【インタビュー】ASH DA HEROの本質を浮き彫りにする、TVアニメ『杖と剣のウィストリア』OP主題歌“BELIEVERS”。楽曲に込めた想いを4人が語る

【インタビュー】ASH DA HEROの本質を浮き彫りにする、TVアニメ『杖と剣のウィストリア』OP主題歌“BELIEVERS”。楽曲に込めた想いを4人が語る
メジャー3rdシングルのタイトル曲“BELIEVERS”は、テレビアニメ『杖と剣のウィストリア』Season2のオープニング主題歌。アニメのストーリーを踏まえた描写の数々がバンドの実像を浮き彫りにしていると同時に、メッセージを力強く躍動させている曲だ。ASH DA HEROは、これまでも様々な形でメッセージを音楽に刻んできた。今作のカップリングのひとつ“Prologue -New Version-”は、2015年にリリースされたミニアルバム『THIS IS ROCK AND ROLL』に収録された曲の再構築版だが、“BELIEVERS”と併せて聴くと、活動を重ねる中でも変わらないこのバンドの精神性がとてもよくわかる。奏でる音と歌に彼らが込める想い、表現衝動の源にあるエネルギーとはなんなのか? メンバーたちが語ってくれた。

インタビュー=田中大


現実の世界で生きている人にも通ずるものがある。「その人にしかできないことがある」というのは、すごく訴えかけたいこと

──『杖と剣のウィストリア』Season2の初回放送がもうすぐというタイミングですが(取材は4月中旬)、OP主題歌として“BELIEVERS”を書き下ろすにあたって、どのようなことをイメージしました?

ASH(Vo) 僕らが担当するSeason2は、『杖と剣のウィストリア』の物語の中でも過酷で、熱いエピソードが続くので、そこを盛り上げられる楽曲にしたいというのが、まずありました。そして、この作品の物語と僕らのバンドとしての物語はシンクロする部分がすごく多くて⋯⋯僕らの過去、現在地、未来というのを“BELIEVERS”に集約させました。だからアニメに沿っている曲なんですけど、いちばん伝えたいのは僕らのバンドの物語なんです。

──自分の力を発揮できる場所に辿り着けていない人に勇気を届ける曲だと感じました。

ASH まさしくそうですね。応援歌というか。躓きかけたり、何も掴めないと感じた時は、自分自身に立ち還るのがものすごく大事だと思うんです。「原点回帰」がテーマで、そこをこの曲で表現しています。

──『杖と剣のウィストリア』の主人公のウィルが向き合う苦しみは、多くの人が体験することだと思います。魔法至上主義の世界で彼は魔法が使えず、バカにされるじゃないですか。

ASH 「無能」と呼ばれますからね。でも、彼は他の人にはできないことができて、それは現実の世界で生きている人にも通ずるものがあると思います。「その人にしかできないことがある」というのは、すごく訴えかけたいことです。

──楽器や音楽のスキルも「その人にしかできないこと」ですが、学力とかと比べると「世の中で評価されやすい能力」ではないですよね?

Sato(B) そうですね。僕も認めてもらえなくて、自分なりに変身しないと生きていけないと思いながらステージに立ち続けてきました。そして、そういうマイノリティの仲間たちと出会いながらバンドをやってきたんです。音楽を受け取ってくれる人が何かを感じてくれるとわかってやってきたわけではないけど、僕は音楽に懸けてて。そこはウィルと同じなのかもしれないです。

──音楽の道に進もうとすると、周りの大人に反対されることも多いですよね?

WANI(Dr) 僕の場合は、親も応援してくれたんですよね。むしろ、ドラムを勧めてくれたのは親なので(笑)。でも、高校の時に就職するやつ、進学するやつがいる中で、僕はそうじゃなかったので、先生には現実を突きつけられる感じでした。「そんな夢ばっかり追ってもしょうがないでしょ」みたいな。そう言われたことによって逆に「なにくそ!」となって、「バンドで売れてやろう!」という強い意志を持つことができましたね。

──“BELIEVERS”には《僕だけの魔法 探していた》というフレーズが出てきますけど、WANIさんの《僕だけの魔法》は、ドラムだったということじゃないですか?

WANI そうですね。やっぱり一途に続けられたのって、ドラムだけだなと思いますから。ご年配の大御所のミュージシャンにサポートとして使っていただいた時に、めちゃくちゃしごかれて、いっぱい怒られたり、挫折みたいなことはいろいろありましたけど。あの時は「もうドラムやめたい」と思ったくらい(笑)。でも、なんとか頑張ってドラムを続けて、そういう大変さを乗り越えて成長できたんだと思います。

──Dhalsimさんは、ミュージシャンを諦めて地元に帰ろうと思ったことがありましたよね?

