【インタビュー】圧倒的な歌声が、喜びも悲しみも寂しさも、すべての感情を色濃く映し出す。アルバム『B.G.M.』に深く刻み込んだ、菅原圭の音楽の本質

【インタビュー】圧倒的な歌声が、喜びも悲しみも寂しさも、すべての感情を色濃く映し出す。アルバム『B.G.M.』に深く刻み込んだ、菅原圭の音楽の本質 - COUNTDOWN JAPAN 25/26COUNTDOWN JAPAN 25/26

なんだかみんなに嫌われてるような気がしてしまう。でもその「みんな」って誰?と考えると、自分の心の中に住んでいる「実在しない誰か」でしかない

──さらに、今作にはアニメ『雨と君と』のエンディングテーマとして書き下ろした“filled”も収録されていて、これはとてもあたたかい気持ちになる曲です。

もともと『雨と君と』は、姉に勧められて原作の漫画をずっと読んでいたんです。それでエンディング曲の話をいただいて、「え、絶対やりたいです」って。人間と動物との関わりが描かれていて、当時自分も猫と一緒に住んでいたので、言語が伝わらないのにそばにいても苦じゃなくて、目と目が合うだけで何かがわかるという、この作品の空気や雰囲気を表現したいと思いました。人間と猫とではひとりと1匹だから、「ふたり」にはなれないのに、なぜだかわかり合える。孤独だけど孤独じゃない曖昧さを描きたいなと思って書いた曲でしたね。イタイ(Naoki Itai)さんが、情景が浮かび上がってくるような素晴らしい編曲をしてくださって。


──言葉ではない感覚的な「理解」を描いた曲になりました。『雨と君と』のタイアップだからこそ出てきたテーマかもしれないですね。

漫画を読んでいて、私がすごく印象に残っているシーンがあるんです。1匹とひとりが一緒にお風呂に入るシーン。たらいに湯をはって、そこにちゃぽんと入るんですね。普通の猫だったら嫌がるからゆっくりお風呂に入ることはないけれど、あそこに一緒にいる時、ひとりと1匹は何を思っていたんだろうって。自分のことを考えていたとしても、お風呂に入って「ちゃぽん」って音がして、ひとりなんだけど、1匹なんだけど、相手のことを思い合って、お互いの世界をすり合わせていたんじゃないかなって。

──アルバム終盤は、“レッテル”、“bitter”、“サヨナラトウキョウ”と続きます。まず“レッテル”はもう、歌自体が泣いているようにも響いて、菅原さんの声に心を揺さぶられます。ここで書かれている《さよならがない街》というのは東京のことですか?

抽象的なんですけど、現実世界の街というよりも、自分の「心の中に住んでる人たちの街」というイメージです。自分の中で、なぜだか「誰かに嫌われてる気がする」というタイミングがあるんです。でも別に面と向かって「あなたのことが苦手」と言われた記憶もないし、人伝てに「◯◯ちゃんがあなたのこと嫌いらしいよ」とか言われたわけでもなく、ただしばらく連絡を取らなくなってるだけで、なんだかみんなに嫌われてるような気がしてしまう。でもその「みんな」って誰?と考えると、自分の心の中に住んでいる実在しない誰かでしかないんですよね。ということは、「さよなら」という概念もないということ。なので、《さよならがない街》というのは、自分の心の中の箱庭なんです。

──ここまで感情が溢れる歌唱表現になったのは、菅原さん自身がそのことに対して悲しみとかやるせなさを感じているから?

