“鳴奏”は制作期間の日記というか、「こういうことがあってこう思ってます」というのを人に話すように書いたんです
──そういう新曲があることで、バリエーション豊かな2曲目以降も含めてCiely像を表現できてると思います。結果的にまた名刺みたいなものができたと思ってます。ライブのセトリみたいな曲順でもあるなって。
──“Simple”や“UNSAID”を、ストックの中からこのタイミングで形にしておきたいと思ったのは何故だったんですか?“Simple”に関しては、楽曲としても作った時のメンタルも“CAGe Of ME”からいちばん乖離した場所にいて。将来像とかを一切気にせず、本当に目先の今好きなもの、直近1年くらいのインプットを自分のフィルターを通して出したという、作業としてはいちばん軽かった曲なので、あえてここで並べてみたくて入れたというのはあります。“UNSAID”は、ギターを持って王道みたいな曲を作っていこうという流れの中で、結構前からできていた曲だったんですけど、ここを逃したらこの曲は一生世に出ないかも?とふと思って。
──旬を過ぎちゃうみたいな?はい。今作ならジャンルもバラバラだし、入れてみようと思って。スタンダードなギター、ベース、ドラムという脳みそで書いた曲なので⋯⋯Cielyの曲作りはギターを弾かないのも当たり前なんですけど、この手の曲ってそうはいかないじゃないですか。なので、常にギターを抱えながらパソコンに向かって。この曲を書いたあとに“SIXTH STAR”と“DEFIANCE”ができたので、この曲がいちばん最初ではあるんですよ。
──あ、ここが出発点なんだ。だから、次から作っていくもののほうが自分の中で「いい」となって、どんどんこの曲が後ろになっていってたんですけど(笑)。でも、振り返ってみるとロックスタイルの作曲にこだわって作った記憶もあるので、それをちょっと出したいなというのもあって。
──そして“鳴奏”はまず、歌がいいですよね。ヘヴィな曲やアッパーな曲で出す表情とは全く違った、優しい感じで。ありがとうございます! 内容は本当に制作期間の日記というか、「こういうことがあってこう思ってます」というのを人に話すように書いたんですけど。この曲はギターでサポートしてくれてる服部匠真に使いたいコードだけ伝えて気づいたらできてたという、トラックだけで言えばほぼ僕作曲ではない曲で。しかもバラードチックな楽曲だから、自分がボーカルを入れることでこの世界観を壊してしまったらどうしよう?みたいなプレッシャーと闘いながらも、現在進行形のリアルな感情を表した言葉の力強さを借りて攻めていった楽曲です。トラック的にはラブソングとか失恋ソングみたいな、違うテーマでもいいかとも思ったんですけど、この気持ちをはめてみちゃいました(笑)。
──生々しくはあるけど悲壮感はないし、ちょうどいい温度感で伝わってくる歌だと思います。いやあ、よかったです。こういう曲って言葉が飛んできちゃうんで、音までドヨンとすると、聴けないくらい重たくなる印象はあって。今回はちょっとジャンルはなんだ?っていう、ちょっとオシャレな感じやフューチャーベース寄りになる部分もあったり。
──うん。でも全体としてはロックバラード調にたっていて。ロックバラード調に着地するようにはしました。この歌詞になってボーカルを録ったことで、後半のセクションのアレンジをちょっと激情な感じに変えてみました。嬉しかったのが、服部に歌詞を見せながらテーマを話したら「アウトロで激エモなギターソロ入れたい」って言われたんですよ。絶対ライブで泣かせるアウトロにしよう!みたいな。
俺はこれでいい、悩みながらやるのがデフォルトですっていう吹っ切れの先に待っているものに飛び込んでいくことに、すごく未来が見える
──ちょうどライブの話も出ましたけど、リリース翌週からツアーも控えていて。今作を作ったことでライブでの表現の幅や描ける景色も変わっていきそうですね。そうですね。今まではライブでかっこよく見せたいとか、こうやって遊んでくれるかな?とか想像しつつも、いわゆる楽しいとされる曲や、みんなで歌ったり空間を作り上げるような曲を他のアーティストのライブやフェスで目の当たりにすると、こういう曲ってCielyにあんまりないかもなって自覚はあったんですよ。それが今作の“Simple”や“CAGe Of ME”では絶対みんなで歌うでしょ、みたいなセクションができて。そういう一体感はライブを作り上げるうえで大事だと思うし、みんなで遊べるなという曲が初めて生まれたというか。
──うんうん。そういう部分に気づかせてくれた人たちと回るんですよ、今回のツアーは。言い方を変えると、ちゃんと戦いたい人たちというか。彼らに影響されつつ、ここは負けないぞという部分を体現した作品を引っ提げて、また改めて戦いにいけることと、そういう楽曲が生まれたことでCielyのフロアがどう進化していくかも楽しみにしてます。
──そこでまたひとつステージが変わりそうな気がしますね。変わりたいですね。この期間で仲良くなったアーティストも増えたし、同時に負けたくないと思う相手も増えたというか。そういう意味で制作に悩んだところもあったんですけど、そこを乗り越えた今、あとはライブで出したものをみんなに観てもらうだけ、遊ぶだけで。どういう景色が待っているかを楽しみにしてますし、絶対にいいものにできる自信が今は何故かある⋯⋯それは“鳴奏”ができたからだと言い切れるんです。俺はこれでいい、悩みながらやるのがデフォルトですってことを“鳴奏”の中で認めてしまっているので、その吹っ切れの先に待っているものに飛び込んでいくことに、すごく未来が見えるというか。どうせ悩むけどそれがCielyっていう(笑)、何が来ても怖くない感じになってます。
──こうやって話していても前回とは違いますもんね。前はもっと「俺はこう思うんですけど⋯⋯わかってもらえたらいいんですけどね⋯⋯」みたいな煮え切らなさがあったけど。ああ、でもそうかもしれないですね。整理された感じはしました。もう解決しないことが解決策という着地になったので、「迷走」という言葉を当て字で“鳴奏”という言葉に変えて。僕が音楽を鳴らして奏でること=迷走という。
──それを受け入れてやろうと。そうですね。そこに落とし込めてから、いろんな考え方が⋯⋯楽になったとはまた違うんですけど、踏ん切りがつけられるようになったのはあると思います。迷ってもいいんだっていう、そこを気にしなくなって少し大人になった気がしてます(笑)。