インタビュー=小川智宏 撮影=Kana Tarumi
──ネクライトーキー初のフェス「オーキートーキーフェスティバル」開催ということで、おめでとうございます!たぶん何かしらシンパシーを感じているバンドたちなのかなあって(朝日)
それはメンツ見たらわかる。心からの陽キャがおらん感じ(笑)(健司)
もっさ ありがとうございます!
──それを記念しての座談会ということで、出演アーティストのなかから、フレデリック・健司さんと、ズーカラデル・吉田さんに来ていただきました。
朝日 もう、ほんまに、出演ありがとうございます。
吉田 いや、こちらこそ。
健司 こちらこそです。
──メジャーデビュー5周年という節目を飾るイベントなわけですが、今回こういうフェスをやろうということになった経緯はどういうものだったんですか?
もっさ 「オーキートーキー」というのはずっとやってきた対バンイベントなんですけど、「5周年っていう節目にこそやりたいことといえば何ですか?」って言われて、やっぱり対バンをやりたいって思ったんです。まあ、ネクライトーキーは対バンがすごく好きなんですよね。一緒にライブしてほしいって思ってくれる人がいたら行きたいみたいな性があって。他のバンドのライブを観るのもすごく好きだし。だから、それのスペシャル版みたいなのがあったらめちゃくちゃ嬉しいよねって話が盛り上がったんです。それで計画したら本当に実現しちゃって……(笑)。嬉しい!っていう感じですね。
──じゃあ、いっぱいバンド集めてフェスというか大きなイベントをやりたいっていう思いはもともとあった?
朝日 少なくとも俺個人はありました。ただ、そういうのをやるのは大変だっていうのをよく聞いてたんですよ。アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の後藤(正文)さんも「NANO-MUGENはしんどい」みたいなことをよくSNSでこぼしたりしてたし、コロムビアで同じチームのPK Shampooが「PSYCHIC FES」というサーキットイベントをやっていて、スタッフは本当に大変だと言っていたし。だからしょっちゅうやれるものではないなとも思っていたので、この5周年を機にということで計画しました。
──今回、ネクライトーキーを含め全10組が出演するということで、ウェブサイトでは各アーティストに対してネクライトーキーのメンバーからのコメントが出ていて。9バンドみんな、ネクライトーキーにとっては思い入れのあるバンドたちなんだと思うんですがこのラインナップはどういうふうに決めていったんですか?
もっさ 本当に、喋っていく中で出てきたバンドに声をかけていきました。たとえばフレデリックともズーカラデルとも2018〜2019年に対バンしたんですけど、そこから個々に活動してきて、もう1回対バンしたいよねっていうバンドを挙げていったんです。
朝日 でもたぶん、何かしらシンパシーを感じているバンドなのかなあって、個人的には思っているんですよね。
健司 なんか、それはメンツ見たらわかる。心からの陽キャがおらん感じ(笑)。玉屋(2060%/Wienners)さんとかはまた別格やけど。
もっさ (笑)。
朝日 フレデリックとかズーカラデルとは共通点があまり多くないように思えるけど、ネクライトーキーはどっちにも同じぐらいシンパシーを感じているっていう、不思議な感覚がすごいあって。自然とそういうバンドが話題に上がったのかなと思う。
──うん。すごくいいラインナップだし、ネクライトーキーと通じ合う部分があるんだろうなというのはすごく感じます。おふたりは今回声がかかったとき、どんなことを感じましたか?