Dhalsim(DJ) はい。挫折的なものは数え切れないくらいありました。この曲、《臆病風に吹かれて》って出てきますけど、僕は臆病風に吹かれまくってきました(笑)。でも、子供の頃からなりたいものはいっぱいあったけど、最終的に「バンドマンになる」と思ってからは、そこしか見ていなかったです。僕に限らず強い人ばかりじゃないと思ってて⋯⋯“BELIEVERS”は、「やれるんじゃない?」って勇気づけられるような曲になったと思います。

【インタビュー】ASH DA HEROの本質を浮き彫りにする、TVアニメ『杖と剣のウィストリア』OP主題歌“BELIEVERS”。楽曲に込めた想いを4人が語る

「音楽で世界を変える」ことは不可能でも、聴いてくれたひとりの価値観を変えることは絶対にできる。「まだ見たことない世界があるぜ」って子供たちに見せていきたい


──ASH DA HEROは、リスナーを鼓舞するメッセージをこれまでもたくさん作ってきましたよね。

ASH はい。昨今、海外でライブをやる機会が増えてきているんですけど、揺らいでいる世界の現実みたいなものを感じることがあって。たとえば、決まっていた公演が突然キャンセルになったりとか、そういう世界情勢と日本国内の今の雰囲気を踏まえると、メッセージソングは、今、絶対に届けるべきだと感じるんです。2025年って小中学生の自殺率が過去最多だったらしいんですけど、僕はそれがすごく悲しくて。「そんなに居場所がない子たちがたくさんいるのかな?」「そんなに人生を悲観してしまうくらいの子供たちを救う手立て、場所がないのかな?」と思った時に、音楽家として、シンガーとしてもものすごく情けなくなって。だからメッセージソングは、そういう子たちにマジで届いてほしいです。「希望が見えない」と言うのはまだ早すぎるし、「信じていい世界はあるから」というのは、音楽を通して伝えていきたいです。

──アニメの主題歌は、メッセージを幅広い層に伝える機会にもなるでしょうね。

ASH 『ウィストリア』は日曜日の夕方に放送されるアニメなので、子供たちも観てくれると思うんです。だから、「メッセージを届けたい」という気持ちは、“BELIEVERS”を作るうえでの最初の土台となりましたね。

──音楽、アニメ、小説、映画とかは、今の自分がいる場所以外の広い世界があることに気づかせてくれるじゃないですか。

ASH ほんとそうです。「音楽で世界を変える」「戦争を止める」とかは不可能だと思うんですけど、聴いてくれたひとりの価値観を変えることは絶対にできて。僕らも変えられたひとりなので。「俺もできるかもしれない」と思って楽器を手にして、作れるかどうかもわからないのに曲を作ってみて、今がある。「まだ見たことない世界があるぜ」と子供たちに見せていきたいというのは、すごく思っています。

【インタビュー】ASH DA HEROの本質を浮き彫りにする、TVアニメ『杖と剣のウィストリア』OP主題歌“BELIEVERS”。楽曲に込めた想いを4人が語る
──『杖と剣のウィストリア』も、そういうことを感じてもらえるはずの作品です。

ASH ウィルは「魔法は使えて当たり前なのに、なんでおまえは使えないの?」というところから、彼にしかできないことがあるのを知りますからね。それがやがて世界を救っていくお話ですから、届いてほしいです。

Sato 僕もどっぷり作品にハマってます(笑)。大人になったからこそ響く部分もありつつ、もし子供の頃にこの作品に出会ってたら夢中になったと思います。僕、今、最新刊を途中まで読んだところなんですけど。

ASH 15巻? 一昨日くらいに出たよね?

Sato そう! あの世界観も大好きなので。

──雑誌の連載でコンスタントにワクワクするストーリーを展開する漫画家って、本当にすごいです。

Sato 大変な世界だと思います。僕、昔ちょっと漫画家になりたいと思ったことがあったから危なかった。

ASH 「危なかった」って何?(笑)。

──ASH DA HEROのメンバーの日常を描く漫画とか描いてみたらどうですか?

Sato それはWANIさんに任せようかな。WANIさん、上手だから。

WANI なんで?

ASH なんで漫画家になる話になってるの?(笑)。

──(笑)。憧れに突き動かされて何かを目指すのは大事ですよね。“BELIEVERS”は、そういう気持ちをサウンドを通じても後押ししてくれます。

ASH この曲はギターを使ってないんですけど、豪華なストリングスでレコーディングをしました。弦の迫力、豊潤な感じは、生だからこそ出せる雰囲気というか。これは人間じゃないとできないし、バンドじゃないとできないことだと思う。MIDIってやっぱりMIDI感が出ちゃうんですよ。その良さももちろんありますけど、生身の人間が奏でている楽器は「揺らぎ」があるんです。かっちりグリッドに合う音楽が今後、より増えていくと思うんですけど、その逆のものが「揺らぎ」で、数値化できるけどしないほうが魅力的な部分っていう。歌もそうなんだと思ってて、「完璧なド、ド♯とかじゃない、その間だからいい」みたいなことってありますし。そういう「揺らぎ」が、“BELIEVERS”にはすごく出ている気がします。


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