そうですね。やるせなさも悲しみも大きかったし、私を含め、こういう人たちって自分の思い込みだと気づいていて。たとえば指をさされて笑われたなんて事実はないとわかっているけど、笑われる自分を直そうとしてしまう。でも直すって一体なんだろうって思うんですね。そういう人って、きっとたくさんいると思いますし、深刻度は誰にもわからなくて、打ち明けても笑われて「そんなことないよ」って理解してもらえなくて。幽霊みたいなものかもしれません。心の中の住人によって、自分にレッテルを貼り続けて苦しんでいる人たちがこの世界にたくさんいるのかなと思って書きました。

──そうしたレッテルはとても不毛なものだと。

不毛で寂しいことで、どうにかしたくて、でもどうにもできず、どうしたらこのレッテルを剥がすことができるんだろうと思った時、この感情を知ってくれる人がいるだけで、どれだけの人が心強く思うだろうかと思って。深刻なことなのに、人に話す時は心配させたくないし態度も変えてほしくないから、取り繕ってしまうんですよね。でもしんどい時はほんとにしんどいし、苦しい時はすごく苦しい。外に出られない時もある。でも友達と話す時は明るく話すから、「そうは見えない」って言われて、それが嬉しいはずなのに悲しい時もあるんです。ただ「そういう時もあるよね、わかるよ」って言ってもらえたら、やっと普通になれたと思えるし、やっと呼吸ができる気がするんですよ。「普通にならなきゃいけない」と取り繕っている自分が、やっと解けるような気がして。そういう人が私の他にもいるのなら、解けてほしいなあって思いました。

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寂しい時、苦しい時、何かを決断しなければいけない時、私のことを見てすらいない人たちが書いた言葉に、音楽に、ずっと支えられてきた。私の音楽も誰かにとってそうなりたい

──その“レッテル”からの“bitter”への跳躍力がすごくて。悲しみを吹き飛ばすようなはじけるポップサウンド。このダイナミックなレンジの広さも今作の聴きどころのひとつだと思います。人生の出会いをセレブレイトする楽曲でもあり、『B.G.M.』としては「喜び」を表す一曲ですね。

ほんとにその通りです。人生にわくわくと祝福があったっていい。そして青春があったっていいと思って。私はがっつり青春はしていないので……(笑)。部活にも入っていなかったし、小中高と恋人がいたこともなかったので、少女漫画を読むと「あ、青すぎる……」と思う瞬間が何度もあって、その時には、自分にもそういう人生があったってよかったのになあっていう気持ちになるんですよね(笑)。そういう思いで書いた曲です。

──その青春感がラストの“サヨナラトウキョウ”へと続きます。これは東京を去る人の目線で描いた楽曲。

私の中での「トウキョウ」は、実際の「東京」というよりも、友達といる場所のことでした。学生の頃から「イラストで食べていきたい」とか「音楽で食べていきたい」っていう友達がたくさんいて、そこが「東京」じゃなくても「トウキョウ」だったというか。何かしらの思いを持ち寄って集っていた場所に別れを告げるという意味で書いています。この曲は悲しい曲というより、私に携わってくれたすべての人へのエール、応援歌でもあって、感謝を述べたい気持ちを表した楽曲なんです。なのでアルバムのエンドロール的な気持ちで、最後に置きました。


──すごく素敵なエンディングです。こうしてアルバムができあがり、この先、どんなアーティストでありたいと思いますか?

「あなたのことを助けるよ」って、わかりやすく手を差し伸べたりはしたくないんです。私は、たとえば親に「こうしなさいよ」とか言われると、その言葉を受け入れられずに「ううっ」となってしまうこともよくあったけれど、まるで知らない人が作る音楽の、その歌の言葉がすっと心に入って、支えられたりもしてきました。もちろん友達とかに相談してアドバイスをもらって助けられたこともあったけど、何より音楽というものが、私の人生を支えてくれたんですね。寂しい時、苦しい時、何かを決断しなければいけない時、私のことを見てすらいない人たちが書いた言葉に、音楽に、ずっと支えられてきたんです。私の音楽もそういうものでありたいと、めっちゃ思います。誰かにとってのそういう音楽になりたいです。

──そう思うと、やはり今回のアルバムが『B.G.M.』と名づけられたのは必然。

そうなんです。ほんとに。このアルバムの曲がBGMとして、生活の中に溶けていってくれたら嬉しいです。

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