吉田 「出る出る!」って。
朝日 嬉しい(笑)。
吉田 ネクライトーキーはずっと好きだったんですよ。一緒にライブをやる機会はしばらくなかったんですけど、曲が出るたびに聴いて「やっぱりいい曲出すな」と思っていたんです。ずっとマジレスし続けている感じというか、その姿勢がいつまで経ってもかっこいいなと思っていたので、そういうバンドの最新の大きいチャレンジに呼んでもらえるっていうのは、ただただ嬉しかったです。
健司 僕も、「出る出る!」です。僕らは2019年にネクライトーキーを自分たちの企画で金沢に呼んだんですけど、その時はバンド同士の面識がほぼない状態だったんです。もちろん朝日くんとはコンポラ(コンテンポラリーな生活)で一緒にやったりしていたけど、ネクライトーキーとしての絡みはなかった。でも、音楽とライブがめちゃくちゃかっこいいっていうのを……「BAYCAMP」かどこかでライブを観て、めちゃくちゃライブ力あるし、めっちゃかっこいいやんっていうのを感じて。うちは自分たちで対バンを主催するときって、人っていうよりライブや音楽がいいかどうかで判断したいから、絡みがなくてもいくんですけど、そういう感じでネクライトーキーにも声をかけたんです。でも、受けてもらえるかわからへんっていう状況ではあるわけじゃないですか。こんな、知らんバンドからいきなり──。
──「知らんバンド」(笑)。
もっさ 知ってます、知ってます(笑)。
健司 いや、仲いいバンドを誘っている感じでもないから、受けてもらえないことももちろんあるんですよ。でもネクライトーキーは受けてくれた。それは絶対に恩返ししないと、みたいな気持ちはずっとあったんです。それで出演が決まった後、「YON FES」で会ったときに「他のアーティスト誰なん?」って聞いたら、出てきた名前がまた、自分がライブめちゃくちゃいいなと思ってる人たちで。そういうところも感覚似てるんだなって思いました。でも、あの、このフェスの日、僕ら大阪ワンマン2デイズやった次の日なんですよ。
──超ハードスケジュール(笑)。それで出てくれるんだからありがたいですよね。
朝日 ズーカラデルもスケジュールきついんですよ。
吉田 僕たちも大阪でツアーやった翌日なんです。
健司 だから、マジで俺たちのことをめっちゃもてなしてほしい(笑)。
朝日 いい部屋用意します(笑)。
──ズーカラデルについてはもっささんがコメントを書いていましたね。ネクライトーキーを観たときに、なんでこの熱狂を生み出せるんやろって思った(健司)
もっさ ズーカラデルとは、ちょうどYouTubeの動画がおすすめされるタイミングが一緒だったんです(笑)。世にちょっとせり出してきたという時期が一緒だったんで、なんとなく一緒に走り出してる感じがあった。
──それで2018年のツアーで呼んだっていう。それが出会いだったわけですけど、もっささんはズーカラデルのどんなところが好きなんですか?
もっさ 曲もそうですけど、歌詞に共感する部分が多くて。ネクライトーキーの曲はほとんど朝日さんが歌詞を書いているんですけど、すごく通ずるところが多いなって感じる瞬間があるんです。歌ってる内容に誇張も感じないし、嘘もないように感じるというか。それが私にとっては音楽においていちばん安心するポイントで、心地よく聴けるな、って……目の前にしたらなんかうまく言えない!(笑)
──全然目を見てないじゃん。
吉田 こっちもどんな顔したらいいかわからない(笑)。でも、確かにたぶん似たような感覚を持っているのではなかろうかとは思いましたね。すごくキャッチーなスタイルのバンドじゃないですか。その形をめちゃくちゃ最大限に活かして、すごい言葉に突破力を持たせているところがかっこいいなって思うんです。めちゃくちゃ素直に感じるというか、芯を食った言葉を芯を持ってぶつけられるようなやり方で曲を作ってる。すごく美しいあり方だなって思っています。
朝日 僕が初めて聴いたズーカラデルの曲は“アニー”だったんですけど、なんか、すごく自由になりそうだなと思ったんですよね。シンプルな音の作りの楽曲で、シンプルにメロがよくて、シンプルに歌詞がよくて。メロと歌詞がいいからどこにでも行けるんじゃないかなっていう感じがあったんです。最近のズーカラは音もめちゃくちゃ面白くて、聴いてて、すごい楽しいんですよね。それもメロと歌詞の強度があるからなせる技なのかなと思います。今日も、フレとズーカラを交互に聴きながら来たんですけど──。
健司 交互? テンションどうなるん?(笑)
朝日 (笑)そうやって聴くと、音の距離感が対極だなって感じたんです。フレは「ピタッ」って近い感じがあるけど、ズーカラは部屋鳴りみたいなのがめちゃくちゃ鳴ってるうえで、でもスネアはミュートしてるみたいな。やりたいことがいろんなところに行ってるんだなって。
吉田 俺もネクライトーキーとフレデリックを交互に聴きながら来ました(笑)。でも、本当にベン図でいうと、ネクライトーキーとフレデリックとズーカラデルが重なっている部分があるんだろうなって。
──出方としては全然違う部分がありますけど、でも間違いなく重なり合う部分っていうのもあるという。一方フレデリックはネクライトーキーのふたりにとってどういうバンドですか?
