりしましたか?
moAi 歌とか発音を気にしているのは知っていて。レコーディングの順番としては、歌を最後に録るので、今回は結果的に「歌がいい感じだな」っていうのはありましたね。
――じゃあ、むしろ演奏が歌に影響されただけではなく、歌が演奏に影響されたところもあるのかもしれないですね。
moAi できあがった形で見ると、それを実感します。歌ももちろんだけど、サウンドも3人それぞれの底上げというか、バンドとしてのレベル、音源としてのクオリティがグワーッと上がったなっていうのは、録り終わった時にすごく感じました。
――制作中はツアー中だったじゃないですか。その影響も、今作には表れていると思いますか?
いやま コロナ禍でツアーをやれるのか?っていう状況で、なんとか対策をしながらやり切って、2月にファイナルが終わって、そこから3月にレコーディングをしたので、その達成感みたいなものも、もしかしたらあったのかなって思います。
――ツアーをやり切れた自信も、音や演奏に表れたのかもしれないですね。あと、気になったのが“Andy”という曲名です。どういういきさつで、この曲名、歌詞になったんでしょうか。
あやぺた 『トイ・ストーリー』です(笑)。ほんまに大事な友達の歌を歌いたくて、友達といえば……って、あの話がいちばん好きなので、そこから拝借しました。
――ストレートですね! 友達のことを歌いたいって思ったのは、何かきっかけがあったんですか?
あやぺた 夢に出てくる友達もいるし、支えてくれているのは友達やし。コロナ禍で、そういう歌を今歌いたいっていうのはありました。
私、この曲(“Inspire”)の頭のドラム、ほんまに好きで。今までの自分の音源で、いちばん好きなドラムの音です(あやぺた)
――2曲目の“Inspire”は、ガラッと雰囲気が変わりますね。あやぺた これ、1年前にレコーディングしたんやっけ?
moAi 2019年の12月には録り終わっていましたね。
あやぺた そのままゲーム(『A.I.M.$』に登場するギャング「ありしあ」のキャラクターソング)に決まって、リリースはいつにしようってなっていて。やっと出せるのが嬉しいですね。
――制作もレコーディングも結構前だったんですね。その時のことは覚えていますか?
あやぺた 私、この曲の頭のドラム、ほんまに好きで。今までの自分の音源で、いちばん好きなドラムの音です。
moAi こういうビートから始まるのは、初めてだったんです。ドラムテックにBACK DROP BOMBの(有松)益男さんに入っていただいたんですけど、生音からすっごいよくて。ドラムの音がかっこいい!っていうだけで、テンションが上がるんですよね。
――たしかに。そして、1曲目、2曲目の振り幅がすごいですけど、さらに3曲目の“Cutie Honey (English Ver.)”でぶっ飛んでいくっていう。この選曲の理由は?
あやぺた シングルにカバーを入れるっていうのは恒例なんですけど、何にしようか?って選んでいる時に、“キューティーハニー”がいいんじゃないかって、レーベルの社長の森さんが言ってきて。
moAi ほんまに急やったよね。なんの脈絡もなく。
――面白いなあ(笑)。
あやぺた 最初はめちゃ不安やったんですけど。どうカバーすればいいのか、って。
moAi いっつもカバーをする時って、頭の中でどういうアレンジにしようってなるんですけど、“キューティーハニー”といえば、世代的に倖田來未さんなんですよ。そもそも倖田來未さんがカバーなので、なんか違うアプローチをしたいんですけど……メロディックパンクのバンドがカバーする“キューティーハニー”がイメージできなくて。最初はめっちゃ苦労しました。どうすればいいんだ!?って。
あやぺた 仮歌も、とりあえず日本語で歌ったんですけど、倖田來未さんになるんです。私、倖田來未さんの歌い方がめっちゃ好きで、昔めっちゃ真似していたから、ギャルギャルしくなるっていう。だから、パンクロックとは結びつかなかった(笑)。根についている倖田來未さんっぽい歌い方がなかなか取れなくて、大変でしたね。
もっと音楽的に、っていうのは意識しています。「ああ、メロコアのカバーなら速くなっただけね」ってなっちゃうのが悔しいんですよ(moAi)
――でも、仕上がったものを聴くと、“キューティーハニー”が、こんなにザ・メロコアになるんだ!って感動しましたよ。moAi 倖田來未さんのカバーを一回頭から離して、原曲で作ってみたら「あ、意外といけるかも」って。そこから、いろんな時代の“キューティーハニー”のおいしいところを取って、アレンジしていった感じですね。
――じゃあ、勢いでやったというより、考えて構築していったんですね。
moAi そうですね。初期のアニメの曲には、ラッパかなんかでソロがあって、これをギターソロに変換しよう!とか。それぞれの時代のバージョンにしかないコード進行やアプローチがあったので、それをハイブリッドして混ぜていくのが、めっちゃ面白かったです。
――いわゆるポップソングやスタンダードナンバーのメロディックパンクでのカバーって、勢いでやっているのがわかるものもあって。そういうよさもあるとは思うんですが、これは違うっていう気がしていたので、今のお話を聞いて納得しました。
moAi ああ、よかった。ただテンポが速くなっただけ、みたいなカバーは嫌なので。もっと音楽的に、っていうのは意識しています。「ああ、メロコアのカバーなら速くなっただけね」ってなっちゃうのが悔しいんですよ。だから、そう思ってもらえてよかったです。
――ここまでの3曲って、私としては気合いが入る流れだったんですよ。「やっぱすごいなDizzy!」みたいな。そんな中で4曲目に楽しいスカナンバー“Gimme Gimme Pizza!”があって、ちょっとホッとしたところがありました。これはどんないきさつで完成したんですか?
