リアクション ザ ブッタ、新作ミニアルバムに込めた「傷を肯定する」決意を語る

リアクション ザ ブッタ、新作ミニアルバムに込めた「傷を肯定する」決意を語る

コロナ禍で制作が中心になる中、「ツアー中は置いといてもOKだった問題」に、ちゃんと向き合わないといけないなって(木田)

――2019年の配信シングル“ワスレナグサ”を挟みつつ、『Single Focus』(8thミニアルバム/2018年)から約3年ぶりのミニアルバムになります。それまで年1枚のペースで新作を発表してきたブッタにしては、少しスパンが空いた印象ですね。

佐々木直人(B・Vo) ここ2年間はもちろん、コロナの影響もありました。みなさんそうだと思うんですけど、いろんな人が動けて僕らも動きやすい、ツアーができる時になるべくリリースしたい、っていうのがあって。ツアーファイナル(「リアクション ザ ブッタ Tour 2019」/2019年11月〜2020年2月)で代官山UNITでワンマンやって、すぐコロナの時期に入っちゃって……「どうしようね?」っていうことで。そこで止まったんですよね。

――ライブも思うようにできない状況と、どういうふうに折り合いをつけてました?

佐々木 コロナ禍の最初の頃は、本当に初めてのことに直面して、全員が「どうしよう」って様子を見ている感じで。5月に予定してたイベントも中止になって、6月に西川口Heartsから配信ライブを行って……っていう感じで、2ヶ月に一回くらい配信ライブをやってきたりもしたんですけど。単純に、最初は「ライブできないのはしょうがないな、そうだよな」っていうのもありつつ、曲を作ってレコーディングもしていた、っていう感じですね。

木田健太郎(G・Cho) ライブができなくなって、自分の中で改めて「ライブってすごい楽しかったんだな」って(笑)。コロナ禍になってから制作が中心になっていった中で、バンドと向き合う時間が今までより長くなって、なんとなく置いといた問題――「ライブでツアーを回っている間は置いといてもOKだった問題」に、ちゃんと向き合わないといけないな、っていう期間だったなと。楽曲は全部佐々木が作っていて、編曲はみんなでやるんですけど、その中で、「もうちょっとこういう曲にしたらいいんじゃないか」とか、「バンドとしてこういうメッセージを届けたほうがいいんじゃないか」とか話し合えた期間だったんで。最初の頃は苦しかったですけど、結果的によかったかなと思います。

大野宏二朗(Dr) それこそ木田さんも言ってましたけど、ライブとかツアーが続くと、自分たちの持ち曲の練習とかに時間を使うことが多かったのを、自分のやってみたかったこととか、ドラムとか、音楽のこととか、そういうことに費やせる時間が少し増えたので。いろいろ考えることはあったんですけど……僕は「のんびりできるな」みたいな感じでした(笑)。かといって、ポジティブっていうわけでもないんですけど。バンドに対してちょっとこう、フラットに見ることができたというか。熱い気持ちも大事だけど、一瞬俯瞰することが大事な時もあるんで。僕はその時間が作れたと思います。

直人くんの曲はネガティブなことを発想の転換でポジティブにする歌詞が多くて。 “Seesaw”は直人くんっぽくてすげえいい!って(大野)

――そういう「歩みを止めざるを得なかった時期」に感じたことが、今回の『サイレントスーパーノヴァ』には確かに込められていますね。“Seesaw”はまさに、今の時代に向けられた楽曲だし。

佐々木 そうですね。2020年に作った曲で。「今、何か言えることがあるかなあ」っていうところで書き始めたんですけど……自分の中の内省的な部分が深くなっていっちゃったんで。もうちょっとこう、コロナ明けの未来を――もっとお客さんと一緒に声を出せるようなライブを想像しながら曲を書いていこう、って途中からなっていって。コロナ禍が明けたあとにはちゃんと盛り上がる曲だし、コロナ禍が続いたとしても芯に刺さってくるような曲にしたかった、っていうのはありましたね。

――《奪われ 失くして/途方に暮れて》っていうのは、去年から今年にかけての状況そのままですけど。それ一色で楽曲を塗り潰すんじゃなくて、「その先」を見たい、見せたいっていうことですよね。

佐々木 そうですね。まず自分たちが前を向いた曲を届けることで、それこそシーソーみたいに、着地の反動で「君」にも高く飛んでもらうっていう。それでお客さんの心が軽くなるっていうふうにもなってほしかったし。しかもそれは、お互いの力があるからできるんだよ、っていうことを言いたかったんで――お客さんとの繋がりを想像していた感じが強かったですね、“Seesaw”は。

木田 “Seesaw”はサビがすごくいいなと思って。いちばん最初の形からは、歌詞が結構変わってるんですけど、サビはほとんどこのままで。聴いた時に、大きな景色が見えたというか。スケールの大きな曲になっていくんじゃないかなって思いましたね。

大野 直人くんの曲って結構、ネガティブなことを発想の転換でポジティブにしていく、みたいな歌詞が多くて。“Seesaw”とかの前は「あんまり直人くんっぽくないな」って感じる歌詞ができる時もあったんですけど。“Seesaw”で直人くんっぽい歌詞が出てきて――すげえいい!って思いました。

――今の時代はネガティブの規模が大きいので、それをポジティブに転換していくにしても、バランスの取り方は難しいというか、大変なところはありますよね。

佐々木 そうですね。まあ、でも“Seesaw”を歌ってても、お客さんが歌詞をむちゃくちゃ聴いてくれてるなって感じるし。特にAメロ・Bメロとか。きっと共感してくれてるんだろうなっていう印象を受けるんで。そういう意味でも「丁寧に歌おう」っていう気持ちになれる曲ですね。

次のページ「ただ痛んだだけで終わってないよ、君は」って。傷の部分を肯定する曲を軸として歌っていきたい(佐々木)
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