朝日 フレデリックはポップスのギリギリを攻めてるみたいな。どう考えてもプログレに行ってる瞬間とかもあったりするんです。とくに、初期のフレデリックも知っているんで、“峠の幽霊”とか、バンドマンみんなあの曲が好きなんです。
健司 バンドマンだけが好きやから、たまにやるとめっちゃ白ける。フェスでやって、時止まりましたから。もう一生やらんわって思った(笑)。
朝日 でも難しいのは、バンドマンはあれ、めっちゃポップだと思ってるんですよね。「ここ行けるの、すごいな」って思ったら、案外世間はそうじゃないかもしれないっていう、そこのギリギリが聴いていてめちゃくちゃ気持ちよくて。ネクライトーキーがもがいてることをすごい高い次元で実現してるなと思うし、フレデリックと戦うにはもっさの声で一点突破するしかないっていうくらい高い次元で、ポップスと自分たちの音楽の研究を両立してるなっていうイメージがあります。
もっさ 私は本当に昔から観てるんです。私がちょっとバンドに興味持ったぐらいの時期に、地元からめっちゃいいバンドが出てきた!みたいなので知ったんですけど、フレデリックを聴いてると、美術館に行って近代芸術を観てるときと似た感じがするんですよ。
健司 めちゃめちゃ嬉しい。
もっさ 私からするとすごく前衛的に感じるけど、ちゃんとキャッチーで、ポップの中に収まりつつ、すごく尖ってる。
朝日 あれ、どうやってんだろうな。
もっさ それは確かに私たちも模索してる部分のひとつなんですけど、うまくそれを研究してるようにも感じるし、でもライブを観てるとそう感じさせない自由さもあって。なんでそれが両立できるんだろう?みたいな。本当に尊敬してます。
──それはでいったら、それこそネクライトーキーもポップなふりして相当変なことやってますけどね。
健司 やってますよね。誰が言うてんの?(笑)
朝日 いや、でもフレはね……今日、去年の『CITRUS CURIO CITY』を聴いてたんですけど、あの中の“Happiness”って曲、あれすごいっすね。何が起きてるかわからないんですけど、聴いていて気持ちいい。
健司 最初、ネクライトーキーを対バンに誘おうと思った理由が、当時、自分たちのライブの安定感にめっちゃ悩んでたんですよ。2015年からタケちゃん(高橋武/Dr)が叩いてくれるようになって、グルーヴはめっちゃよくなったんですけど、うちは全員が真面目に音楽をやりすぎるんで、「巧い」ことが目標になりすぎてしまって、ライブにおける空気感とかライブでの本質みたいなところが全然うまく見抜けなかったんですよね。それで、いいライブしてるはずやのに「そんな楽しないな」みたいなのが続いてる時期だったんです。で、ネクライトーキーを観たときに、演奏もめっちゃいいし、声もいいけど、なんでこの熱狂を生み出せるんやろって思ったんです。ちゃんと演奏が巧くて、かつ空気をガラッと変える人って少ないし、それがすごくかっこよくて。「この人らにぶっ壊してほしい」と思って誘ったんですよ。全員のパートが自分らの責任を持って自分らの楽しめることをやってるみたいな。それはフレデリックが今いちばん持ってる長所なんですけど、それを教えてくれたのはネクライトーキー。
朝日 すごく嬉しいのは、その部分についてはそうでありたいと思ってて。
もっさ 決まり事だけじゃなくて、その場で起きることをライブに取り入れたい、みたいな。
朝日 こっちのタケちゃん(カズマ・タケイ/Dr)は、練習はめちゃくちゃ真面目にやるんですけど、本番は「全部忘れよう」って言うんです。うちはライブ中、クリックも聞かないし同期もないんですけど、それも、5人組でこういうバンドがそれやってたら面白いかな、もの珍しいかなっていうことなんですよね。やっぱりバンドやるからには、どっかしら逆張りしたいみたいなところがあるじゃないですか。
吉田 うん。
朝日 だから、そこを褒められると、わかってくれる人はわかってくれるんだっていう嬉しさがありますね。