あやぺた ……今回、全部前からある曲やな(笑)。
moAi そうやな! 新しいのは“Cutie Honey (English Ver.)”ぐらいかな(笑)。
――実は(笑)。
moAi “Gimme Gimme Pizza!”も、『EPISODE Ⅱ』のレコーディング中に、「こんなんできたんだけど」って録っていて。でもその時も、今回じゃないかなってなって。
――コンスタントにリリースしているイメージがありますけど、Dizzy Sunfistがこれだけいい曲を隠し持っていたっていうことですね。
moAi すごくよく言っていただいた(笑)。ほんと、そういうことです。
――今回、アートワークも素敵ですね。モヒカンのテディベアっていう。
あやぺた パンク系なテディベアを作っている人が、今回の音源のプロデューサーのマサさん(masasucks)の知り合いにいて。連絡して作ってもらいました。MVには本物のクマが出ているんですよ。
――これ、グッズとかにならないんですか?
あやぺた いや、これを作っている方が個人で。
moAi ハンドメイドなんです。
あやぺた だから、売るとしても高額ですね(笑)。
――なるほど……個人的に欲しくて聞いてしまいました(笑)。5月からは「Dizzy Sunfist Looking for “ANDY” Tour 2021」も始まりますね。
あやぺた 前回はワンマンツアーで、今回は対バン相手がいてくれるので、すっごく楽しみですね。しかも、前回は二部制やったんで、今回は一部にすべてを込められる。もう、今は楽しみしかないです。
“Andy”
●リリース情報
New Single 『ANDY』 SPECIAL SET【完全数量限定版】品番:CBO-9
価格:5,500円(税込)
・CD
New Single『ANDY』
01. Andy
02. Inspire
03. Cutie Honey (English Ver.)
04. Gimme Gimme Pizza!
・LP
EP『EPISODE II』(メンバー直筆ナンバリング付)
・LPサイズトートバッグ
・モバイルステッカー3枚組
●ライブ情報
「Dizzy Sunfist Looking for “ANDY” Tour 2021」05/13(木)札幌cube garden ゲスト:SHIMA
05/14(金)旭川CASINO DRIVE ゲスト:SHIMA
05/19(水)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE ゲスト:IRIE BOYS
05/20(木)高崎clubFLEEZ ゲスト:NUBO
05/24(月)広島VANQUISH ゲスト:四星球
05/25(火)福岡BEAT STATION ゲスト:SHIMA
05/27(木)名古屋DIAMOND HALL ENTH
06/02(水)豊橋club Knot ゲスト:PAN
06/03(木)和歌山CLUB GATE OPEN ゲスト:GOOD4NOTHING
06/08(火)仙台MA.CA.NA ゲスト:HOTSQUALL
06/09(水)盛岡CLUB CHANGE WAVE ゲスト:HOTSQUALL
06/14(月)松山WstudioRED ゲスト:BUZZ THE BEARS
06/15(火)倉敷REDBOX ゲスト:EGGBRAIN
06/22(火)渋谷 TSUTAYA O-EAST ゲスト:dustbox
06/24(木)大阪味園ユニバース ゲスト:locofrank
提供:CAFFEINE BOMB RECORDS
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部